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第22回 Mac OS Xベースの仮想化ソフトウェア「Parallels Desktop for Mac」〜「Parallels Desktop 3.0 for Mac」における「Snapshots(スナップショット)」〜

Mac OS Xベースの仮想化ソフトウェアにおける有力な選択肢の一つとして日本市場にも浸透し、IntelベースMacintoshの普及にも多大な貢献を果たすに至っている「Parallels Desktop for Mac」(Parallels Software International)。米国時間2007年8月6日付にて正式リリースを迎えたVMwareによる「VMware Fusion」(アクト・ツーを通じて日本市場における販売、サポート等も開始)、或いは独InnoTek GmbH(旧InnoTek Systemberatung GmbH)より提供されている「VirtualBox for OS X」等、並み居るコンペティタとの覇権争いにも注目が集まるのではないかと思われますが、今回は2007年6月上旬にリリースされた「Parallels Desktop for Mac」の最新版「Parallels Desktop 3.0 for Mac」における主要機能の一つ「Snapshots(スナップショット)」に焦点を絞って採り上げてみたいと思います。


●「OpenGL」「DirectX」のサポート等、一層の機能強化を果たした「Parallels Desktop 3.0 for Mac」

「WWDC 2005(Worldwide Developers Conference 2005)」を通じて発表されたMacintoshコンピュータにおけるIntelプロセッサへの移行は、多方面において様々なメリットが齎されるに至っていますが、中でも大きな福音の一つとして挙げられるのが、x86アーキテクチャをターゲットとした「各種オペレーティングシステム、アプリケーション等の実行環境」の存在ではないかと思われます。米国時間2006年4月6日に衝撃のBetaリリースを果たしたApple純正デュアルブート支援ツール「Boot Camp」や、「Parallels Desktop for Mac」「VMware Fusion」「VirtualBox for OS X」等の仮想化ソフトウェア、或いはMac OS X環境における「Wine」ベースのWindowsアプリケーション互換レイヤ「CrossOver Mac」等、多種多様な選択肢が存在するニッチな市場となりつつありますが、中でも仮想化ソフトウェアにおける有力な選択肢の一つとして日本市場にも浸透しつつある「Parallels Desktop for Mac」は、「WWDC 2007」を目前に控えた2007年5月31日(米国時間)にメジャーアップグレードに相当する「Parallels Desktop 3.0 for Mac」の概要を発表。同年6月7日に正式リリースを迎えた「Parallels Desktop 3.0 for Mac Build 4124」では、50種以上の新機能、及び100種以上の不具合修正等、大幅な機能強化が含まれるとされる主な変更点として以下の項目等が示されています(主要項目抜粋)。

ホストOS、ゲストOSを含めたシステム要件の詳細が公式サイトにおける当該ページを通じて確認可能となっています。

その後、同年6月11日には「Boot Camp 1.3 Beta」への対応等を含むとされる「Parallels Desktop 3.0 for Mac Build 4128」が、7月17日にはParallels Desktop 3.0 for Mac Build 4124より構成ツールから外されていた「Parallels Image Tool」の再実装や種々のマイナーフィックス、及び微調整等が施された「Parallels Desktop 3.0 for Mac Build 4560」が各々リリースされている他、8月1日からはBuild 5000番台のBetaテストがPublic Betaとして開始されるに至っています。
「Parallels Desktop 3.0 for Mac Build 4560(英語版)」+「Windows XP Home Edition Service Pack 2」
↑「Parallels Desktop 3.0 for Mac Build 4560(英語版)」+「Windows XP Home Edition Service Pack 2」(クリックで拡大します)


●任意の状態に保存した仮想マシンを任意のタイミングに復元可能とするバックアップソリューション「Snapshots(スナップショット)」

上記のように更なる機能強化を果たした「Parallels Desktop 3.0 for Mac」においては、Mac OS X、Windows間における一層のシームレスな連携を実現する「Parallels SmartSelect」や仮想マシン内の各種リソースに対するオフラインアクセスを実現可能な「Paralles Explorer」、或いは以前よりその対応が待望されていた3Dグラフィックスサポート(「OpenGL」「DirectX」等)等が高い注目を集めていますが、今回は仮想化ソフトウェアにおける醍醐味の一としても挙げられ、任意の状態に保存した仮想マシンを任意のタイミングに復元可能とするバックアップソリューション「Snapshots(スナップショット)」をメインに採り上げてみたいと思います。

ファイルシステムにおける「Snapshots(スナップショット)」は、データベースや一部サーバシステムにおけるバックアップソリューションとして活用されるケースが多く拝謁され、定期的(或いは任意のタイミング)にて収集されるデータベース等のバックアップが「Snapshots(スナップショット)」と称されています。また、「NTFS(NT File System)」「UFS2(UNIX File System 2)」等のファイルシステムは各種リソースのヒストリ(バージョン履歴)にアクセスするためのAPIをオペレーティングシステムレベルで実装しており(Microsoftにおける「Volume Shadow Copy Service」等)、予てからMac OS Xにおける採用が囁かれているOpenSolaris Projectによる128bitファイルシステム「ZFS(Zettabyte File System)」(注1)においては、アクティブなZFS領域のクローン、及び置換等をストレージユーザに許容する「ZFS Clone Promotion」(Branching Snapshot)、或いは全てのDescendentファイルシステムに対する再帰的なスナップショットの自動生成を可能とする「Recursive Snapshots」等のテクノロジ等にも応用されるに至っています。

