善鸞06

2022年06月

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06/01/水
このノートも6ページ目になった。『善鸞』に取り組むということで資料を読み始めたのだが、『少年空海アインシュタイン時空を超える』と『天海』の最終仕上げ、初校、再校の作業が入ったので、実質的に『善鸞』に取り組んでいたのはごくわずかだ。途切れがちにオープニングを仕上げたがまだ第一章は終わっていない。この作品は主人公が東国に行ってからがドラマの中心となるのだが、京にいる間の親鸞と覚信尼などの重要人物をしっかりと描いておかないといけない。最終的に覚信尼の孫の覚如の視点となって晩年の善鸞を眺めることになるだろうと予想している。どのあたりで視点を切り替えるかも重要な課題だ。最終章の半ばくらい、ぎりぎりできりかえるというのも一案だが、その前に伏線として、少年時代の覚如を描けないかとも思っている。覚如は浄土真宗の系図では3世にあたるし、実質的にはこの世襲の系譜の出発点でもあるので、重要人物であることは間違いない。さて、本日はまた三鷹サテライト。自分の担当の夏目漱石の講座の収録は終わっているのだが、他の先生と共同で森鴎外没後100年の記念講座の1コマを担当している。ぼくの割り当ては「高瀬舟」を中心とした晩年の歴史短篇。「じいさんばあさん」とか「寒山拾得」の話などもして楽しく語ることができた。夕刻、また妻の甥が現れる。一昨日同伴した彼女は先にチリに帰ったとのこと。彼は明日出発する。甥が帰ったあと、明日われわれは仕事場に移動するので荷物を作る。今回は一週間だけの滞在だが、いちおう資料はごっそり持っていくことにする。

06/02/木
仕事場に移動。掃除をして、パソコンなどを定位置に置く。これで仕事の環境が調った。涼しい自然の風が入ってくる。ふだん高層住宅で生活していると風を感じることがない。自然の風にウグイスの声が混じっている。とにかくしばらくのんびりしていたい。

06/03/金
仕事場での1日。ここは浜松市ではあるのだが西の端なので、山を一つ越えれば愛知県。昔は有料だった多米トンネルを越えて、豊橋のビオアツミという食品スーパーに行く。レジでお金を払ってトレーを受け取り惣菜売場でセレクトして中二階で食べるカフェテリアがある。夕食の弁当も買って帰る。朝のうちに梅の実の収穫。高枝切りも活躍。今年は豊作だ。自分の仕事も少し。

06/04/土
今日は散歩に出かけた。いちおうマスクは手にしているのだが、1時間ほど歩いた間、人の姿を見ることはほとんどなかった。管理棟の前のアリーナで宴会をやっていて、そのあたりは人が往来していたが、2メートル以内に近づくことはなく、結局マスクは一度もしなかった。空気が爽やかだ。『善鸞』の見直し。覚信尼が出てくるところまで来た。ここからは新しい展開だが、覚信尼の夫となる広綱の初登場のシーンはしっかりキャラを書き込んでおきたい。さしたる重要人物ではないが、三世の覚如の祖父にあたる人だから、読者の胸にイメージが残るように、人柄がわかるような描写が必要だ。

06/05/日
仕事場を建ててくれた大工さん来訪。ここに来る来客はこの人だけ。草刈りの手配を頼む。そのあと鷲津の郵便局へ。妻が妹に収穫した梅を送った。梅を送られても先方は困るのではないか。妻は大量の氷砂糖とともに瓶に詰めて梅シロップを作ろうとしている。イオンタウンの百円ショップに行き、先日買ったノートパソコンの下にはめるゴムの半球を買う。これはまことに便利なものだが、さらに温度が高くなった時には手前側にも敷いて風通しをよくすればいい。電池で動くファンも買った。これは200円。『善鸞』は新たな領域に進んでいる。まあ、あまり無理をせずに、気の向くままに仕事をしたいと思う。

06/06/月
昨日の夜から豪雨。午前中も台風のような風雨。午後になると空が明るくなった。ただ風は強い。散歩にも行かず。ひたすらパソコンの前に座っていたが先に進まず。ここで一気に時間を飛ばすかどうか、迷っている。仕事場にいられるのもあと1日。まあ、のんびりするのが目的なのでこれでいいだろう。

