「空海」創作ノート7

2005年3月

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03/01
教育NPOとの協議。とくに問題はない。いよいよ学校からの補償金のシステムが動き始める。一年間やってみないと成果はわからないが、半年ほど経過した時点で、状況を見極める必要があるだろう。その上で、多くの教育関係者に成果を訴えたい。
月が変わったので、ノートを一新して、「空海」に集中したい。旅行から帰って書き始めた「空海」の新稿は順調に進んでいる。冒頭に晩年の空海が生い立ちを回顧するシーンを置いたが、その後はこれまでと同様の展開になる。ただ晩年の空海の視点で事物を眺めているので、ものの見え方が変わってくる。それと、偶発的な要素をなるべく少なくして、空海のキャラクター形成が必然的なものであったということを読者に伝えたい。動物の使い方をどうするか。仏教との出会い。儒教批判。漢詩への興味。とにかく讃岐にいる間に空海のキャラクターのすべてが決まってしまう。ここは重要である。

03/02
北海道新聞の取材。老人問題。いつも同じ話ばかりしているが、相手が変わるのだから同じ話でいいのだ。下北沢まで散歩。マウスパッドを買う。デスクトップのパソコンに変えてからどうも使い勝手がよくない。マウスのボールは洗ってみた。パッドを変えて試したい。いまネット用に使っているパソコンは光学式のマウスで、一度こっちを使うと、ボールを転がす方式はかったるく感じるのかもしれない。

03/03
早稲田で検診。以前にも同じ検診を受けたことがある。客員教授を4年つとめ、それから4年休んでいてまた復帰する。ということは8年前にも同じ検診を受けたことになる。レントゲン技師がわたしのことを憶えていた。血圧が少し高い。8年前にも同じことをいわれた。

03/04
新潟日報の取材。内容は一昨日と同じ。いつも同じ話だが、取材記者が違うから、話の展開も違う。そこが面白いといえば面白い。結局、話題の順番が違うだけで、最終的には同じ話になるのだが。これが講演だと、時間が限られているので、全部は話せない。どういう順番で話すかは重要だ。インタビュアーがいないから、いつも同じ話になるかといえば、そういうわけでもない。その日の気分でまったく違う展開になる。そこが面白い。明後日はまた講演。先週の上尾とはまたまったく違う話になると思う。

03/05
土曜日。何もない休日。明日は日曜日だが講演があるので、休みは今日だけ。連載エッセーを片づける。散歩は三軒茶屋。一ヶ月ほど前に、テレビで紹介されたハンバーガー屋を探したけれども見つからなかったとこのノートに書いたのだが、それを読んだイギリスにいる昔の教え子からメールで情報が届いた。教えられた通りに行ってみると確かに店があった。茶沢通りからかなれ離れているので気がつかなかったのだ。それにしても、三軒茶屋はわたしの地元なのに、イギリスから情報が届くというのは、何だかおかしい。

03/06
前橋で講演。先週、上尾で講演したのと同じ手順で、駅で担当者の出迎えを受け、車で会場に向かい、老人問題について講演する。デジャビューを見ているような感じ。帰りの新幹線はスキー帰りの人々で満員。その雰囲気にとけこめなかった。

03/07
少し仕事をしてから、文藝家協会へ。理事評議員会。こちらの報告も長かったが、他にもテーマがたくさんあって、長時間の会議になり、疲れた。夜中も仕事。一定のペースで仕事ができている。

03/08
今週はわりあいにヒマ。本日は公用なし。花粉が舞っているようなのでマスクをして下北沢まで散歩。アンコ屋公園でサギのカップル発見。北沢川緑道にもいつも白鷺(コサギ)がいるのだが、必ず1羽だけだった。緑の生い茂った美しい小川だが、世田谷区が造った人工の川だから、サギの食料が豊富にあるとは思えない。この川で生きられるサギは1羽だけだろうと思ったら、本日、彼は恋人をつれてきたみたいだ。様子を見ていると、まだ彼女の方は態度が冷たく、恋人未満という感じだったが。

03/09
三軒茶屋へ散歩。今週はヒマ。というか、自分の仕事に集中しないといけない。雑文の締切もないのでひたすら「空海」と対面している。廃棄した1章を書き直している。視点が変わったので、まったく新たなものになる。もとの原稿を見ずに書いているので、よくなっているのかわからないてが、晩年の空海の立場から過去を振り返っているので手順がよくなった。空海の最初の師との出会い、初恋の少女との出会いはうまく書けた。ここから哲学的なものを展開していく。法華経の内容をちゃんと伝える。最澄とどこが違うのかを読者に伝えるために、経典についても説明していく。ここを簡略化すると内容のない偉人伝になってしまう。

