車庫建て替えていいですか

(前頁より)



「帰国したとき、藤沢の家の回りはどうなっているでしょうか。ご近所の
皆さん良い方ばかりだから、建て売り住宅が建つことはないと思いま
すが」

「まあ大丈夫だろうが、ゴッド・ノウズ、神のみぞ知る。誰にも分からな
いのが日本だ。藤沢市役所から『お隣が棟割り長屋になりますが異議
ありませんか』などといってくることはまずないからね」



「この国の行政は立派ですねー、百年以上も前からこの住宅地の景観
に変わりがないなんて。そしてまた今後もアボッツ・ガーデンはこのまま
変わらないのでしょ。栗鼠の住んでるお庭の木もね、とても信じられな
いわ」
美絵夫人がしきりに感心する。

「日本でもだんだんヨーロッパに目が向けられるだろうが、こと住宅問題
は絶望的だなあ。住宅地の景観保護までに国民の関心が高まるまでに
は、まだまだ歴史の時間が相当かかりそうだよ。なにしろまだ資産の蓄
積が浅いからね」

「そうね、生活にゆとりがなくっては、景色だけではお腹はふくれません
からね」


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