06/07/火
本日は快晴。パソコンに向かう。覚信尼との出会いは何とかまとまった。ここからはややアラスジ的な展開となり、親鸞と善鸞の議論によって第一章が締めくくられる。その内容は前著『親鸞』と重なるところが多いので、引用するだけで先に進めそうだが、そっくり同じというわけにもいかない。思想小説としてこの部分が作品中でもいちばん密度の高いところになるかもしれない。「カラマーゾフの兄弟」でいえばアリョーシャとゾシマの対話みたいなものだ。『善鸞』という作品は、善鸞が父と別れて東国に向かってからが主要なストーリーとなる。親鸞が出てくるのは序章だけだ。そこで一つの山場が必要で、ここさえできればこの作品の峠を越えたといってもいい。ということで、これからの半月が山場になるのではないか。

06/08/水
東京へ戻る。本日はどういうわけか道路が空いていた。午後2時半には御茶ノ水に着いていた。郵便物がたまっている。以前住んでいた大邸宅には巨大な郵便受けが設置されていて、一年留守にしていても大丈夫なスペースがあった。郵便受けというよりも、ぼくの書斎の壁に穴があいていて、いくらでも郵便物が入るようになっていたからだ。いま住んでいる集合住宅の郵便受けは限られたスペースなので、一週間留守にすると満杯になってしまう。先月は仕事場に2週間いたのだが、郵便物の量は今日と同じくらいだった。月の始めは郵便物が多いのだろう。メールは仕事場でも見られるので問題はないが、たまった郵便物は対処しないといけない。返事を求めるものもあるからだ。この作業で1時間くらいかかってしまう。ストップしていた新聞がまとめて玄関前にドサッと置いてあったのでこれも読む。結局、移動日は仕事にならない。

06/09/木
医者に行く。薬がきっちりなくっていた。先月の血液検査の結果を聞く。少しよくなっていた。寝酒の量を半分に減らした。寝酒の時のツマミも半分になるので、この2ヵ月で2キロ痩せた。このぶんでいくと年末までには快適な体重に落ち着いているだろう。SARTRASの分配委員会。いろいろと課題があって解決に手間どっているが、前向きに進んでいる。いずれにしてもお金がないわけではなく、いかに公平に分配するかという問題なので、とにかく公平で機械的に分配できるようにシステムを整備すればいいだけなのだが、システムの構築には手間がかかる。小さな問題が生じ、放っておくと公平性で損なわれるからだ。まあ、何とか解決できそうな方向に進んでいる。

06/10/金
SARTRAS共通目的委員会。1度だけ発言。作品社の高木さんから連絡。6月30日に見本とのこと。ようやく『天海』の実物を手にすることができる。ありがたい。久し振りに地下鉄で茗荷谷へ行き、清水橋を通るコースを散歩。久し振りなのでかなりの疲労感を覚えたが何とか自宅に帰り着いた。丸ノ内線で四つ先の駅から歩くことになるが、アップダウンがあるので疲れる。リアルな会議があったころは、霞ヶ関のあたりから徒歩で帰ったこともあるが、皇居前の道は平坦なので疲れない。茗荷谷から小石川、白山、西片、本郷と、台地と谷間を上下するコースはなかなかの運動量だ。

06/11/土
本日は水道橋までの最短コースを散歩。月末に4回目のワクチンを打つ会場の前を通った。3回目の時の病院が一番近いのだが時期が合わなかった。

06/12/日
天気予報では雨だったが、午後からは天気になった。短い散歩。作品社から頼まれた解説の仕事を仕上げたいと思い、送られてきた作品を読み込む。鷲尾雨工、岡本綺堂、近松秋江、坂口安吾といった作家の徳川家康を描いた短篇を集めたアンソロジー。去年は同じような企画で北条義時の解説をした。義時については小説作品は少ない。家康はいろいろと書かれているはずで、集められた作品もなかなかおもしろかった。

