晴耕庵の談話室

NO.64



標題:「700年かけたスコッツ「自治」の願い」へのコメント(1)

COMMENT

2001/6/7

ロンドン憶良様

お久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか。

今イギリスは総選挙のまっただ中です。
口蹄疫の影響で投票が延期され、その分キャンペーン期間が長くな
ったことに加えて労働党楽勝との予想で、自治をかけた前回の総選
挙とは打って変わった白けムードが漂っていますが、スコットランドで
はやはりイングランドとは選挙戦の内容に微妙な差があったような気
がします。スコットランドの第2党が保守党ではなくスコットランド民族
党(SNP)であることから、現在の自治形態を維持したい労働党と自治
拡大を訴えるSNPの戦いという図式になっていること、保守党の「ポン
ドを守れ」キャンペーンが、輸出産業の比率が大きい(そのためポンド
高のあおりをもろに食っている)スコットランドでは空振りしたことなどが
の原因でしょうか。

さて、今回メールを差し上げたのは、「700年かけたスコッツ「自治」の
願い」の内容について少しコメントさせていただきたいと思ったのです。
しばらく前に書かれたページのようで、
かなりタイミングがずれていますがご了承ください。


コメント@========================
スコットランドはロバート・ブルースによって、いったんは王国としての
主権を取り戻しましたが、1703年(290年前)議会は統一され、
連合王国(UNITED KINGDOM)となりました。
============================

議会統一の前に忘れてはならないのが、1603年のイングランド・スコット
ランド両国の王位統一(Union of the Crowns)です。イングランド女王エリ
ザベス一世は終生結婚しなかったため、エリザベス1世の叔母の曾孫に
あたるスコットランド王ジェームズ6世がイングランド王位を継承し、イング
ランド王ジェームズ1世として戴冠しました。状況が違ったら「スコットラン
ドがイングランドを属国化」といった事態もあり得たわけです。もちろん国
力の違いがあまりにも歴然としているためそういう結果にはならず、両国
はその後100年あまり君主を同じくする独立国として別々の議会を維持し
ましたが、王朝統一は当然ながら両国の関係を徐々に強める結果になり
ました。両国はもろともに清教徒革命・名誉革命という動乱の時期(アイル
ランド問題の種がまかれたのはこの時期)を経ることになり、またスコットラ
ンドの経済がイングランドの貿易締め出し政策で悪化していったこともあ
って、スコットランド側でも「経済的な利益を享受するためにイングランドと
の連合を受け入れよう」という意見がだんだん強まり、議会の統一となった
のです。なお、議会統一は1707年です。

なお、当時の議会はもちろん貴族だけで構成されており、国王の朝廷が
ロンドンにあることもあってわりと親イングランド的だったはずですが、それ
でも両国の連合・議会の統一には非常な抵抗があり、大規模な贈賄によ
る議員買収でようやく統一賛成の票を確保することができたと記録されて
います。この決議は国民には非常に不人気で、議決直後には暴動が心
配され、賛成票を投じた貴族達は暴徒を恐れて隠れなければならなかっ
たとか。

それから300年近く経った1999年、スコットランド自治議会の開会式で、議
員中最年長ということで仮議長をつとめたSNP議員は、「1707年に休会さ
れたスコットランド議会をここに再開する(I declare the Scottish Parliament,
adjourned in1707, reconvened.)」という開会の辞とともに議会をスタートし
ました。

                                  YH(in Scotland)


THANKS FOR YOUR COMMENT

2001.6.29

YH様

先日はご指摘ありがとうございました。
遅くなりましたが、「スコッツ『自治』の願い」は修正をいれましたので
ご覧下さい。

                               ロンドン憶良




CORRECTION

ご来訪者の皆様へ

   当初アップの原稿は、「1703年議会は統一され・・」となってい
   たので、「1707年」と年代のミスを指摘されたものです。
   同時に、1603年の同君連合も重要な出来事ではないかとのYH様
   の指摘でした。
   同君連合についてはガイ・フォークスの火薬陰謀事件とその背景
   を参考にしてください。

   この機会に、他の掲載個所についても読者諸氏のお気づきの点
   はお知らせ下さい。
   学生の方々がゼミやレポートに、当HPを引用されるようですので、
   できるだけ正確を期したいと努めています。

                               ロンドン憶良



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