00.10.04
いちばん世間のお役に立てるかもしれないページ……というわけで、参考文献リストです。
主に史料です。古代史についてどんな説を立てるにしても、原典史料にあたってみるのは鉄則でしょう。読んでみると意外にもおもしろかったりします。ドラマチックと言いますか。ただ、たとえば8世紀の書としても現存しているのはもっと後世の写本です。ですから、8世紀当時のままの内容とは限りません。そのことは念頭に置く必要があります。
この分野ではやはり岩波文庫が充実しています。都市部では入手しやすいですが、岩波文庫は買い取り制のため、小さな本屋では在庫していないことが多いのが難点。
最初はまず、日本最初の正史・日本書紀。ちなみに正史というのは国が編集したオフィシャルな歴史書ということです:
『日本書紀』(一)
神代(上)・神代(下)・神武・綏靖・安寧・懿徳・孝安・孝霊・孝元・開化・崇神『日本書紀』(二)
垂仁・景行・成務・仲哀・神功皇后・応神・仁徳・履中反正・允恭安康『日本書紀』(三)
雄略・清寧顕宗仁賢・武烈・継体・安閑宣化・欽明『日本書紀』(四)
敏達・用明崇峻・推古・舒明・皇極・孝徳・斉明『日本書紀』(五)
天智・天武(上)・天武(下)・持統岩波文庫では、以上の五分冊です。
現代語訳はなく、見開きの右が訓み下し文、左が注釈。訓み下しというのは、漢文にレ点などを補って、日本語の文として読めるようにしますよね。その状態です。これは『日本書紀』は漢文で書かれているため。原文は、巻末に収録されています。註が充実しているので、訓み下しだけでもわりと理解しやすいです。ぜひ一読を。
中大兄皇子=天智天皇関係でいえば、はずせないのは(四)と(五)です。中大兄は皇太子時代とされる時代が長いので、(五)よりは(四)のほうが出番が多いのでご注意を。(五)はむしろ、壬申の乱特集といった趣で、天武(上)の巻はまるまる壬申の乱に当てられています。乱の記述はダイナミックでおもしろいです。
「でも訓み下しはツライなぁ」という方のためには:
『日本書紀 現代語訳』上巻 講談社教養文庫
『日本書紀 現代語訳』下巻 講談社教養文庫
現代語訳ですから読みやすいです。注釈も最小限にして、コンパクトにまとまってます。ただ、どうしても訳者の解釈は入ってしまいますから(通説的な解釈になっているとはいえ)、興味を持ったら訓み下しに当たってみましょう。
『日本書紀』がきたらやっぱり古事記。定番は:
『古事記』 岩波文庫
『古事記』は推古天皇までしかフォローしておらず、最後の数代は皇子・皇女名の列挙で終わっています。出だしの神代が充実しています。『日本書紀』とは人名表記が違うのも特徴です。
で、現代語訳ならこれ!
『古事記』 角川文庫
現代語訳に訓み下し+注釈もついているというおいしすぎる一冊。
当時の史料ということではこれも:
『万葉集』(上) 岩波文庫
『万葉集』(下) 岩波文庫
岩波文庫では脚注はありますが、現代語訳はついてません。だから、「意味がわからん」ということもあるでしょうが他の人の解釈を入れるまえに、素(す)の歌に触れてみるのもよいと思います。解説書はいろいろあってよくわからないので略。
他に:
『上宮聖徳法王帝説』 岩波文庫
聖徳太子=廐戸皇子関連の書です。中大兄皇子=天智天皇とは直接関係ありませんが興味深いです。
なお、当時の日本を知るのに、ぜひ参考にしたい書があります。それは中国の歴史書。日本の正史は8世紀に完成した『日本書紀』が最初ですが、中国はそれより前から正史を残しているのです(もちろん、「中国」という国ではなく、その時代に栄えた魏や漢といった国がです)。
『魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝』中国正史日本伝(1)
『旧唐書倭国日本伝・宋史日本伝・元史日本伝』中国正史日本伝(2)
いずれも岩波文庫から。中国の正史にある日本に関係した箇所を抜き出したものです。次の王朝が前王朝を振り返って作る、というタイミングだったらしいので、リアルタイムの記録ではありませんが、それでも日本の記録より古い。やっぱり中国って偉大ですね。
さらに、お隣・朝鮮にも興味深い書が:
『三国史記倭人伝 他六篇』朝鮮正史日本伝1
やっぱり岩波文庫。日本古代史に関わる朝鮮正史をピックアップしたものです。お隣だけに日本に関する記事が多くあります。ただ、肝心の三国史記は12世紀の成立と、やや時代は下ります。4,5世紀の同時代史料の七支刀や広開土王碑も収録されています。