06/13/月
我孫子で講演。我孫子に行くのは4回目。本日のテーマは聖徳太子。ひたすらしゃべり続けた。観客がいるのはありがたい。反応があるのでこちらも元気が出る。

06/14/火
文藝家協会理事会。今回から開始を1時間遅くして終わってから軽食が出ることになった。そのせいか、リアルな出席者が多かった。食事をしながら雑談をするのが、久し振りなので、まあ、いいかなと思った。天気予報では雨ということだったが傘を使わなかった。

06/15/水
本日は休み。雑文少し。あとは資料を読む。夕方散歩に出たが霧雨。小川町から淡路町に到る地下通路を通っただけですぐに帰ってきた。棋聖戦の中継がアベマでやってそうだと思い出したからだ。iPadをつないでみると、藤井聡太くんが一方的に時間を消費し、永瀬拓矢くんは余裕をもって闘っている。コンピュータの判断も永瀬くんが70バーセントほどで、的確に藤井くんの王将を追い詰めている。さらに永瀬くんの王将は、左辺の9筋を通って逃げられ、その闘争路を香車2枚が守っている万全の構えだった。藤井くんの2連敗になるのかと見ていると、順調に攻めていた永瀬くんがある1手を指した時に、コンピュータの数字が突然、藤井くん90%と一気に逆転した。何が起こったかわからなかったが、コンピュータ推奨の手が9七銀という、とんでもない手を示している。その地点には永瀬陣の香車と桂馬が利いているので、ただで銀を捨てる手だ。しかしその位置に自分の駒が入ってしまうと、王将の逃げ道が一瞬だが塞がってしまう。その間に一気に攻めよというコンピュータの判断だが、残り時間2分で、実質1分将棋を続けている藤井くんがこの手に気づくのか……、行き詰まるような1分間の果てに、残り1秒で藤井くんは銀をつまんで、9七の位置に銀を投げ出した。マスにきっちり収まらないほどのぎりぎりの一手だった。そこからの数手で、藤井くんは99%となり、永瀬くんは天を仰いだ。コンピュータがこの手を表示した時、解説者はこれに気づいていなかったようで、藤井くんの劣勢を解説していたのだが、9七銀の手を見て、「これは神がかっていますね」と慨嘆していた。指されてしまえばこれしかないという逆転の一手なのだが、香車と桂馬の前に銀をただで差し出すという、ふつうの人間には思いもつかないタダ損の手なので、これに気づいた藤井くんはまさにコンピュータの申し子というしかないだろう。見ているだけでも感動の一手で、藤井くんがその手を指した時は、思わず声を上げてしまった。

06/16/木
SARTRASの総会、理事会。この総会というのがよくわからないのだが、SARTRAS創立以来、年に一度は総会をやる。メンバーは6人しかいない。理事会より総会の方が人数が少ないというのは珍しいのではないか。創立に携わった瀬尾太一さんが去年お亡くなりになったので、なぜこういうことになったのか訊くこともできない。とにかくいまはこのシステムで順調に動いているのでこのまま行くのだろう。本日の会ではただ「手を挙げる」ボタンを押すだけでいいだろうと思っていたが、理事会で副理事長就任の挨拶を一言と言われて、あわてて音声ミュートを解除してやや長目の挨拶をした。このSARTRASという組織はまだ瀬尾さんの構想の段階からいろいろと相談を受けていたので、設立の経緯を知っている人も少ないのではないかと思い、一言発言しておいた。さて、昨日でインターネットエクスプローラーの保証期間が終わった。エッジを入れたのだが動作が遅いし慣れていないのでまだしばらくはIEを使うことになりそうだ。怪しいところにつながなければいいのだろう。銀行などにはつながない。妻は最新のパソコンをもっているので大丈夫だ。何よりこのノートもIEで作成している。自分のホームページをパソコン内で表示させてこのノートに移り、バーの中の「ページ」を押すと、「メモ帳で編集」という項目が出てくる。そこをクリックするといま書き込んでいるメモ帳が出てくる。もう20年以上のこうやってノートを書いてきた。とにかくこのノートはIEで書き続けるしかない。何年かのちにはIEが自動消滅するという恐ろしい情報もあるのだが、まあ、それまでにはこのパソコンも動かなくなっているだろう。

