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 第3話/真説・マッチ売りの少女(1)



 

 
「マッチ…マッチはいりませんか…」

 クリスマスイブの夜の街角でマッチを売る一人の少女がいました。

「あの…マッチを……」

 通行人に無視されて泣きそうになる少女。雪のちらつく寒空を悲しげに見上げます。
 ふと気付くと、暖かそうな部屋の中から幸せそうな笑い声が聞こえて来ました。

 美味しそうな料理の臭い、明るい音楽、家族と過ごす幸せなイブの夜。
 それは孤児で明日生きるもままならない自分にはまったく縁のない話なのです。
 少女は惨めさと寒さと空腹感に苛まれて冷たい雪の上に座り込んでしまいました。

「うう…寒い……」

 このままでは凍え死んでしまう。
 少しでも…少しだけでも体を温めなきゃ…。
 そうだ。マッチ…マッチを摺って火を起こせば少しは暖かくなるかも……。

 少女は震える手で売り物のマッチを取り出し、一本摺って火を付けました。
 暖かい光が一瞬燃え上がり、ものの数秒のうちに消えてゆきます。
 
 でも少女にはその一瞬の暖かさが必要でした。
 
 もう一本取り出して火をつける少女。
 それもすぐに夜の冷たい風に消えてしまいました。

 そして3本目のマッチを摺ったその時、誰かが少女に声をかけてきたのでした。