「見果てぬ夢」創作ノート2

2012年09月

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09/01/土
9月になった。7月から準備はしていたのだが、実質的に書き始めたのは8月になってからだが、大学が夏休みになったこともあって、全体が4章の予定のうち2章を完了し、3章もかなり進んだ。このペースでいけば今月中に草稿完了ということになるが、ゴールに近づくにつれて詰めが難しくなることが予想される。この『菅原道真の見果てぬ夢』という作品は、義のために生きた主人公が理想と考えた政治体制が、結局、実現できなかったという物語だ。その理想の政治とは、プラトンが考えた哲人政治であり、孔子が考えた聖王の理念でもある。仁義をわきまえた聡明な王が国を統べる。衆愚政治とかポピュリズムの対極にある理念だ。摂関政治の初期の段階でこのシステムの危険性を察知した頭脳明晰な学者が、摂関政治の打破のために考えたのが、のちに「院政」と呼ばれるシステムなのだが、平安末期の院政は、白河上皇や後白河上皇の個性に負うところが大きく、結局は武士の台頭を許すことになったが、少なくとも摂関政治というシステムを破壊することには成功した。菅原道真は設計図は正しかったのだが、実現の途上で挫折した。しかしそこから伝説が生じ、道真は「天神」として祀られることになる。このドラマ性をしっかりと小説として展開したい。しかし同時にことの作品は、在原業平の物語でもあり、業平をめぐる二人の女性、しかも姉妹の関係にある高子の淑子の物語でもある。道真というのは真面目な学者なので色恋沙汰がまったくないので、業平にも陰の主人公として活躍してもらって、二人の女の対立と、結果としてそれぞれが生み出した(淑子の場合は養子として育てたわけだが)わずかに二歳しか歳の違わない二人の帝をめぐるドラマでもある。というところが、半分書いたところでわかってきた。いつも小説を書く時は手探りで書き始める。その人物になりきってその時代を眺めないと、時代の本質というものが見えてこない。ようやく見えてきたなという気がする。
さて本日はマッサージに行く。足は痛みはないがまだ違和感がある。いろいろなところを押してもらうと痛いところがあるので、問題が残っているのだろう。肩や首ももんでくれるのでここに通うことにした。

09/02/日
日曜日。時々夕立のような雨が降る。そのせいか涼しくなった。天気予報によると今日一日だけらしいが。エアコンなしに一日をすごす。ひたすら仕事。高子と業平が遭遇する歌会の場面。『なりひらの恋』では壬生忠岑を登場させたのだが、この歌会の開催日を十年近く早めたので、年齢が会わなくなった。仕方がないので藤原敏行をピンチヒッターとして出すことにした。いい歌があったので引用する。こういうハプニングは歴史小説につきもので、歴史を改ざんするわけにはいかない。『なりひらの恋』では、業平が蔵人として光孝天皇に仕えるというシーンを書いたのだが、これは『伊勢物語』を踏襲した。史実としてはありえない。孝行天皇即位の前に業平は亡くなっている。

09/03/月
文藝家協会理事会。妻に送ってもらう。報告事項と審議事項がいくつもあって、長くしゃべり続けた。疲れたが必要な手続きは終わった。岳真也さんと歴史時代作家クラブについての打ち合わせ。それで一日が終わった。

09/04/火
私用で早稲田の文学部の近くに行く。午後は仕事ができた。突然だが、最初から読み返すことにした。もう半分以上のところに来ているのだが、ここまでのところが心配になってきた。長篇小説を書く時はいつもそうだが、最初の設計図どおりには進まない。逆にいえば設計図どおりに出来てしまったのでは、大した作品にはならない。書いているうちに思いがけない着想が生まれる。それが小説を書く楽しさだし、だからこそ作品は深まっていく。今回はすでに『天神』『なりひらの恋』と二度書いたことのある時代と人物たちなのだが、今回は中篇ではなく長篇だという覚悟で書き始めたので、随所に発見がある。書いているうちに、そうだったのか、と気づくことがあるのだ。ところが書き始めの段階では、そういうものが視野に入っていない。そのためいまから読み返すと文体がゆるくなっているのではと気にかかる。半分のここまでで、数多くの発見があったので、それを踏まえてもう一度最初からチェックしたい。完成は遅れるのだが、文体に不安があると次に進めない。エンディングに大きな山がある作品なので、このあたりで根本から足腰を鍛え直した方がいいだろう。