06/17/金
本日は公用はないが、新宿三丁目でマッサージ。一昨年の末に打撲した右肩が完治していない感じが残っていて、今日はそのあたりの入念なマッサージがあって、とても痛かったが、少し楽になった気がした。この年齢になると、体の各所に問題があるので、多少の不具合は慣れで凌いでいる。『善鸞』はここまでのチェックを終えて先に進めそうだ。すべての登場人物がキャラクターをもって動き始めた。

06/18/土
週末。小石川後楽園のあたりまで散歩。ここまで行くと8000歩になる。何ごともなし。このところ、Footballのことをほとんど考えていない。トレードや契約更改のニュースもほとんど入ってこなくなった。ブレイディーのバッカニアーズはほぼ去年と同じメンバーだがタイトエンドのグロンコウスキーがまだ契約していない。たぶん練習をサボルために契約を先延ばしにしているのだろう。ラムズはラインバックのエッジラッシャーのボン・ミラーが抜けた。ワイドレシーバーのベッカムは怪我が長びいているので未契約だが、プレーオフには戻ってくるだろう。スティーラーズは新人QBがどこまでやれるか。チーフスから移籍したタイリーク・ヒルがタゴバイロアのパスで活躍できるか。ヒルがいなくなったチーフスはどうするのか。ボン・ミラーが入ったビルズは最強のディフェンスになった。ライアンが入ったコルツ、ラッセル・ウィルソンの入ったブロンコスと、今シーズンはAカンファに有力QBが結集した。ベンガルズのバローが2年目で開花したように、2年目を迎えるジャガーズのローレンスが開花するか。とにかくAカンファの方がおもしろそうだ。

06/19/日
いま住んでいる集合住宅に移って10年目になる。以前に住んでいた世田谷区三宿の家は工務店に設計を任せたオリジナルの家だったが、今回は集合住宅全体の間取りを掲載した分厚い冊子の中から適当なものを選ぶことしかできなかった。で、キッチンの水道栓の横に浄水器の蛇口があることは、入居して初めて知った。東京の水道水は飲めるはずだが、大規模集合住宅なのでどこかに巨大なタンクがあってそこから水が配給されているのだろう。そこに滞留している間に時間が経過するので、水道局が水に入れた塩素の効果が失われる可能性があるのだろうと思う。で、浄水器が付いていることはありがたいのだが、これは毎年、内蔵されている装置を取り換える必要がある。管理人に頼むと取り換えてくれるらしいが費用がかかるというので、自分で取り換えることにしている。これがけっこう面倒で、シンクの下の引き出しを外す必要があるのだが、これ、どうやって外すのか、毎年、苦慮することになる。結局、何かの拍子に外れる、ということがあって問題は解決されるのだが、一発で外れる方法を確立したと思うが、結局、よくわからないままで終わってしまう。引き出しが外れると、中に手を突っ込んで、水道栓を止め、それからホースを2本外して、通信販売で取り寄せた新しい装置につなぎかえればいいのだが、その水道栓の止め方が、これだったかな、といつも迷うことになる。一年前に同じ作業をしているはずなのだが、記憶がまったく失われている。老人というのはこういうものかなという気もする。来年もまた、記憶のないところで試行錯誤することになるのだろう。夕方は歴史時代作家協会のミーティングで、電子出版に詳しい編集者の方の講演があった。ネット上の投稿サイトで評判の書き手に声をかけて本にするという編集者が増えていて、ネット優位の状勢がさらに進むのではという、あまりおもしろくない報告があった。まあ、歴史時代小説の中にも、ライトノベルみたいなものが増えている気はする。

06/20/月
本日は会議が2件。しかも連続しているというか、へたをするとかぶりそうというスケジュールだった。結果として、2つめの会議の5分前に、その前の会議が終わったので、支障なく双方の会議に出席することができた。もしもかぶっていたら、iPadの横にiPhoneを置いて、両方の会議に同時に出席することを考えていた。早稲田の学生が同時に二つの授業の録画を見ていたことが発覚して単位が貰えなかったという話を聞いたことがあるが、リモート会議になるとこういうことも可能になる。まあ、危ないことをしなくてすんでよかった。

