青い目の人形


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青い目の人形

作詞 野口雨情
作曲 本居長世
   青い目をした お人形は
   アメリカ生まれの セルロイド

   日本の港へ ついたとき
   いっぱい涙を うかべてた

   「わたしは言葉が わからない
   迷い子になったら なんとしょう」

   やさしい日本の 嬢ちゃんよ
   仲よく遊んで やっとくれ
   仲よく遊んで やっとくれ
1922年(大正11年)


「青い目をしたお人形は、アメリカ生まれのセルロイド・・」ではじまる童謡「青い目の人形」 は1921年(大正10年)野口雨情が雑誌「金の船」に発表し、これに 本居長世が1922年(大正11年)に曲をつけた歌で、現在でも多くの人に親しまれ、口ずさまれている歌の一つであるが、 アメリカから贈られた「青い目の人形」とは関係はない。 「青い目の人形」が贈られるのが昭和2年。そして、 この歌はその5年前に作られているのである。
「青い目の人形」は、昭和に入ってから、 あわただしく決定して贈られてきたもので、 この歌が作られた頃には、アメリカから贈られるなどという話は まだまったくなかった。

 さて、「赤い靴」と対照的に作られたこの「青い目の人形」は、日本から外国への移民が盛んだった頃の、大正10年に発表されている。外国との交通と言えばもちろん「船」であり、歌詞にも「港」が出てきて、雰囲気を盛り立てている。
外国に連れ去られていく「赤い靴をはいた少女」と外国から来る「青い目をしたセルロイド人形」の身の回りを比較してみると、今では味わえないような当時の時代や「未知のもの」に出会う不安やとまどいなどが感じられる。
 「青い目の人形」の由来や経過をひもといてみると、当時の世界的な経済状況や日本と外国との関係、そして戦争に至るまでの歴史、人々の気持ちを知ることができる。(http://www.fuji.ne.jp/~yasuonod/tkdhsongs/aoime.html)

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本居長世(もとおり・ながよ 明治18年(1885年)4月4日生・昭和20年(1945年)10月14日没)の略歴

   江戸時代の国学者 本居宣長の6代目の子孫で、童謡を初めて作曲したといわれる人物。野口雨情、西條八十、北原白秋ら作詞家とのコンビで「赤い靴」「七つの子」「青い眼の人形」などの名作を残した。
 1885(明治18)年、東京の下谷区御徒町に生まれる。小さい頃から祖父と二人きりの生活を送る(この寂寥感が長世の作風をずっと支配したと指摘されている)。
 1908年、東京音楽学校を全学部筆頭の成績で卒業し、その後、同校の器楽部助教授に職に就いた。同期生には山田耕筰がいる。  1920(大正9)年 に新日本音楽大演奏会で発表した「十五夜お月さん」が大きな反響を呼び、人気童謡作家として知られるようになる。翌21年、「とんぼ社」(都築益世らが主宰)に中山晋平、弘田龍太郎とともに顧問に加わる。同じく西條が創刊した『かなりや』にも野口雨情や山田耕筰らと作品を提供した。
 当時の作品には「お山の大将」「七つの子」「でんでん虫」「青い目の人形」 「赤い靴」 などがある。
 娘たちをボーカリストとして積極的に全国を巡演し、童謡を広めたことでも知られ、敗戦直後に肺炎で亡くなるまで、 オペラ、合唱曲をふくめ約780の作品を残した。(http://www.d-score.com/ar/A02020406.htmlによる。なお、詳しい年譜については、 次のサイトを参照されたい。http://www.inetmie.or.jp/~nagayo/nenpu.html)

【蛇足】
昭和2年に日米の子供達の友好を願ってアメリカから日本へ 向けて12,739体の青い目の人形が小学校、幼稚園におくられた。
この青い目の人形は当時の子供達の宝物としてかわいがられた。 そして答礼の使者人形として「大和日出子」という人形を日本からアメリカに贈った。
しかし時代の変化とともに日米開戦!(昭和16年12月8日) 「憎い敵、アメリカのスパイ」とされ処分を命じられたそうだ。 今ではおじいちゃん、おばあちゃんになっている当時の子供達は、そのときのことを思い出すと ”胸がつまる!”と当時のことを言っている。 罪のない人形をスパイとし、子供自体も人形処分の執行人に 仕立てられ、それを勇んでやらねばならなかった時代・・・戦争は何とも恐ろしいものと言わざるを得ない。
青い目の人形はすべて処分されたはずだが、実は少数の心ある人々によって 密かに保護され、戸棚や物置のすみに隠され残っている。 (http://www.dokidoki.ne.jp/home2/furusato/sousei/ningyou.htmによる)