それでは実際に「Parallels Desktop 3.0 for Mac」における「Snapshots」の利用を確認してみる事とします。使用環境は下位レイヤから順に以下のシステムを用いる事とします。

「Parallels Desktop 3.0 for Mac」は、「Snapshots」実装等に伴い旧バージョンに相当する「Parallels Desktop for Mac Build 3214(Ver.2.5ブランチ)」以前のビルドとは仮想マシンレベルでの互換性が失われるため、旧バージョンで作成した仮想マシンを「Parallels Desktop 3.0 for Mac」において最初に起動する際に、仮想マシンのコンバートを告知するダイアログが表示される事となります(可否はユーザの任意によって決定)。変換後は旧バージョンにおいて当該仮想マシンを利用する事ができなくなるため、必要に応じたバックアップ作業が推奨されています。

「Parallels Desktop 3.0 for Mac」における新機能「Snapshots」及び「Undo Disks」は、同一仮想マシンにおいて平行利用する事ができないため、「Snapshots」利用時には事前に「Options」> 「Advanced」 より「Undo Disks」の無効化を確認する必要があります(デフォルト状態は無効化されています)。また「Boot Camp」支援によってインストールされた「Windows Vista」或いは「Windows XP」を仮想マシン(仮想HDD)として利用する際には「Snapshots」「Undo Disks」何れの機能も利用する事ができません。
「Configuration Editor」>「Options」>「Advanced」における「Undo Disks」設定項目。「Undo Disks」が有効化されている状態
↑「Configuration Editor」>「Options」>「Advanced」における「Undo Disks」設定項目。上記画面は「Undo Disks」が有効化されている状態(クリックで拡大します)

「Undo Disks」の無効化を確認した後にゲストOS(この場合は「Windows XP Home Edition Service Pack 2」)を起動し、「Snapshots」を作成すべくした任意の状態にて以下の何れかのオペレーションを実行します。

上記何れかのオペレーション実行後に「Snapshots Parameters」ダイアログが表示されますので、必要に応じた「Snapshots Name」(デフォルトは「Snapshots+連番」)、或いは「Description」(説明)を設定した後に「OK」をクリックします(設定内容は「Snapshot Manager」を用いて随時変更可能)。
「Snapshots Parameters」ダイアログ
↑「Snapshots Parameters」ダイアログ

「Snapshots」作成中
↑「Snapshots」作成中

作成された「Snapshots」は、デフォルトにて各仮想マシンフォルダ内(仮想HDDと同階層)に保存される事となります。また、ユーザの任意にて複数の「Snapshots」を作成する事も可能となっており、次回紹介予定の「Snapshot Manager」を用いてバージョン履歴管理等の一切を行う事となります(Mac OS Xベースの仮想化ソフトウェアにおいて「Parallels Desktop for Mac」と双璧を成すであろうと目される「VMware Fusion」は、「VMware Fusion 1.0 Build 51348」の段階において単一のスナップショットしか作成する事ができず、2つ目を作成する際には先のスナップショットが上書される事となります。尚、Mac OS Xベースの仮想化ソフトウェア第3の選択肢として注目される独InnoTek GmbHによる「VirtualBox for OS X」は「VirtualBox for OS X Beta 2(Ver.1.4.1-r22965)」の段階で「Parallels Desktop 3.0 for Mac」同様、複数のスナップショットの作成、管理等をサポートしています)。

今回はここで一区切りです。次回は「Snapshot Manager」を中心とした、「Snapshot」の管理、及び活用方法等を採り上げてみたいと思います。


●本文訳注

(注1)ZFS(Zettabyte File System)

Sun Microsystemsにより開発が行われ、OpenSolaris Projectを通じて「CDDL 1.0(Common Development and Distribution License 1.0)」の下にソースコードが公開されている128bitファイルシステム。「UFS(Unix File System)」後継の次世代ファイルシステムとして位置付けられ、Sun Microsystemsによる「OpenSolaris」「Solaris 10」等における採用実績を有する。本文中にて採り上げた機能の他にも「RAID 6」(「RAID 5」の拡張版)に相当する拡張されたデータ保護機能をストレージユーザに提供する「Double Parity RAIDZ」、ホットスペア(ホットスタンバイ)によるコンピュータシステムの多重化を実現可能とする「Hot Spares for ZFS Storage Pool Devices」等といったフォールトトレラントのコンセプトに追従した耐障害性、及びデータ保護を司る諸機能等が実装されている


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Created Date:07/09/03
Modified Date: