「青春小説」創作ノート後半の1

2006年01月

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01/08
スペイン旅行から帰国。疲れたが、充実した旅立った。とりあえずメールをチェックし、ホームページを更新する。原稿も書かないといけない。

01/09
どうもスペイン風邪をおみやげにもらったみたいで、喉が痛い。ぼうっとしているのは時差ボケか。とりあえず原稿料をもらって書いているウェブの原稿を書く。あとは、飛行機の中でチェックした1章と2章のプリントの修正箇所を入力。昨日の夜中にアメリカンフットボールのホームページを見て、フレーオフ出場チームを確認。コルツ、スティーラーズ、ベンガルズ、ジャイアンツを応援したい。そう思って、今日ネットを見たら、ベンガルズとジャイアンツが負けていた。ベンガルズはスティーラーズとの直接対決だから、どちらかが負ける運命にあったのだが。ベンガルズは昔、モンタナマジックで大逆転負けした試合が印象に残っている。ずっとビリばかりだったのに今年、突然強くなった。いわばシンデレラチームだった。ゲームサマリーを見ると、シンデレラチームを支えたクォーターバックのパーマーがゲームの初めに負傷退場している。これでは勝てない。ジャイアンツは、コルツのクウォーターバックのペイトン・マニングの弟イーライがいる。兄ほどではないので、見ているとはらはらするところがよかった。来年はもっと強くなるだろう。で、来週はコルツとスティーラーズが直接対決する。わたしが支援するチームが絞られる。そのチームがカンファレンスの決勝戦で負けると、スーパーボウルが面白くない。ところで、今日の高校サッカーで優勝した野洲というのはすごいチームだ。個人技中心の南米みたいなサッカーをする。高校というと、秩序と体力で、ランニングの練習ばかりするというイメージを一掃した。選手がのびのびと自由に動いている。ヒールパスから展開した決勝点はとくにそれを感じた。

01/10
友人の岳さんからの誘いで高田馬場で飲む。歓談しているところの撮影をするとのことで、評論家山崎氏、紀行作家下川氏らも参加。スペイン風邪で声が出ない。アルコールで消毒できるかと思ったが、ますます悪化する。

01/11
大学。声が出ないので早めに授業を終わる。一年生の授業は数人が研究室に遊びに来て雑談。

01/12
午前中、文化庁の会議。今シーズンの最終回なので、一回だけ発言したが、声がさらに悪化。もっと長くしゃべりたかったが限界。午前中の会議は弁当が出る。天ぷらなどが入っている。ひからびたサシミが入っていないのでほぼ完食。大学の研究室で仕事。夜間の授業は今年度の最終回。2コマあるので、1コマ目は声を温存して早めに終わる。2コマ目は、「宗教と文学」という難しいテーマの講義なのに最後まで聞いてくれた学生たちなので、がんばって時間いっぱいしゃべる。ついに声を使い果たしたという感じがする。車で迎えに来た妻に、明日から3日間ほど完黙すると伝える。

01/13
声が完全に出なくなった。咳。外出の用はないので、プリントを読み返しながら、体調を調える。

01/14
声は少し回復。咳はひどくなる。

01/15
日曜。咳、少しましになった。スペイン風邪にめげず、仕事はしている。これまで、飛行機の中でチェックした1、2章のプリントと、帰国後プリントした3章、および4章の半分のチェック、さらに入力作業を続けてきたが、本日で完了。プリントで読み返すと、人物像に揺れがあったのだが、これでパーフェクトになった。あとはゴールまで一気に走っていける。が、来週は宴会が多い。飲まずに夜中に仕事ができるかがポイントである。

01/16
自宅にて婦人公論の取材。スペイン風邪はようやく少しおさまって、しゃべれるようになった。まだ無理はできないが。

01/17
何事もなし。この青春小説は3つの三角関係が絡み合うという複雑な構成になっている。主人公の父母がからんだ三角と、先輩のプロのミュージシャンの三角と、自分が絡んだ三角である。このうち、先輩プロの三角がやや複雑で、いまそのエピソードが語られている。これを延々と語ると話がもたれるので、可能な限りコンパクトに語りたい。ここが作品の山場になる。ここを通り過ぎると、ゴールが見えてくる。

