「雪風」のごとく

(前頁より)



4年生といえば、日本では四ツ谷進学とか浜学園とか大小各種の学習
塾に通わせるという。しかし、今の一郎君にとってはブルックランド小学
校の生活に慣れることがすべてである。

英語に慣れるだけではない。この公立小学校では高学年にフランス語
の授業もあるという。こちらはお手上げだ。
学校に通っては行くが、毎日がチンプンカンプンである。学校から帰る
とホッとして、テレビのスイッチを入れても英語である。

子供たちのフラストレーション解消策の一つは、毎週土曜日の午前中
だけ開かれる日本語補習校で、ロンドン各地の現地校で悪戦苦闘して
いる同級生たちと会って、日本語で話をすることであった。そしてまた、
夫人も子供も、ドライビングとショッピングで生活に変化をつけていた。
(注、今は全日制の日本人学校がある)

余談であるが、英国は教育も完全週休二日制である。(25年以上前な
のに!)
当然学校も土曜日は休みである。教師も土曜日に家事をし、日曜日に
は庭のバラなど手入れして、安息日らしく過ごす。人間教育をする教師
に必要なのは、まず第一に人間らしい生活のはずである。



その土曜休みの教室を借りて週一度の日本語の補習授業が行われる。
補習は僅かな時間であるが、日に日に英語に慣れて日本語を忘れて
行く子供たちに、帰国の時に備えて日本語能力を維持するために必要
である。

授業が終わってリラックスした子供たちを乗せて、憶良氏のトライアンフ
は一路家路へ向かう。
「帰りに玩具でも買ってあげようか」
「ワーイ」
まだ日本からの船便が着いていなかったので、やや退屈気味だった子
供たちが、歓声をあげる


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