09/05/水
近所の医者に行く。常備薬をもらうだけの定期的なもの。あとはひたすら仕事。最初からの読み返し。何が問題かがわかってきた。まずセリフが固い。平安時代の会話がどのようなものかは、厳密にはわからないが、たぶん文語みたいなしゃべり方をしたのだろう。ですます調になったのは江戸時代の後半だ。しかし文語での会話は読者にとってはつらい。読み物だから時代考証のこだわる必要はない。少しへんな感じはするのだが、わかりやすい会話を心がけたい。ただし、政治の表舞台で語られる部分は格式ばったものとし、それ以外の私的な会話はやや現代的にする。そんな感じで修正を加えていく。もう一つは、道真と妻との会話を増やす。この夫婦の物語を前面に出したい。政治ドラマが裏に隠れるような感じになれば作品に幅が出てくるだろう。ということで、1章の終わりくらいまで進んだ。あと2日くらいはこの修正の作業にかかるだろう。そこから先に進んで、あとは一気にゴールに向かいたい。

09/06/木
私用で銀行に行く。ついでに渋谷を散歩。足はかなりよくなって、階段の上り下りもまったく問題がなくなった。でも違和感はまだ残っている。2章の冒頭の部分、少し流れがよくない。1章の流れは改善されて、一気に読めるようになっているので、ここで流れを途絶えさせたくない。こうした細かい隘路を一つ一つ突破していく作業がこれからも続く。夜中のテレビで開幕戦を見ている。ジャイアンツ対カウボーイズ。結果はネットで知っている。負けたのだね。ジャイアンツは今年のスーパーボウルの優勝も、その4年前の優勝の時も、レギュラーシーズンは不調でぎりぎりでプレーオフに進出したのだが、今年は危ないかもしれない。今シーズンはマニング兄が復活するかどうかが最大のカギだ。セインツと49ナーズにも期待したい。それとマニングの代わりにコルツに入った新人QBにも注目。いよいよシーズンが始まった。今年は日本の野球のジャイアンツもがんばっているので、両方のジャイアンツに期待したい。

09/07/金
本日は公用があったが足が本調子でないのでパス。それでもリハビリのために試しに三軒茶屋まで歩いてみた。歩ける。しかしわずかな痛みがあって、長く歩くのは疲れる。これで大学が始まるとかなりつらい。この一週間で何とかリハビリの仕上げをしたい。

09/08/土
週末。本日は散歩にも出ずにひたすら仕事。最初から読み返す作業。この作品は政治問題が中心になっているので、議論小説という感じになってしまう。その雰囲気を抑え気味にして、女性に活躍の場を与えなければならない。そこが難しいところだが、主人公と妻の語らいがいいテンポで進んでいるので、全体としていい感じになっているだろうと思う。

09/09/日
日曜だが大学院の入試がある。面接だけのはずだったのだが、筆記試験の監督も回ってきた。まあ、ちょっと早く家を出ればいいだけだから……。が、意外と大変だった。いまの若者は時計をもっていないのだね。ケータイを出してはいけないというと、みんなパニクッてしまった。仕方がないので、現在時間を黒板に書いてあげることにした。5分ごとに更新する人力デジタル時計。疲れた。

