ロンドン憶良見聞録

パリの空の下チョコレートが流れ



これから独り旅をされるビジネスマンや観光旅行者は、御出発前に
憶良氏の失敗談をご一読ください。


「ちょっと家まで引き返してくれ。忘れ物をしたから」
憶良氏は、ロンドン・ヒースロー空港へと向かうために家を出て、数分
もしないうちに運転手に車を引っ返させた。
「アラッ、どうされましたの? 何か忘れ物?」
「そうなんだ。お守りのお経を忘れた」
憶良氏は、シティに勤める近代的バンカーにしては、妙に古風で信心
深いところがあった。出張の時には、「掌典般若心経」を、いつも洋服
の内ポケットにしのばせることにしていた。

「そのほかの物は大丈夫?」
「パスポート、航空券、お金それにこのお経があれば大丈夫さ。じゃ
行ってくるよ」
「気を付けてね。たまには私にもパリのファッションを買って来てね」
「バッカバカシイ。仕事だぞ仕事。買い物の暇も金もあるもんか」




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