ロンドン憶良見聞録

車庫建て替えていいですか



3月の決算事務も無事終了し、パブで部下と一杯引っかけ、いい気分
で帰宅した憶良氏は、背広を脱いでカジュアルなセーターに着替えた。
「あなた、バロー・オブ・バーネット(区役所)から手紙が来ているわよ」
「いったい何だろう」

官庁からの手紙などは、いい話よりもどちらかと言えばノーサンキュー
の通知が多いものだ。例えば「外国人登録を忘れていませんか」とか
「この前の交通違反の罰金を払いなさい」というような類いである。

今回は一体何だろう、折角の酔いも醒めるではないか、と訝りながら
憶良氏は開封した。

「ホーッ、お隣りのバッキーさんが車庫を建て替えるらしいよ」
「どうしてバーネット区役所から知らせて来たんでしょうか」
「この文面で見ると、バッキーさんから『車庫を建て替えたい』との申請
書が区役所に出たが、隣人としてこの建て替えに異議はありませんか、
との照会だよ」

「ご自分の車庫の建て替えに隣りの了解がいるのですか」
「この国ではそうらしいな。『貴方がテナント(入居者)の場合にはランド
ロード(家主)に確認するように』と書いてある」
「ではアッシュモア不動産に転送しないといけませんね」




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