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ドロシー・L・セイヤーズ Dorothy L. Sayers 2002/05/05

ドロシー・L・セイヤーズ(1893-1957)について

ミステリ黄金時代を代表する英国女性作家の一人です。日本ではなかなか作品が翻訳刊行されなかったため、評価が遅れていましたが、ここ数年最近創元推理文庫から新訳で刊行され、本格ファンを中心に人気を呼んでいます。

ミステリ黄金時代というのは、いわゆる本格の黄金時代。ヴァン・ダインあたりから始まって、クイーンやカー、女流ならクリスティやセイヤーズが活躍した1920年代から30年代のこと。いま、海外古典ミステリなどというと、たいていこのあたりの作品群を指します。

セイヤーズファンは作家にも多く、のちの作家に及ぼした影響の点では、クリスティの上を行きます。クリスチアナ・ブランドは、作風から言っても直系の後継者と言えるでしょう。現代作家では、P・D・ジェイムズやルース・レンデルがセイヤーズに私淑していることは有名です。

先ほど評価が遅れていたと書きましたが、厳密に言うと、「偏った評価がまかり通っていた」のです。というのは、海外ミステリの紹介に功績のあった江戸川乱歩が、セイヤーズ作品について、「文学的で重厚な味わい」といった評価をしていたため、そのイメージがつきまとっていました。長らく日本語で読める作品が、『ナイン・テイラーズ』(平井呈一訳で絶版状態だった)と『忙しい蜜月旅行』(ポケミス)だったこともあるでしょう。 いずれも(特に後者は)重厚な印象の作品です。

ところが、セイヤーズの作風は、じっさいには、リズム感のある文体がむしろ軽やかで、広範な知識をふんだんに使っていても衒学的なところはありません。浅羽莢子氏による新訳によって、やっと原文の個性と特長が日本に認知されたと言えるでしょう。

そして、他の古典作品の訳が古くなりいまの若年層には読みづらいことを考えると、セイヤーズは「いま現在もっとも恵まれた紹介をされている黄金時代の作家」ということになるのかもしれません。

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