06/21/火
深川ギャザリアで買い物。iPadでスマートニュースが見られなくなっていたのだが、昨夜、突然見えるようになった。関係者の努力によってプログラムが修復されたのだろう。ぼくのiPadは妻のおさがりを貰ってものでかなり古い。最新のプログラムでは動かなくなったのだろうが、スマートニュースの関係者が動くように改善したのだろう。IEもそれくらいの努力をしてほしい。いまのところIEは問題なく作動している。エッジも入れたのだが触らないようにしている。動かすとしばらくぼくのパソコンの動作がおかしくなる。ネットの閲覧やZOOMでの会議はiPadを使っているので、IEは自分のホームページの作成だけに使っている。まだしばらくは必要だ。ホームページの作成はIEを使っていてもネットにはつながっていないので問題はないだろう。このシーズンになると、日大文芸賞、まほろば賞、歴時協会賞の選考が迫ってくる。選考会の日取りが決まったがまだ候補作は届いていない。7月に入ったら候補作を読む時間をとらないといけない。それまでは少し余裕があるので深川ギャザリアの紀伊國屋で新書を2冊買った。宇宙関係。『少年空海』を書いたので宇宙のことが気になりはじめた。自分が死ぬということと、宇宙の始まりとは、一種の対極ある事象だと考えられる。死ぬまでの残された時間、この二つの事象について、じっくりと考えをめぐらせたいと思っている。

06/22/水
何事もなし。締切のある仕事は何もない。日大文芸賞の候補作届く。この賞は日大新聞の主催なので受賞作は新聞に掲載される。だから短篇に限定される。W大で15年、M大で10年、学生の作品を読んできたので、読むことには慣れている。まほろば賞も長い作品はないのだが、年季の入った同人誌の書き手が対象なので、読む密度を上げる必要がある。歴時作家協会賞は単行本が対象で、協会賞、新人賞、文庫新人賞と3部門あるので、15冊くらい読まないといけない。しかも世話物、時代物、ファンタジー、剣豪小説、忍者小説など、何でもありなので、比べて評価するのは至難だ。毎年かなり紛糾する。三つの章が重なるので、日大文芸賞は早めに読んでしまいたい。

06/23/木
日大芸術学部で講義。楊逸さんのゼミ。ZOOMなのでいつも会議の時に使う自分の定位置で話をする。定位置というのはパソコンの前の椅子。右側に楽譜立てを置いて、そこに楽譜を置いてギターで伴奏しながら歌を歌うこともあり、楽譜立てにiPadを置いて会議に参加することもある。会議だとパソコンに事前に送られて資料を表示したりするのだが、今回は自分の講義なので、パソコンは使わず。iPadに向かってひたすら語る。後半は学生からの質問に答える。学生の声は聞こえるのだが顔は見える。顔が見えた方が話す方も励みになるのだが、大学の先生に聞くと、学生の顔を全部表示すると大学のサーバーがパンクするらしい。便利なようでインフラが追いついていない。とにかく90分語り続けて役目は果たせた。けっこう疲れた。

06/24/金
昨日の日大での講義で、今月の大きなイベントは終わった。あとは4回目のワクチン接種と、『天海』の見本を受け取って担当編集者と祝杯を挙げるだけだが、それは月末なので、しばらくはひまな状態になる。日大文芸賞の候補作が届いているのでぼつぼつ読んでいきたい。Footballのことも考えてはいるのだが、いまは大きな動きはない。グロンコウスキーが引退というニュースは意外だったが、まあ、まだわからない。ブレイディーも引退を撤回した。それに今シーズンのバッカニアーズには期待できないと感じている。というか、今シーズンはNカンファは全体に低調な感じがする。ラムズが2連覇するのではないか。カウボーイズ、パッカーズ、セインツといった、伝統的なチームがそこそこに戦力を調えているとはいえ、ラッセル・ウィルソンを失ったシーホークスや、2年目QBランスに頼ることになる49ナーズ、何となくチームがばらばらになっているカーディナルスも凋落気味だ。これに対してラッセル・ウィルソンが移籍したブロンコス、ディフェンスを強化したチャージャーズ、それにチーフスのいるAカンファ西は激戦区になった。ライアンが移籍したコルツ、2年目ローレンスのためにオフェンスを強化したジャガーズも楽しみだし、新人QBピケットを擁するスティーラーズ、ドラフトで成果を挙げたジェッツ、チーフスのタイリーク・ヒルをゲットしたドルフィンズと、話題のチームがひしめいている。シーズンの開始は9月なのでまだ先の話だが、そのころには『善鸞』の目途が立っていてほしいものだ。

