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スクレロ・ウイップレイ ブセキィ
  または スクレロ・サイレリ
(アリゾナ州ココニノ郡)


  現在知られているスクレロカクタスのうち、もっとも稀少で、また謎に満ちた植物がこの白虹ブセキィ(あるいはサイレリ)でしょう。そのうえゾクっとくるような美しさも持ち合わせています。
 球体はごらんのようにエンジないしアメ色の繊細な刺に包まれていて、花は白色の漏斗状です。写真を見ると、全体の印象では彩虹山(S.parvuflorus) と似た感じもしますし、前項に紹介した火星のような赤土の丘に生える「変わった白虹」とも繋がるような気がします。つまりパッと見た感じだけでは何とも掴み所がない植物なのです。
 実際、分類学上も長らく混乱が続いており、かつては黒虹山(S.spinosior)と見なされたこともありますが、それはこの植物の特徴が白虹と黒虹山の双方に重なっているからです。形態を詳しく見ていくと、花は白虹の典型で白色系の漏斗状小輪。ですが熟した果実の裂け方などは黒虹山と同じです。刺の特徴では、彩虹山にはなく、白虹や黒虹山が持つ紙状の白い平刺がこの植物にもあります。しかし黒虹山の大きな特徴である、幼少苗の刺の微毛がこの植物にはありません。自生エリアという観点からも、黒虹山はかなり離れたユタ州の中西部の産なので、やはりこの植物は白虹寄り・・・。しかし、こうやって考えれば考えるほど混乱してくるのです。そんなわけで古くから論争のタネになる珍植物でした。
 独の研究者Hochstatterはこれを白虹のssp.ブセキィとしていますが、米のHeilらはサイレリという独立種と考えています。現在、ブセキィまたはサイレリにあたるサボテンは、アリゾナのハウスロックヴァレイのごく狭い範囲だけと考えられており、その個体数は極めて少ないと思われます。独立種と考えた場合にはスクレロ中で最も稀少種となるでしょう。ちなみに、この植物のコロニーが、はるか西のネヴァダ州東部のクラーク郡にもあると主張する専門家がいます。しかし俄かに信じがたく、おそらくプビスピナの大きく育った個体群?と思われます。
 ちなみに、このハウスロックヴァレイの自生地の標高は1600mほど、ビャクシンなどの潅木が疎らに生えている場所です。エスコバリアの北極丸カイバベンイスやエビの武勇丸バリエガータス、またぺディオのパラディネイなどが付近に分布しています。植物の生えている場所は道路からかなり離れており長い距離を歩く必要があります。そのうえ個体がバラバラに散らばっているので発見はなかなか難儀でした。
 しかし、そそり立つ赤い岩壁、見渡す限りの平原、鷲が孤を描く高く澄んだ空、そしてここには自分のほか誰もいない、という感覚・・・思わず野宿してしまうほど素晴らしい場所でしたが、このサボテンは風景のスケール感に一歩も引けをとらずに存在を主張していました。自生地で見たサボテンのなかで最も印象深いもののひとつで、この僻地を私は都合3回も訪ねています。実生苗の栽培は他の白虹と比べてもとりわけ難しいものではないので、是非チャレンジしてみてください。
 Scl.whipplei ssp.busekii = S.sileri
        (Coconino Co. ARIZONA)

I regard these plants as "whipplei ssp." for the time being here. They have very complicated history of classification. Some experts think plants in this locality are worth separated species "Sclerocactus sileri". They have characteristics similar to both S.whipplei and S.spinosior. Home of this unique cactus is House Rock Valley in Arizona at the foot of a beautiful cliff. They are quite rare and need protection.
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