09/10/月
ラジオに出演した。老人向けの番組みたいだ。アメリカ大使館前のニッケイラジオ。昔、短波放送といっていた頃に一度、来たことがある。ラジオはただ話すだけなので楽しい。講演は主催者との対応とか、いろいろと準備に時間がかかる。テレビはメイクなどもあるし、打ち合わせにも時間がかかる。ラジオは行ってすぐに始まって、ネットに出す写真を撮って終わり。昨日の大学院の入試から、本日、明日、明後日と、4日連続で外出する。まだ大学が始まっていないのだが、どういうわけか仕事が集中している。どれも短時間で済む用なので、自分の仕事は一定のペースでできるだろう。業平と道真が染殿での歌会に出る場面になった。ここを仕上げたところで、最初から読み返すことにしたので、ようやくもとのポイントに戻ったことになる。ここが2章の終わりで、その最後のところに道真と妻との会話が入る。その会話の部分は先週の月曜日、文藝家協会理事会に早く着きすぎた時に会議室で半分くらい書いた。本日も早く着きすぎたので、近くのビルの近くのロビーみたいなところで残り半分を書いた。これで2章は完了だ。3章の出だしのところも少しできている。ここまで最初から読み返して修正を続けてきた。主に会話のトーンを修正した。妻との会話を増やした。細かい思い違いみたいなものも修正し、漢字のルビをやや多めにした。これでパーフェクトになった。流れがあり、出だしは面白い。途中から政治の話になる。ここが女性の読者にはつらいかもしれない。しかしテーマが政治の話なので、ついてこれない読者にはごめんなさいというしかない。天神さまの話だから、道鏡よりは広い読者を想定しているし、人間ドラマとして展開されているので、読んで楽しいものになっている。政治の話は部分にすぎないので、軽く読み飛ばしていただければと思う。
さて、フットボールは開幕戦1試合が先行して開かれわたしが応援するジャイアンツの敗戦でスタートしたのだが、アメリカの日曜日に、いよいよ全体がオープンした。今シーズンの目玉は何といっても、ジャイアンツのQBイーライ・マニングの兄、コルツの絶対的な帝王であったペイトン・マニングの復活がなるかということだろう。ペイトン・マニングは誰もが認めるフットボールの最高のプレーヤーだが、昨シーズンは首の負傷で全シーズンを休場した。コルツは復活は難しいと見たのか、昨シーズンは最下位だったのでドラフトの一番で新しいQBを雇えるということもあって、ペイトンをクビにした。激しい争奪戦の末にデンバー・ブロンコスが獲得した。さて、マニング兄が復活できるのか。開幕戦、強豪のピッツバーグ・スティーラーズが対戦相手なので、これは負けるにしても、マニングが一つくらいタッチダウンをあげられるか、というところに注目が集まっていたのだが、何と、ブロンコスが勝ってしまった。第4クォーターまでもつれた試合だったが、そういうところで決定的なタッチダウンパスを投げるのがQBの役目で、マニング兄は見事に接戦を勝利に導いた。ランニングバックも活躍したので、このチームは強いという感じがする。弟にもがんばってもらって、兄弟対決を見せてほしい。

09/11/火
日大新聞の文芸賞授賞式。選考委員の増田さん、夫馬さんともまた会えて、和やかな昼食会。軽く飲んでいい気分になって帰った。こういう仕事はいい。まだ2章の終わりがまとまっていなかったのだが、これで次に進めるというところまで来た。少し枚数オーバーしているので、ここから先はコンパクトに書いていきたい。