06/25/土
午後、日本近代文学館評議員会。ZOOMで参加。本日の仕事はそれだけ。夕方、姉が友人とともに来訪。小宴を開いた。姉はぼくより六歳上で、女優として一時代を築いたほどの人だが、いまはほとんどリタイアした状態。ただ秋には旅公演の予定が入っているので、夏場に体を鍛え直すとのこと。体力勝負の職業だけに心配だ。小説を書くのは頭脳労働だから、頭さえボケなければ何歳になっても出来ると思っているが、このところ集中力が途絶え気味だ。暑さのせいかもしれない。熱中症の危険があるので気温30度を超えた日は散歩も自粛している。ぼくの仕事スペースは西日をまともに受けるので夕方はリビングルームに移動して資料を読んでいる。

06/26/日
週末。明日も明後日も公用はない。水曜に予防接種。木曜に見本が届く。今月はそれで終わりだ。来月の後半には長男が孫2人とともに帰国する。まだ先だがやや緊張している。

06/27/月
猛暑。のんびりと仕事。

06/28/火
猛暑。郵便を出しに近くのポストへ。スーパーで買い物。『善鸞』第一章終わる。引き続き第二章に突入。ここからは書くピッチを上げたい。

06/29/水
4回目の予防接種。体内にmRNAが注入される。この遺伝情報はコロナのトゲトゲを作るためのもので、体内のあちこちに配布された情報によって、ぼく自身の細胞がトゲトゲの部分だけを量産する。これに対応して、このトゲトゲを排除する抗体がぼくの体内に増産され、一週間ほどで免疫が成立する(らしい)。ぼくはすでに3回の接種は受けているのである程度の抗体はできている。5ヵ月ほど経過して抗体が減っているはずだが、それでもわずかな抗体は残っている。従って、1回目や2回目の場合の過剰反応は起こらないはずだが、念のために本日は寝酒を控える。就寝前に痛み止めを1錠服用する。それにしても、このmRNAの注入というのは偉大な発明だ。この遺伝情報の注入によって、人の体内に特定のホルモンを増産させたり、ガンを殺す抗体を増産することもいずれは可能になるだろう。遺伝情報を体内に注入するとガンになるとか、悪質なデマも横行しているようだが、「メッセンジャー・リボ核酸」というものの構造や機能を知っていれば、このデマが科学知識の欠如によって発想されたものだとわかる。ともあれ4回目の注入が終わった。今晩ちゃんと眠れれば、自分の免疫が量産されていくことだろう。体というものはうまくできているものだ。改めて70歳過ぎまで生きてこれたことを感謝したい。

06/30/木
作品社の高木さんと藪蕎麦で軽く飲む。『天海』の見本。素晴らしい装丁。一年以上かけた大作だし、20年前くらいからいつかは書きたいと思っていた作品だった。ライフワーク。戦国末期を描くのは初めてのことなのでやや不安はあったのだが、この時代は歴史雑誌などが何度も取り上げているので資料はたくさんあり、雑誌にはビジュアルなイメージもあるので大いに役に立った。この時代を書くことができて、幸福感に包まれている。装丁は輪王寺にある天海像だそうで、いい顔をしている。書いている間、天海の顔についてはとくにイメージをもっていなかったのだが、この顔はぴったりだと思う。『善鸞』は今年中には完成するだろう。続いて『紫式部』が出せればと思っている。ということは来年も2冊の本が出る。次の年に出す作品についてじっくりと考えたい。


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