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「ピーター卿」シリーズ作品リスト 2002/05/05

1.『誰の死体?』 Whose Body? (1923)

セイヤーズデビュー作。ミステリ的な評価は高くはないですが、執事バンターファンには見逃せない一作。出だしから、バンターのすばらしさ満載です。

2.『雲なす証言』 Clouds of Witness? (1926)

シリーズ第2作。ウィムジーファミリー大集合で、当時の貴族の生活が窺えます。もっともセイヤーズ女史の目を通した貴族ということですが。

事件は、なんとウィムジーの実兄が容疑者、さらに妹が自白して……?! と家族から容疑者続出の展開に目が離せません。ウィムジーの親友・パーカーの恋の行方も注目です。

3.『不自然な死』 Unnatural Death (1927)

ハウダニット(凶器探し)ものといえるでしょう。。セイヤーズの作品は犯人探し(フーダニット)より動機、手段に焦点を当てたものが多いのが特徴のひとつです。

病死と思われていた死、だが主治医は違和感を感じていた。それを聞いたウィムジーが真相解明に乗り出します。

4.『ベローナ・クラブの不愉快な事件』 The Unpleasantness at the Bellona Club (1928)

ハリエット・ヴェインが登場する前の最後の作品。そのせいかバンターやパーカーが生き生きしているように感じられます(私見)。

遺言と遺産相続にからむ事件。日本の現行法の遺言(ちなみに、法律用語としては「いごん」と読む)というのはミステリ的にはいまいちですが、英米法の遺言は、遺言の効力が大きく、ミステリでは威力を発揮します。そこら辺も楽しんでください。

5.『毒を食らわば』 Strong Poison (1930)

殺人事件の被告人となった推理小説家ハリエット・ヴェイン。ウィムジーは彼女の無実を確信し、真犯人を推理する。事件もさることながら、ハリエットに表れるセイヤーズによる女性の生き方がまた、興味深いところです。

6.『五匹の赤い鰊』 The Five Red Herrings (1931)

風景描写もすばらしく、セイヤーズの作風に「文学性が高い」という評価がつくきっかけとなった作品(もっともその評価が邪魔して日本でなかなか紹介されなかったような気がしますが)。

Red herringには、注意をそらすもの、目くらましという意味で使われているミステリ業界用語で、魚の鰊(にしん)は作品に関係ありません。

7.『死体をどうぞ』 Have His Carcase (1932)

ハリエットが浜で見つけた死体。ハリエットとピーターがふたりで事件解明に乗り出すが。暗号もの、といっていいのか、いろいろな要素が満載で、長いだけのことはある作品。

8.『殺人は広告する』 Murder Must Advertise (1933)

セイヤーズ自身勤務経験のある広告代理店が舞台。事件の他に広告代理店の内情やクリケットにも詳しく、殺人事件を扱いながらも妙にたのしい作品です。ウィムジーのおちゃめな登場に注目しましょう。

9.『ナイン・テイラーズ』 The Nine Tailors (1934)

ピーター&バンターが旅行中に立ち寄った村の事件。傑作です、文句なく。事件は犯人探し(フーダニット)というよりは凶器探し(ハウダニット)の様相が強いです。それもセイヤーズの特徴なんですが。暗号もありますが、セイヤーズは暗号も好きなようす。というわけで、最高傑作にしてもっともセイヤーズらしい作品です。

出だしから最後の洪水まで自然描写がすばらしく、文学性が言われてしまうのもしかたなしです。でもそれだけじゃないということもわかりますよね。ナイン・テイラーズとは教会の鐘のこと。そちらの知識も興味ぶかいです。

10.『学寮祭の夜』 Gaudy Night (1935)

ハリエットが主役といえる作品。ピーターのプロポーズを受けるべきか悩み続けるハリエットが、母校で遭遇する事件。

たくさんの関係者がそれぞれ生きた人物として描かれているところはさすが。ミステリ的にも手堅いのですが、非常に長く、テンポがややもたついているので、がんばって読みましょう。その甲斐はあると思います。

11.『忙しい蜜月旅行』 Busman's Honeymoon (1937)

新婚旅行へ旅立つふたりが巻き込まれる事件。推理小説というよりも恋愛や文学性をかなり意識した作品です。副題も、「推理によって中断される恋愛小説」。

ハヤカワのポケミスから刊行されていて、長らく入手可能な唯一の作品で、セイヤーズが「文学的で重厚で高尚で」と認識される一因になった作品でもあります。

ミステリ的には弱いと言われますが、個人的には好きなトリックだったりします。

ところで、この原題をずっとbusyman's honeymoonと思っていたわたしは、あるときbusman'sであることに気づきました。busman's holidayというのは「休日も車を運転するバス運転手」から転じて「ふだんの仕事と同じようなことをして過ごす休暇」を意味するのです。つまり、この原題は「ふだんと同じように事件に巻き込まれたハネムーン」てこと。いずれ新訳が出るのか、出るとしたらどんな題名になるのでしょうか。楽しみです。

12.未訳 Thrones, Dominations (1998)

遺稿をジル・ペイトン・ウォルシュが完成させたもの。

以上、1-10は、創元推理文庫(浅羽莢子訳)、11は早川ポケットミステリ(深井淳訳)で入手できます。 

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