09/12/水
日本点字図書館で本間賞の選考。午前中の会議なので、正午には自宅に帰り、午後は自分の仕事ができた。ようやく第2章が完全に終わった。想定よりも長くなってしまったが、とにかく半分のところまで来たことは間違いない。ここからは一気に話の展開を早くしたい。夜中、テレビでフットボールを見る。マニング兄のブロンコスがロスリスバーガーのスティーラーズに勝った試合。ネットのダイジェストでも確認していたのだが、3時間かけてじっと眺めて、ペイトン・マニングが完全復活していることを確認した。レシーバー二人もちゃんと動いているし、コルツから引き抜いたタイトエンドがセイフティーバルブになる。ランニングバックがほどほどなのもいい。それからコーナーバックのカーターがいい。セインツにいた選手だね。つねにインターセプトを狙っている。明日から妻がいなくなる。大丈夫か。7月のアタマに足を痛めて以来、散歩にあまり行かなくなったので運動量が減っている。夏に仕事場にこもった時、いつもなら毎日1時間以上散歩に出るところ、まったく出ずにリゾート気分で酒を飲んでいたので、体重が限度いっぱいに増量した。それで三宿に戻ってからは寝酒を断っている。飲んだのは文藝家協会理事会のあと岳真也さんと打ち合わせした時と、今週の日大文芸賞の授賞式の昼酒だけ。それでもいっこうに体重が減らない。朝ご飯をちゃんと食べているからだろう。体調はいいのでこのままでペースで行きたい。よく働いて疲れているので寝酒を飲まなくても寝られる。

09/13/木
日曜から4日連続だった公用が昨日で終わり、今日からはしばらくオフ。自分の仕事に集中できる。散歩にも行かずにひたすら仕事。3章のオープニング。少し硬い。観念的になっている。説明が長く続く。コンパクトに展開することと、説明でしのぐというのは根本的な別のことだ。説明だけだとイメージがうすくなる。テンポよく次々にイメージを提出して、結果としてコンパクトに語ればいいのだが。わたしは理屈っぽい人間なので、意識していないと話が長くなる。コンパクトに、しかもイメージ豊かに、ということを掛け声のようにつねに自分に言い聞かせていなければならない。妻がいないので冷蔵庫の残り物だけで生きている。明日は少し散歩をしようと思う。

09/14/金
本日は軽く三宿近辺を散歩。まずふつうに歩けた。パソコンで執筆している間にも、足をつねに動かしてストレッチをしている。暑い日が続く。3章の冒頭、父との会話を入れた。それから式部卿の時康親王を登場させる。そのあと、在原業平と高子の話のしめくくりを入れようと思う。そこから先は一気に政治の話になる。戦闘シーンのない歴史小説なので、観念的な議論だけでポリティックパワーが進行する。どうなるかわからないが、ゴールに向かってひたすら前進していきたい。

09/15/土
本日も軽い散歩のみ。『見果てぬ夢』は一定のペースで進んでいる。明日には妻が帰ってくるのだが、妻がいないと仕事ばかりすることになって、何だか現実ばなれした存在になっていくようだ。これが仕事場なら、散歩を楽しんだり、風景を眺めたりということもあるのだが、三宿のこの家は眺めるような風景がない。2階に上がれば遠くの方も見えるのだが、仕事をしているダイニングルームは、景色は何も見えない。向かいの家と、隣の家が見えるだけだ。空は少し見える。それだけなので、あとはテレビの画面を見ているだけだ。

09/16/日
下北沢の手前まで散歩。少し疲れた。この暑い夏が来るまでは、大学や公用がない日は1時間の散歩を欠かさなかったのだが、暑さと足の痛みで散歩をしなくなった。足の痛みはほぼなくなったのだが、体力、筋力が衰えている。毎日、少しずつでも散歩の距離を延ばしていきたい。それにしても暑い日々が続く。

09/17/月
昨日、妻が実家から帰ってきたので、日常が戻った。妻がいないとパソコンに向かっている時間は長くなる気がするのだが、仕事が進むかというと、そういうわけでもない。時間にめりはりがなくなって、集中力が散漫になる。大学へ行ったり、公用の会議のあいまに仕事をした方が集中力が凝縮するようだ。

09/18/火
本日は人間ドック。人間ドックはまさに人体を機械のように検査し修理する。実はこの日にそなえて、足のストレッチに励んできた。成田にスペイン娘を送って行った日が痛みのピークだったのだが、あれでは人間ドックには行けない。心電図をとる時に踏み台の上下運動をさせらる。二段の階段を昇り降りするのだが、足が痛かった日々は、下りの階段が苦痛だった。本日は何の苦もなく昇り降りができた。ほぼ回復したとみていいだろう。苦痛のピークだった頃から考えると、よく回復したものだ。人間ドックの結果は、善玉コレステロールが去年より減っていた。二ヵ月ほどまったく散歩をしなかったせいだろう。善玉と悪玉は相対関係にあるので、善玉が減ると、数値は去年と同じでも悪玉が増えたことになるらしい。