03/10
早稲田大学で検診の結果を聞く。8年前にも同じ手順で検診を受けたので、この日が結果を聞くだけで終わることがわかっていたので、妻の車を待たせておく。結果はまったく問題なし。肝臓がギリギリであるが、これは健康診断でつねに指摘されることで、毎日寝酒を飲んでいるので仕方がない。酒は人生の楽しみである。これがないと生きていけない。まあ、ギリギリだがセーフなので、問題はない。新宿の高野へ行って「あまおう」のイチゴパフェを食べる。テレビで紹介していたのを妻といっしょに見ていて、食べに行こうということになった。しかしシーズンを少しすぎているので、まずまずという感じ。この値段でスペインならワイン飲み放題のフルコースが食べられる。牛丼なら何杯もおかわりできる。しかし高野は満席であった。オバサンたちがデコポンパフェを食べたりしている。若い女性もおおぜいいた。女性は金持ちなのだ。若い男は牛丼しか食べられない。この国はどうなっているのか。

03/11
雨。傘をさして下北沢。何ごともなし。法華経についての説明が少し長くなっている。大丈夫か。理屈っぽくならないように、少女との会話を混ぜて展開している。

03/12
世田谷文学館。妻に車で送ってもらう。この賞の選考をするようになって5年目くらいか。最初は田久保さん、いまは青山光二さんと選考をしている。わたしが担当しているのは小説部門だが、短歌や俳句など、合計8部門あるので、選考委員の顔ぶれが多様で、賞の贈呈式は楽しい。1席、2席、3席2名と、毎年、4人の受賞者と歓談することになる。今年の1席はわが同世代の男性。わたしのデビュー作の「Mの世界」をリアルタイムで読んだというから、相当の文学青年だったようだ。2席、3席は若い女性だった。もう一人の3席は欠席。病気を扱った作品なので、本当に病気なのではないだろうか。

03/13
日曜日。妻の運転でスーパーへビールを買いにいく。ビールといっても発泡酒だが。いま愛飲しているダイエットだけが安かったのはラッキー。何の味もしない炭酸水みたいな飲み口が気に入っている。これを飲み慣れると、生ビール以外のふつうのビールは苦くて飲めない。本日は雑文ばかり4件片づける。

03/14
今週も割合にヒマ。三軒茶屋へ散歩。少し遠回りして世田谷公園の方まで行ったので疲れた。三軒茶屋は奥が深い。岳真也氏の同人誌「えん」に、かつての同人であった普光江泰興さんの追悼文を寄稿。偉大な才能をもった愛すべき人物であった。

03/15
本日も外出の用件はない。若林のあたりまで散歩。少し空気が温もってきた感じ。自宅のごく近くで白鷺目撃。グライダーのようにこちらに向かって飛んできた。すぐ前を鶏を抱いて人が歩いていて、一瞬、白鷺が鶏にガンをつけたような感じがしたのは気のせいか。

03/16
著作権情報センターの理事会に出席。まぎらわしいのだが、わたしが事務局長をつとめているNPOとはまったく別の組織。NPOの名称はは日本文藝著作権センターで、年間予算400万。これに対し、本日出席した著作権情報センターの方は億単位の予算である。初台のオペラシティーの中に事務所を構え、付属の研究所ももっている。著作権について質問のある方はそちらの方にどうぞ。
さて、「空海」の方は、主人公のライバルを登場させた。草稿では初恋の女性と、何の障害もなく愛し合うことになっているのだが、それでは小説として面白くないので、ライバルの若者を登場させることにした。メロドラマではないのであまり深入りしたくないが、空海の青春時代の唯一のロマンスなので、感性に訴える描き方をしたい。この人物の名前を半月くらい考えていた。バサラとか、ハンドマとか、梵語にしようかと思ったのだが、単純に、「金剛」ということにした。ヒロインの名が「光明」なので、漢語で揃えることにした。修験者の里に生まれた若者なので、この種の名前にするのも不自然ではない。太郎とか花子では話にならない。

03/17
集英社の編集者と三宿で飲む。わたしの文庫の多くは集英社から出ている。ある時期から意図的にそうしたのだが、次々に出していないと、本屋の棚に置いてもらえないので、何か新作を出したい。4月から大学に行くので、大学を舞台にした現代の青春小説を書きたい、というような話をした。話はしたが頭の中は「空海」でいっぱいなので、それ以上の具体的なプランはないのだが、とにかくなるべく早く「空海」を完成させて、次のプランに向かうという約束はした。というわけで、「空海」に締切はないのだけれども、しだいにプレッシャーがかかってきた。

03/18
議員会館にて某代議士と面談。文芸著作権について必要な説明をする。陳情といった類のものではない。状況認識についてこちらの考えを述べただけだが、とくに教育や福祉については、機会あるごとに広報活動をしていれば、やがてはそれが共通の認識として広く知られるようになる。まあ、毎日の散歩の延長と考えればいい。ただし今日はかなり花粉が舞っていたようだ。思わず、薬をのんでしまった。夕方、眠くなって困った。

03/19
今日も花粉がひどそうなので薬を飲んだ。すると眠い。「空海」は狼と遭遇するシーン。草稿にはない新たな領域である。

03/20
日曜。狼の出るシーン、完了。狼が出る前に、鹿をしとめるシーンを書いたのだが、わたしには「鹿の王」という名著(?)もあり、鹿は神聖な動物である。よって鹿ではなく、猪をしとめることにした。猪はまあ、タタリ神で、わたしの「ヤマトタケル」にも敵として登場するから、しとめてもいいだろう。

