スイス・レマン湖付近の古城


エーグル城

城塞の風格たたえる

 スイス西部のレマン湖の北側はスイス領で対岸はフランス領である。ジュネーブからレマン湖の北岸に沿う高速道路を走り、先に紹介したシヨン城を通り過ぎて、湖の東端から山岳地帯に入る。すると、それまで車窓にはなかったアルプスの風景が目に飛び込んでくる。
 ここはローヌ渓谷の西端で、両側は山がそそり立っている。お目当てのエーグルの町と城はそんな山間のぶどう畑の真ん中にあった。ローヌ川の流域一帯はぶどう畑で、有名なワインの産地である。
 エーグルの町の人口は約5000人。こぢんまりした町である。この町から東方に国道20号線がはじまり、国道はドライブには快適だ。峻険な山々で、オルモン・バレーと呼ばれている景勝地がその先にある。
 この一帯はボードワー・アルプスの名で有名な観光地で、その最高地は2458メートル。途中、ケーブルカーも3カ所ある。私が行った八月中旬には、ケーブルカーの下でも寒さに震えた。山の頂上には霧が立ち込め、準備していなかったために、登るのを断念した。
 エーグル城は町の外れにある。15世紀に建てられた古城だ。この城の始まりは、12世紀。北イタリア一円を支配していたサボイ家の持ち城であった。かつてのサボイ家はヨーロッパの諸王家の中でも名門で、はじめは伯爵であった。その名門からサルディニア王、イタリア王が輩出している。
 しかし、15世紀になると、城はベルン人のものとなり、幾多の戦乱に巻き込まれたが原型をそのまま残し今日に至っている。スイス中世の代表的な城と一つとして残った。
 城の構造は、中央に中世特有の主塔とおぼしき城館を建て、城壁と小塔がそれを取り囲むという実戦的なものである。今はポッカリとぶどう畑の真ん中に浮かぶ古城だが、かつてはローヌ渓谷の抑えのための城塞の風格をたたえている。
 古城は刑務所に使われる例は多いが、このエーグル城もスイスが独立した後、一時的に刑務所として使われたことがある。しかし、今ではワイン博物館となって一般公開されている。
 スイスワインはあまり日本ではなじみがない。輸入量が一番多いのは、フランスに次いでドイツとなっており、スイスワインは少ないためだ。
 城内は、スイスワイン、特にエーグル地方のワイン造りのすべてを知る上で興味深い。ワイン通でかつ古城の関心のある人には一度行ってもらいたい所だ。ちなみに私は下戸であることを明らかにしておく。

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