車庫建て替えていいですか

(前頁より)



しばらくたった土曜日の3時過ぎ、日本語補修校から子供を連れて帰る
と、折よくアッシュモア不動産から「ケニアの家主は了承した」との連絡が
あった。
美絵夫人がフォートナム・メイソンで買って来た新しい紅茶を入れて来た。

「クロッカスの花があちこちのお庭に咲いて、とってもきれいですね」
「そうそう。この国の住宅街が整然として残っている背景が分かったよ。
日本だと、ある日突然お隣が整地され、安っぽいアパートが建ったり、建
て売り住宅になって、折角永年かけて出来上がっていた雰囲気や景観
が、アッという間に壊れてしまう事例が多い。こちらでは車庫の建て替え
だけでも、隣家の納得が要るのだから、景観は壊れにくいよね」

「隣人に異議があったら建て替え出来ないのでしょうか」
「その時は行政が判断するんだろう。この国は選挙がきれいだから、議
員と行政が癒着して圧力がかかったり、私権つまり個人の権利が特別
強く保護されることもなさそうだ。すべて常識が慣習法になっていってい
る国だからね。ゴネ得とかゴリ押しという言葉や行動は見かけないんじな
いの」


 お隣りのバッキーさんの車庫が、木造のガレージから洒落たレンガ造
りにと、きれいになった。前庭の広さも後ろ庭の広さも変わりない。家並
みに変わりはないが景観は少し良いほうに変化した。
しかし特別変わった訳ではなく、すぐにふだんの景色に馴染んだ。




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