エリオシケ属 
      Genus Eriosyce
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 ここではF.カッターマンに準拠して、大統合された広義のエリオシケ属を一括して扱います。旧ネオポルテリア、ホリドカクタス、ネオチレニア、イスラヤ、ヒルホカクタスなどの各グループが含まれます。各グループそれぞれの形態的特徴、また生態にも大変幅があるため、鑑賞ポイントや栽培法も異なってきます。大づかみに言って、爬虫類のようなくすんだ肌の感じや独特の渋い花色が魅力。中には強刺サボテンと呼べるほど強い刺で武装するものもあり、小型種では休眠期に地中に完全に埋没する(自生地風に育てた場合)姿も面白い。主に南米チリのアンデス西側の海岸砂漠を故郷とする植物たちで(一部はペルー、またアンデス東麓)、その分布域はコピアポアと重なっています。
 栽培は「難しい」と言われることが多く、方法も諸説ありますが、根気よくつきあえば正木栽培は可能です。実生正木苗はゆっくりとしか育ちませんが、小型種の多くは地下に大きな塊根を蓄え、休眠期には土に潜り込みます。こういう生態は接ぎ木苗では観察できません。以下に紹介する植物も大半が実生正木。旧エリオシケ系の極光丸など大型種も、時間はかかりますがよく育ちます(ただし開花に至っていないので写真がありません・・)。
 栽培の実際ですが、自生環境が海岸すれすれ〜標高2000メートルと大変幅があるため一概には語るのは難しい。成長は一般に遅く、また成長期がいつなのか判然としない属です。種類によってまちまちなのが厄介ですが、私はこの類の大半が「冬型」に近い成長をするように感じています。東京の無加温ガラス温室(最低温度5度くらい)で、1〜4月のほかのサボテンが休眠している寒い時期に新刺をあげ、動くのです。そのかわり、5〜9月上旬の温室内が35度を超える時期、つまり一般のサボテン類の好機には大半が休んでいます。これは自生地が、寒流の影響で高温にならないアタカマ砂漠であるためかも知れません。極光丸系やイスラヤなどは秋、10〜11月にも成長しますが、チレニア、ホリドなどはその時期まったく動かないものもあり、このあたりがわかりにくいところ。また灌水は、根が塊根になるものが多いので過湿は避けるべきですが、案外水は好きなようです。よく動いている時期には10日に一度ペースで灌水しています。日照は多いほどよく、不足すると伸び上がって本来の姿を失います。とくに、ナピナなどの小型種は夏によく陽に当てると地中に完全に潜ってしまい、これが野生株っぽくて楽しい。ただし、土埃をかぶっていない?栽培株は日やけしやすいので注意が必要です。
 一点、私のところで長年悩んでいたのが、成長点に出る障害です。実生〜中苗までの苗、特に実生3年までの苗が、成長部を中心に白っぽい(もしくは褐色の)ケロイド様を呈してだめになるのです。多くは、はじめ雲がかかったみたいに白くなり、それがだんだん褐変して最期は茶色いカサブタのようになり、成長点がツブれ、枯死します。元気のある株は再びケロイドを破って成長を再開しますが、醜くなります。ほかの南米サボテン愛好家からも同じ話を度々聞きますが、この障害はエリオシケのほか、コピアポアやギムノ、トリコケレウスやロビビアなどにも見られ、南米サボテンに多く現れるようです。これについては、土壌pHが高すぎる(アルカリに寄りすぎている)ことに起因する微量要素の欠乏、特にホウ素欠乏障害であるのではないかと考え、対策を講じたところ顕著な成果が出ています。詳しくは、「植物雑記A」に述べています。
 もうひとつ、これまで接ぎ木苗しか入手できなかったエリオシケ・ラウイの種子が最近出回るようになりました。しかし、正木の栽培はなかなか難しいようでいまだに順調に育てられていません。今後もエリオシケ属の写真、追加していきます。
Eriosyce aerocarpa
Huasco,Chile

アエロカルパ
Eriosyce curvispina KK169
Los Villos, Chile

クルビスピナ
Eriosyce curvispina
"horridus"(tuberisulcata)
FK208
North of Quilpue,
Valparaiso, Chile

クルビスピナ・ホリドゥス
Eriosyce curvispina
"mutabilis"(odoriflorus)
FK4-77
South of Pichidangui,
Punta Molles, Petorca, Chile

ムタビリス(オドリフロルス)
Eriosyce esmeraldana FR518
Esmeralda, Atacama, Chile

黒羅漢
Eriosyce fulva FR500
(=odieri ssp. fulva)
Totoral, Atacama, Chile

フルバ
Eriosyce islayensis
f. copiapoides "chalaensis"
with balloon like fruit
(Islaya copiapoides)

イスラエンシス"チャラエンシス" 
花と果実
(旧イスラヤ属)
Eriosyce islayensis
f. grandiflorens
(Islaya grandiflorens)

イスラエンシス
"グランディフロレンス"
(旧イスラヤ属)
Eriosyce islayensis f.krainziana
"pink flower" emerged from KK1340
Matarani, Peru ?

沙王女?ピンク花
(KK1340種子の実生から出現)
Eriosyce islayensis f. longispina
KK679 Moquequa, Peru

イスラエンシス"ロンギスピナ"
(旧イスラヤ属)
Eriosyce islayensis
f.paucispinosa
KK350 Chala, Peru

イスラエンシス
"パウキウスピノサ"
(旧イスラヤ属)
Eriosyce jussieui FR252A
West of Vicuna,
Coquimbo, Chile

エリオシケ・ユッシエウィ
Eriosyce laui
Tocopilla, Antofagasta, Chile

エリオシケ・ラウイ
Eriosyce napina FK75-77
Huasco, Chile, tiny form

豹頭
Eriosyce napina v mitis
Larger form

豹頭ミチス
Eriosyce napina f.glabrescens FR710
Totoral, Atacama, Chile
Plants from FR710 seeds, but something different from the type.
(may be napina or occulta)
エリオシケ・グラブレスケンス?
Reddish fruits of above plant. I will try to grow F2 for testing hybridity.

上の植物の果実
Eriosyce nidus KK1432
Ovalle Chile

エリオシケ・ニドゥス(銀翁玉)
Eriosyce odieri (M1036.26)
Copiapo〜Huasco Chile

エリオシケ・オディエリ
(黒駒丸/狼頭玉)
Eriosyce paucicostata FR521
North of Paposo,
Antofagasta, Chile

黒冠玉
Eriosyce paucicostata
ssp. viridis
KK67 Paposo

緑肌黒冠玉
Eriosyce reichei f.neoreichei
Huasco, Atacama, Chile

玉姫
Eriosyce strausianus
(Pyrrhocactus strausiana)
Mendoza, Arg.

ストラウジアヌス
Eriocyse taltalensis
Esmeralda, Chile

タルタルエンシス
(エスメラルダ)
Eriocyse taltalensis KK1199
Taltal, Chile 300-400m

タルタルエンシス
(タルタル)
Eriosyce tenebrica FK402
Elqui, Trapiche, Chile


テネブリカ
Eriosyce violaciflora
KK68 Paposo, Chile, 100m

ヴィオラシフロラ
Eriosyce wagenknechtii
"napina"  FK178-79,
N La Serena, Chile
very small plant

ワーゲンクネヒティ”ナピナ”