01/18
大学。今シーズン最終授業。ようやく声が出るようになった。夜、PHP『文蔵』の編集者と三宿で飲む。文庫サイズの小説誌に、小説の書き方を連載する。読者の年齢層が高いので、大学の講義録とは違った、新しい視点で考えてみたい。小説はいま作品の山場にさしかかっている。登場人物のすべてが集まって長く語り続けるというドストエフスキーみたいなシーンになりつつある。できる限りコンパクトにしないと話が長くなる。

01/19
著団協の新年会。著作権関係の公用がいよいよ始まる。出かける直前までパソコンを叩き続けた。第4章完了。ようやく長いシーンが終わり、エンディングに向けて、テンポよく語っていけると思い。この4章の終わりで一つの山場があるので、最終章はその山場との戦いになる。自分で設定した山場を超える盛り上がりがないと、エンディングの迫力がない。自分との戦いになるのだが、これが小説を書く楽しみである。これからの10日間ほどが、創作というのものの最終的なピークとなる。スペイン風邪はようやく回復のきざしを見せているので、何とかなるだろうと思う。

文藝家協会理事会兼新年会ま。中華料理屋で新年会。報告はなるべく短くしたいのだが、著作権審議会の報告など、必要なことは話さないといけない。実は著作権の仕事は、かなりシビアな状況にある。わたしはボランティアでやっているわけだが、この分野で儲けようという人々が、さまざまなアタックをかけてくる。民営企業の試みを妨害するわけにはいかないが、文藝文化を守るためには、商業ペースを守るだけでいいのか。わたしには良識と理念がある。それに対して、金儲けだけの振興の企業がある。ルールを侵害しなければ、何をしてもいいというルールは、大人の社会では通用しない。大人の社会では、何もかもを法律で束縛したくないという暗黙の了解があるからだ。社会というのは、そういう暗黙によって成立している。法律だけで動いている社会ではないのだ。その暗黙の了解の背後には、伝統的なモラルがあったりする。若い人が、新しい世界を切り開きたいという意気込みは理解したい。しかし、法律の外にも暗黙のルールがあるということは、理解してほしい。法律の文言にすべてを書き込むのは不可能なので、不文律のルールというものがある。法律に不備があるというだけで、インチキをしていいということではない。その意味では、昨年、証券会社の誤入力で、外資系の企業が不当に利得を得たことに、このページでわたしも問題提起をした。幸いなことに、利得を得た外資系の企業も、儲けをはき出して、世のため人のための基金にしたいと申し出ている。社会とはそういうものだ。とくに日本の社会はそういういたわりの気持ちで成り立ってきたわけで、外資系の企業もそのことを理解しているのだと、少し心あたたまる思いがした。 01/20
文藝家協会新年会。少し疲れた。

01/21
雪。めじろ台男声合唱団の練習日だが、声も出ないので欠席しようかと思っていると、中止の連絡が入った。しかしめじろ台在住の人だけで、雪見酒をやっているのではと思うと、少しくやしい。

01/22
雪がまだ残っている。スペイン風邪で声が出なくなって、少し回復しかけると仕事でしゃべるということのくりかえしで、まだ声が充分に出ない。本日は宴会が一件あったのだが、申し訳ないが欠席。木曜日に講演があるので、それまでに体調を調えないといけない。

01/23
徹夜でフットボールを見る。スティーラーズ快勝。前にも書いたが、わたしが応援しているのは、スティーラーズ、ベンガルズ、コルツ、ジャイアンツだが、どちらかというとスティーラーズが一番好きであった。ロスリスバーガーという二年目のクォーターバックの老け顔が好きで、バスというアダ名の巨体ランニングバックのベティス、それに神出鬼没のセイフティー、ポラマルの三人がヒイキである。ポラマルは日本テレビではパラマールと呼んでいるので、違う人みたいな感じだ。これでスーパーボウルは目が離せなくなった。その日までに、現在執筆中の作品が完成していることを祈る。

01/24
学生の宿題を見る。仕事はいよいよゴールが見えてきた。枚数もちょうどいいくらいのところまで来ているので、ここからはコンパクトに語っていきたい。感想。誰も死なない話なので、泣き所がない。全体に明るい作品になった。ただし、主人公がやや暗いので、ずっと息を詰めているような感じがある。そういう小説が好きな読者には、いい作品になりつつある。