09/19/水
人間ドックが終わるとほっとする。本日はひたすら仕事。夕方、妻と三軒茶屋まで散歩。『見果てぬ夢』は阿満という子どもが死ぬところ。『夢阿満(阿満を夢見る)』という漢詩が残っている。菅原道真は漢詩が得意だが、和歌も少し残していて、百人一首にも入っている。まあ、有名人なので藤原定家が百人に入れたのだろう。とにかく主人公の作品が遺っているので、適宜に引用する。漢文はそのままでは意味不明なので、現代語訳をつけるのだが、見た感じを印象的にするために、各行の文字数を揃えることにする。和歌のようにシラブルの数を調えるわけではない。あくまでも見た目の印象だけだ。阿満の死を悼む詩は長いので引用するかどうか少し迷ったが、気持がよく出た詩なので用いることにした。ここが全体の折り返し点(量的なものではなく気持として)になる。ここから一気にエンディングに突き進むことになる。

09/20/木
箱根に行く。気晴らしみたいなもの。妻の運転でこちらは乗っているだけ。箱根は少し涼しかった。これで今年のわたしの夏は終わったかな、という気がする。7月は孫5人がいて、のんびりできなかった。8月は足が痛くてどこにも行けなかった。仕事は進んだのだが、夏らしいリゾート気分がまったくなかった。まあ、仕方がない。来週からは大学が始まる。それなりに気分は充実するのだが、徐々に疲れがたまっていく。それでもいい作品が書ければそれが気晴らしになる。

09/21/金
文藝家協会で打ち合わせ。夕方から涼しくなった。ようやく夏も終わったか。『見果てぬ夢』は3章の後半になっている。この作品、全体のボリュームを500枚以内と考えているが、いま400枚くらいのところに来ている。もはやゴール直前といってもいいが、ストーリーはようやく陽成帝の譲位という話になっている。ここからはコンパクトにアラスジだけで進行していく。ゴールが見えてからはスピード感が必要だ。出だしとゴールはテンポよく語り、中ほどはじっくりと描く。これがわたしの方法論みたいなものだが、今回も終始テンポよく語ってきたと思う。戦闘シーンのない歴史小説で、山場はつねに会話で進行する。観念的な対話劇という趣がある。基経と道真の対話だけで劇的なストーリーが進行する。奇妙な小説といえるかもしれない。フットボールは今年からサースデーマッチというのをやるようになった。ということは日本では金曜日の昼頃に結果がわかる。ジャイアンツがパンサーズに勝った。パンサーズのQBニュートンは先週セインツ相手にいい試合をしていたが、これに圧勝したということは、ジャイアンツの調子が上がっているということだろう。新人のランニングバックががんばったようで、このペースでいけばプレーオフには出られるだろう。去年もぎりぎりでプレーオフに進出して、最終的にはスーパーボウルに勝った。毎年、出足がよくないのだが、今年はまずまずのスタートだ。日本のジャイアンツも頑張った。ぶっちぎりの優勝。勝率が666を越えている。2勝1敗のペースを上回っている。ただし阪神、DeNAなど弱いところに勝っただけで、中日とは五分の成績だから、プレーオフでも緊張してがんばってほしい。

09/22/土
土曜日。秋分の日。土曜が祝日だと休日が増えないらしい。本日は涼しく快適な日。下北沢まで散歩。足の痛みはまったくなくなったが、まだ足の筋肉が戻っていない。とにかく毎日歩いて鍛えるしかない。

09/23/日
冷たい雨が降っている。散歩にも出ずにひたすら仕事。昨日は涼しいと思ったが今日は寒い。老人にとってこの寒暖の差は体にきつい。名刺がなくなったのでプリントする。世田谷文学館のアワードの選考。候補作がずいぶん前に届いていたが、来週末が選考なのでとりあえず読んでみる。強く推せるものはなかったが、推してもいいと思われるものはあった。よかった。何もないと選考会に出るのがつらい。ということで、本日はあまり仕事が進まなかった。明日から大学の後期が始まる。月曜日は一限なので早めに寝る。八月末に仕事場から戻って以来、寝酒を断っている。酒なしでも眠れる。人間ドックに備えて少しでも体調を戻そうという算段であるが、ドックが終わっても寝酒は飲んでいない。断っているのは寝酒であって、酒そのものを断っているわけではない。宴会とか外食の時は飲む。寝酒を飲むと寝る直前に何か食べてしまうのでカロリーオーバーになる。要するに体重がオーバーしているので少し痩せようということだ。

09/24/月
大学。1限。定刻に教室に行ったら誰もいない。少しあわてた。大学は今年の春に新キャンパスがオープンして、それに伴って事務関係の場所が変わっている。教務課がどこにあるのかもわからない。案内板を見ても出ていないので、とりあえず人事課のあるところに行ったら、それでよかった。事務所と同じ建物の5階ということで、短時間に行きつくことができた。本日は1限だけだが、夕方に教授会があるので、研究室で仕事をする。7月の終わりにパソコンの更新があった。ソフトの更新ではなく、パソコンそのものが新しくなった。使い慣れたXPが、セブンになってしまった。わたしの自宅のパソコンはXPだが、妻のビスタを触ることもあるので、フォルダのアイコンが変わったりといった、使い勝手はわかっている。ショックだったのは、メールソフトとゲームがないこと。とりあえず自宅のパソコンからアウトルックエクスプレス、ソリティア、フリーセル、マインスイーパー、息子のパソコンから貰ったカードゲームなどをUSBメモリーにコピーしてもってきたのだが、動いたのはマインスイーパーと息子のゲームだけ。そこでネットからフリーソフトをダウンロードする。最初にダウンロードしたのは設定の仕方がわからない。結局、マイクロソフトの無料ソフトで何とか使えるようになった。それからワードを開いて仕事を始めたのだが、何だかおかしい。7月のパソコンの入れ替えに立ち合った時にATOKを入れてキーボードの設定も入れておいたのだが、誤作動が激しい。もう一度、キーの設定をチェックして、誤作動しそうなところをつぶしていった。これで大丈夫だ。と思ったら、改行した時に勝手に一時下げになる。ワードも新しいものになっているので、どこをいじれば設定を変えられるのか当惑したのだが、まあ、いろんなところを探しているうちに、勝手なことをしない設定に変更できた。教授会まで時間があったので、かなりの仕事ができた。

09/25/火
本日も1限だけ。研究室に戻って、ソリティアとフリーセルが動くように調整する。カードディルとかいうファイルが必要だったのだ。武蔵野大学では今年から、高校生向けの文学賞を設定した。よい作品があったら、エグゼクティブ入試に応募してもらって、いわゆる一芸入試で入学してもらおうという算段であるが、かなりの応募作があった。とりあえず全体を俯瞰してみて、可能性のありそうな作品をいくつか選んだ。後日、もう一度、じっくりと読み返して、最終選考の候補作を選び、他の先生にも見ていただくことになる。その作業を終えて自宅に戻り、さあ、自分の仕事をしようと思ったら、パソコンが死んだ。本当に死んだかと思ってあせった。外付けハードディスクにバックアップしてあるものもあるが、最近のものはバックアップしていない。いま書いている『見果てぬ夢』はUSBで最新のものを持ち歩いているし、念のためにメールで大学のサーバーに送ったりもしているので、消えても大丈夫なのだが、とりあえず今日の仕事をどうするかを考えた。妻のワードはわたしの設定になっていないので使いづらいし、不安定なデスクトップでやるのも心配だし、渋谷まで行ってパソコンを買ったとしても、ATOKのディスクを大学の研究室に置いたままだし、というようなことを考えながら、何度かトライするうちに、セーフモードで起動することに成功した。ずっと前に、フォントがすべて消えた時に、セーフモードで起動してから終了すると元に戻ったという体験があるので、祈るような思いで終了して、起動させてみると、ちゃんと動いた。ワードの表示文字サイズが変な感じになっていた以外は、いまのところ問題なく作業できている。

