6CW5 circlotron トラブル経過





 このページは、当初のバラックセットの試作機として組んだサークルトロンアンプの試作レポートに、

本製作のセットで生じたトラブル等を合わせて備忘録として載せたものなので、文脈にまとまりがないの

ですが何卒ご了承ください。


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 以下は試作機のレポートの後半でトラブルについて紹介していた文です。


 通常のPPアンプならこれで完成なのですが、サークルトロンアンプでは少々問題を残してしまいまし

た。それは負帰還を掛けないと通常以上のハムノイズが出るのです。これは回路が動き出して負帰還が効

き出すと聴こえなくなるのですが、球がヒートアップするまでの10数秒くらいはスピーカーから不快な

ジーノイズが出てしまうのです。

 この解決法として簡単確実なのは出力にミュート回路を入れる事ですが、これでは対処療法で根本解決

ではありません。それに負帰還を掛けなければ使えないというのも気になるところです。原因は上下の電

源巻線の容量結合のようなのでステレオで組んだ場合にはクロストークも悪くなるようです。

 なお、以前からサークルトロンアンプを発表されている「かつ」さんの作例では、電源トランスは市販

の絶縁トランスを上下左右と別々に四つ使っているので何の問題も起きなかったようです。


 原因と対策の途中経過

 このセットでのノイズレベルはヒートアップ前で2.7mVもありましたが、回路が動き出すと負帰還

の働きによりノイズは減少します。しかし、これも対処療法で根本解決ではありません。電源トランスは

回路図のようにB電源巻線が2つあるのですが、この巻線間の容量を測ってみたところ、4つある端子の

どの組み合わせでも1000PF前後ありました。ヒートアップ前ですから真空管は関係無く、電源トラ

ンスとOPTとの組み合わせに1000PFのコンデンサーが組み合わさった回路なので、それだけを抜

き出すと以下ののような回路(図a)となるのですが、めのさんのシミュレーションでも巻線間に容量が

あると、やはりノイズが出るという結果になるようです。


 そこでB巻線の一方を別の絶縁トランス(AC100V巻線)に切り換えてノイズ量を測って見ると、

ストンと落ちて0.4mVとなりました。(図b)ちなみにその一方を別トランスから外しても(電源巻

線に接続するのは片方だけ)やはり0.4mVで、(図c)この結果を見ると、とにかく上下の電源巻線

の間に大きな容量が発生しないようにすればノイズも少ないようです。




 この時使った絶縁トランスは野口のPM 50WSで、具合の良い事に100V巻線が2つに分かれて

いるので(本当はこちら側が1次巻線で、100V地域でも220V地域でも対応できるようになってい

るようです。)B電源を両方ともこの絶縁トランスに接続したところ(図d)ノイズは0.3mVとなり

ました。このトランスは別シャーシに取り付けているので、上記の0.4mVの中には、どうやら誘導ノ

イズも含まれていたようです。一方、このトランスの両巻線間の容量は、多い組み合せでも約220PF

だったので、試しに820PFの容量を追加して見たところ(図e)やはりノイズが増えて約2.8mV

となりました。ちなみに巻線電圧が半分になると巻線間の容量は1/4になるのでしょうか? あるいは

設計の違いなのか(1次側に巻いてあるので)よく分かりませんが、とにかく巻線の電圧を下げれば巻線

間の容量が減る事だけは確かなようです。



 さらに、この容量と発生するノイズ量とは相関関係がある事も間違いないようです。両巻線間に追加す

る容量を変えてみた時のノイズ量は以下のようになりました。

追加した容量 820 PF330 PF220 PF100 PF追加なし
合計容量 1040 PF550 PF440 PF320 PF220 PF
ノイズ量 2.8mV1.4mV0.8mV0.5mV0.3mV


 私の試聴環境では残留ノイズが1mV以内であればさほど気にならないので、両巻線間の容量が500

PF以内になるようなトランスが望まれますが、100V巻線なら巻き数が少なくなるので容量も少なく

なる筈で、これを倍圧整流にすればと思うのですが、はたして上手く行きますでしょうか?



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 次のグラフは本製作で組んだ前章のアンプの電源トランスを、各B巻線間にシールドの入ったトラ

ンスに換装して特性を採ったものです。これでクロストークと共にジーノイズも解消する筈だったのです

が、どういう訳かノイズに関しては改善が見られませんでした。



 上記のグラフの「S浮遊」とか「S接地」とかいうのは、電源トランスのB巻線間にいれたシールドを

アースに落とすかどうかという事で、クロストーク対策としては、特に高域でシールドの効果が大きい事

を示しています。サークルトロンアンプでは、フローティング電源の電源巻線間に発生する容量によって

左右のクロストークが悪化するので、本機では各B巻線間にシールドを入れるという、かなり特殊な対処

法を施しています。

 一方、電源トランスのシールドはアースに落とす事が基本なのに、何でわざわざこんなグラフを描いた

のかというと、このシールドにはクロストーク対策と同時に、既に述べたようにノイズ対策の効果も期待

されたのですが、ノイズの方は接地しても減らなかったので、クロストーク特性でのシールド接地の効果

を見る事で、シールドが機能しているのか確認したかったからです。



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 本製作の最終段階で左右のクロストークが揃わなかった原因は・・・


  このアンプのクロストーク特性を測ってみ

 ると、当初は「R→L」の特性が大きく劣る

 のでした。そこで鉄の板をあちこちの信号ラ

 インの間に差し込んでみたところ、入力端子

 のところで影響している事が分かりました。

 ただ、ここには電源の平滑コンデンサーがあ

 るだけですが、サークルトロンではB電源が

 フローティングになっている為に、ここから

 出力信号が盛大に混入しているのでした。

 サークルトロンはSEPPの仲間でもあるので、出力の信号ループは電源を通ります。その為に出力管

の近くに信号ループ用のコンデンサーを配置したのですが、位置的に入力端子にも近い場所になっていた

事が間違いの元でした。しかし今さら変更できないので、入力端子との間にブリキ板を立ててシールドと

したところ、左右とも揃ったクロストーク特性を得ることが出来ました。CSPP回路では通常のPP方

式での経験測がむしろ邪魔になる事も多々あるようです。(DEPPやSEPPならなら電源の平滑コン

は低インピーダンスで接地と見なせますから、ブツブツ・・・)







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