Pediocactus simpsonii ssp.simpsonii
  (Whitepine Co, Nevada)

Plants with delicate white spine and cream-colored flower are very beautiful. They live under a tall tree of pine. Here is also heavily forested and I nearly lost my way when I was looking for the plants.
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(English)

ペディオ シンプソニー
   月華玉
(ネヴァダ州ホワイトパイン郡)


  ユタ州境に近いネヴァダ東部に広がるHumboldt National Forest。標高3000メートルを越す高山を擁する森林地帯です。ネヴァダと云うと、ラスベヴェガスのイメージが強く、暑くて乾ききった沙漠と思われがちですが、実際は州の大部分が標高の高い寒冷地です。そして、州の中北部には多くの月華玉が生育しています。
 このコロニーはユタから西へ州境を越えたところにあるサクラメント・パスと呼ばれる峠の付近。峠の下は乾燥した草地で、スクレロのプビスピナや塊根団扇のミクロプンチアなどが見られます。しかし峠の一帯は鬱蒼とした針葉樹林で高さのある木々が茂っています。下草が少ないことをのぞけば日本の森林と見まごうほどです。実際、私はこの森に月華玉を探しに入ったものの、方向がさっぱりわからなくなってそのまま日が暮れてしまい、あやうく遭難しかかりました。サボテン探しはたいがい見通しの良い平原や岩山で行うので、こんな体験は滅多にありません。まるでここは富士の樹海?なみです。
 
 月華玉はこのあたりの森林一帯に散らばって生えているようで、密集したグループには出会いません。森林のなかで木立がちょっと切れてスポット的に陽射しが射し込むような場所に多くみられます。灰白色の刺が密生していて、テニスボールのような感じの美しい月華玉です。花もベージュ〜薄黄色でこれも上品な感じのもの。
 ほとんどの個体が単頭で、径15センチ近くまで育つようです。林内に生えるためか、中苗以上はやや丈の高い球形に育ちますが、5センチ以下の小苗は地中に埋没して育っています。いちばん下の写真を見てもらうと分かりますが、ちいさい月華玉は刺が少なくてやさしい感じで、ノウルトニーやパラディネイを思わせます。どのコロニーでもこうした傾向があることから、つまりノウルトニーやパラディネイは月華玉のネオテニー(幼形成熟)と見ることも出来そうです。ひとつ面白いのは、多くの月華玉のコロニーで一緒に生えている植物がエスコバリア・ヴィヴィパラ(北極丸)なのですが、これがとても月華玉に似ているのです。とくに径5センチくらいまでの個体は顔を思い切り近づけないと区別できないくらい。さらに、月華玉もヴィヴィパラもコロニーによって顔が違うのですが、同じ地域の両者は顔が似ているのです。こうしたことが偶然なのか、何かの環境適応によるものなのか分かりませんが、彼らに森で出会うたび、とても不思議な気分になります。
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