09/26/水
本日は休み。何も公用が入らない日は貴重だ。ひたすら仕事。少し設定を変えたいと思い、最初から読み返している。機会があるごとに何度も読み返して、そのつど修正していく。ルビの付け方などについてもそのつど考える。全体のトーンと、エンディングに向かうトーンとの間に、どこかで切り替えが必要なのだが、それをどのあたりにするかをこれから考えたい。前半、妻との対話がのんびりしている。後半はのんびりしてはいられないが、たまには妻を登場させたい。

09/27/木
木曜は3コマあるが、午後からなので朝は楽。夜中、フットボールを見ながら少し仕事。

09/28/金
文藝家協会で著作権についての座談会。わたしはただ観客として参加しただけ。自宅に帰ると四日市の孫がいた。たまの孫はいいものだ。

09/29/土
世田谷文学館でアワードの選考。館長の菅野さん、選考委員の青野さんと、応募作品について議論する。35歳以下という年齢制限のあるコンクールなので、選考はやりやすい。以前、世田谷文学館の文学賞を選考していた時は、時々、高齢者の戦争体験の話などが出てきて、若者の応募作との落差に悩んだものだ。その文学賞は、短歌や俳句などは引き続き実施されているのだが、小説部門は廃止になり、若者を対象にしたアワードという企画だけが残っている。2年に1度の催しで今回で3回目。まあ、議論の結果、いちおうの結論が出たが、アワードは他の部門との関連もあるのであとは館長に任せる。自宅に帰って昼食の後、新宿のマッサージへ。1ヶ月前に同じマッサージに行った時はまだ足が痛んでいた。いまは歩くことに支障はないが、まだ軽い痛みがある。マッサージのあと、小骨がとれたような、スキッとした感触があった。このままの状態が維持できればありがたい。

09/30/日
日曜日。友人の結婚式で上京していた次男一家が帰るという。台風は名古屋方面に接近中。東海道新幹線はめったに止まらないと安心して乗ったようだ。わずかな遅れで名古屋に到着したのだが、近鉄が止まっていた。弥富と四日市間がストップしていて、次男たちも弥富と足どめ。気になるので、ネットで近鉄名古屋線のツイッターを監視。足止めをくった人々の嘆きの声が刻々と伝わってくる。午後10時すぎにようやく開通。妻のところに次男から、急行に乗れたというメールが届く。ツイッターというものはけっこう面白いものだね。で、止まっている田園都市線のツイッターをのぞくと、みんな困っている。気の毒だとは思うが、自宅にいて困っている人々の声を聞くのは、高見の見物みたい。近鉄の場合は孫たちが困っているので、こちらも胸を痛めたのだが。さて、『見果てぬ夢』は第四章に入った。最終章にするか、これのあとに短いエピローグをつけるかは、まだ決めていない。第四章が、これまでの章と同じくらいの長さになれば、短いエピローグをつける。他の章より短めだと、エピローグは4章の中に埋め込んでしまう。いずれにしろエピローグを入れる必要がある。菅原道真が死んでから、天神さまとして祀られるまでの短い経緯が必要だからだ。この経緯は、道真本人とは無関係なので、少しトーンを変えて書いていきたい。9月も終わった。8月末くらいの感触では、9月末で草稿完成もありかと思っていたのだが、何度も最初から読み返して修正したので、時間がかかった。しかしそのぶん、修正に修正を重ねているので、完成度が高くなっている。草稿完成から、最終的な完了まで、それほど時間はかからないだろう。



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