01/25
世の中はライブドア問題で騒いでいる。わたしは株のことはよくわからないが、これは一種のネズミ講だろう。ネズミ講では、講の始めの方で参加した人は大儲けできる。警察に摘発された時に出資していた人は、ババをつかまされる。ネズミ講が犯罪的なのは、無限にババが増殖するようなシステムだからだ。株を無限に分割するというのも、原理は同じだと思う。ふつう分割すると、そのぶん株の価値は下がるのだが、新たに株券を刷ってこれで企業を買収する。会社を売る人は、そんな紙切れで会社を渡すことはないはずだが、ここに怪しいファンドが介入して、現金を渡して株を買い取り、その買収のニュースを流して株価が上がったところで売却するという、タイムラグを利用すると、まさにネズミ講のように、株が増えつつ株価も上がるという、手品みたいなことができるわけだ。これは株を分割していいというルールそのものがおかしいのだし、1株でも売っていいということにしている東証のルールもおかしい。実際に、ライブドアの株を1株ずつ売られたら、東証のシステムが壊れるというのだから、これは法律と東証のシステムに非がある。確かに法律とシステムの不備をついて、インチキをした人々の犯罪は追及しないといけないけれども、法律と東証のシステムに不備があったことは事実で、危機管理に対する意識が希薄だったといういかない。まあ、わたしは株など買わないので、どうでもいいことである。
まあ、小説家が小説を書いているというのも、パソコンのキーを叩いているだけの虚業であるが、なるべく人に迷惑をかけないようにしたいと思う。ところで、去年の年末に出した『空海』の増刷が決まった。買っていただいた読者に感謝したい。

01/26
書協の著作権関係の委員会の会合で講演。その後、宴会。いつもお世話になっている人が多い。仲間とか、友人というほどではないけれども、知らない人でもない。そういう人と飲むのも、なかなか面白い。

01/27
学生の宿題は終わったが、卒論がまだ残っている。1日に2本か3本読めば間に合うだろう。小説はゴールが見えているのだが、そこに行くまでの手順がまだいくつかある。この作品では、主人公が幻の父親を追い求めている。その父親が登場するところがエンディング直前の山場だ。父親、恋人、親友という順番でエンディングに到る。恋人をラストにもってこないのが、オシャレなところである。何よりも大切なのは、友情でしょう、皆さん。この手順を、コンパクトに進めないと、もたれる。とくに父親はもたれそうなので要注意。

01/28
卒論、全部読み終えた。これで自分の仕事に集中できる。父親の出てくるところは前夜のうちに書き終えた。いまは恋人とのラストシーン。セックスはしない。しないというか、するのかもしれないが、小説はその点には触れないということ。わたしは教え子には、肉体の存在感をちゃんと書けと指導しているのだが、自分の小説では、肝心の所はネグッてしまう。それが自分のキャラクターだと思っている。たぶん、今夜の明け方までには草稿が完成すると思う。

01/29
明け方、というか、朝になってから、草稿完成。仮眠してから、プリントとして読み返している。「空海」みたいな大作ではないし、前半部分はスペイン往復の飛行機の中で文章をチェックしているので、大きな直しはないだろうと思う。

01/30
前夜は気持ちが乗らず、2章の半ばくらいまでしか進まなかった。今日は散歩には行かずに集中できたが、3章半ばのところで次男が来たので中断。四日市にいる次男とは、正月にスペインで会って以来である。日帰り出張の帰りだといっていた。晩飯だけ食って帰っていった。さて、これから明け方まで集中すれば、4章くらいまで行けるだろう。明日の夕方までに最後までチェックできれば、夜中に入力をして完成ということになる。明後日は卒論口頭試問なので一日つぶれる。明日中に完成できれば手順がいい。ダメだと研究室で入力作業をすることになる。
明け方までがんばったが、問題が一つ発生。ヒロインとは別に登場するもう一人の女性のキャラクターが、スムーズに流れていない。少し文章を追加する。書いている時の速度と、読者が読む時の速度は明らかに違う。そのため、最終チェックは、読むスピードでやらないといけない。そのスピードの違いから、思いがけない破綻が見つかることがある。で、プリントのチェックは3章でストップ。これでは明日中にチェックが終わるかかどうかは微妙。いずれにしても、水曜日に研究室で入力作業をすることになりそうだ。

01/31
月末だ。今月はあっという間に終わった。スペイン風邪のせいだ。さて、青春小説。ゴールは見えているのだが、たどりつけない。いま4章のチェックを進めている。まだキャラクターが揺れている。手探りで書いたところが、うまくいっていない。しかし全体としては、面白い作品になっていると思う。誰も死なないので、泣かせどころがないのだが、中身はある。大学生の話だが、中学生の頃から話が始まるので、「いちご同盟」の読者もスムーズに話に入っていけると思う。


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