03/21
自宅にて取材と撮影。「一個人」というグラビアの多い雑誌などで、何カットも写真が必要で、撮影だけで疲れた。テーマは「法華経」。これを4ページにまとめるのは大変だが、それは取材記者の仕事である。とにかく、わたしの「三田誠広の法華経入門」を読んで、それを紹介してくださるのだから、ありがたいことである。

03/22
図書館との協議。茅場町の図書館会館。午前中の会議の時はいつも妻に車で送ってもらう。今年は妻の給料(青色申告)を下げたので申し訳ない。その後、新潮社へ出向いて担当編集者と打ち合わせ。次の新潮新書の企画など。先日の集英社との話し合いで、今年の後半のスケジュールが決まっている。その前に、何かもう1つ仕事ができそうだ。そのためには、「空海」を今年前半で仕上げてしまいたい。ここまで、「空海」に関しては締切なしでやってきたのだが、構想がほぼ頭の中でまとまったので、そろそろエンジンをかけて前進したい。

03/23
文藝家協会で知的所有権委員会。わたしが一人でやっているさまざまな試みを説明して、委員の皆さんにアドバイスをいただく。難問が山積しているので、すぐに結論の出るものではないが、けっこう内容のある話し合いができたと思う。

03/24
エディターの中村くんと久しぶりに三宿で飲む。忘年会以来か。バジリコに勤めていて「犬との別れ」を出してくれた中村くんだが、わたしの本を出した直後に退社して、いまはフリー。わたしの本が出るまでということで頑張って仕事をしていたのだろうと思う。さて、もう一ヶ月以上も前のことだが、スペインの話などする。あとは雑談。焼酎と赤ワインを飲んで、気持ちよく酔った。

03/25
「空海」いよいよ第一章の山場の初恋のシーン。草稿でも盛り上がったのだが、草稿を破棄してやり直しているので、もっと輝かしいシーンにしたい。日本、イランに負けた。まあ、バーレーンに勝てばいい。

03/26
土曜日。何事もなし。夜中に次男と嫁さんが来る。友だちの結婚式の二次会、三次会で遅くなったとのこと。次男は四日市に転勤になったので会うのは久しぶり。スペインにいる長男とは先月会ったが、次男と会うのは正月以来か。

03/27
日曜日。次男夫婦とともに、母のところへ行く。めったに東京にいることがないので、次男がわが母に会うのは久しぶりだし、嫁さんは初めて。母は今年卒寿であるが、まったく元気である。その後、わたしだけ電車に乗って、上野へ行く。淀井敏夫さんの「お別れ会」。淀井さんは、母の従兄である。偉大な彫刻家で、作品の展示はさまざまなところで見たことがあるが、独創的な作風である。訃報はスペイン旅行中に知ったので、通夜や密葬には行けなかった。美術家ばかりの集まりで、知人もまったくいないので、献花だけして失礼した。その後、妻、次男夫婦と合流して、上野界隈を散歩。花はまったく咲いていないのに、上野公園は異様に盛り上がっていた。ゼロ分咲きの木の下で、宴会をやる人々は何を考えているのか。しかし出店はあるし、雪洞も灯っているので、雰囲気は出ている。よく見なければ花が咲いていないこともわからない。宴会をしている人々は、花などろくに見ていないということだろう。

03/28
日本点字図書館の評議員会。とくに発言すべきこともなかった。某評議員の盲導犬が新しい犬に変わっていた。まだ若いので、プロフェッショナルに徹しきれていない。すぐに尻尾を振るし、近くの人に懐いてしまう。とても可愛い。会議の間、床に伏せて寝ているのだが、いびきをかいたり、寝言を言ったりする。ずっと犬を見ていた。

03/29
本日は会議のダブルヘッダー。疲れる。しかも5人くらいはまったく同じメンバーで、かわりばえがしない。暑くなるという天気予報を信じてコートを着ずに出かけたら、最後まで寒かったぞ。

03/30
本日は公用なし。トコヤへ行く。それと駅前の文房具屋へ頼んだ名刺をとりにいく。大学の先生を始めたので肩書きが増えた。天気は好いがまだ寒い。花も咲かない。カルガモも寒そうだ。まだ子育てのシーズンではないようだ。サッカーはオウンゴールで辛勝。見ていて疲れた。

03/31
本日も休み。どういうわけか、しばらくの間、公用がない。ただ今週の土曜に大学で新規採用の教員の集いがあって、いよいよ大学が始まる。緊張感はない。会議と違って、議論をする必要がない。講演会と違って、時間内に話をまとめる必要がない。とはいえ、90分のコマを、一日に2つ、連続でやるというのは、かなり疲れる。学生の作品を読むという苦行も、後半には待っているが、しばらくは講義だけなので、この間に「空海」を先に進めたい。


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