「あんた何やってるのよ。あ〜あ、売り物を自分で使っちゃって」
「だ、誰?」
声をかけて来たのは、20歳くらいの若い女の人でした。少し派手目な感じの気の強そうな女の人に、少女は思わず身を引きました。
「あのね、さっきから見てれば、おろおろするだけで、全然なってないわよ。そんなんじゃ、売れないのは当たり前でしょ」
「み、見ていたんですか」
「いいこと? 営業は数こなすのが基本なのよ。100人に声かければ1人くらいマッチを必要としてる人がいてもおかしくないわね」
「はい…いると…思います」
「だから1コ売るために100人に声をかける。10コ売りたければ1000人に。100コ売りたければ10000人に」
「そんな…そんなの無理です」
「だから例えよ。売りたいならとにかくたくさんの人に声をかける。あんたみたいにぐじぐじ落ち込んでる暇はないのよ」
「でも…」
「でも…じゃない! いいから行動に移す。ほら通りに出て道行く人に声をかけるのよ」
「は、はい…」
強い口調で言う女の人に少女は逆らえません。