ロンドン憶良見聞録

落ち葉は焚かないで



ロンドンの中流住宅街と日本のそれと比較して、絶望的に悲しくなるのは、
一戸あたりの敷地の広さと、整然とした景観である。
最近では日本の宅地開発でも随分景観保護に気を配って来ているが、ま
だまだ英国の水準には追いつかない。

きれいな町並みといってもGNPのように数字として反映されるわけではな
いから、具体的に認識することは難しいが、庶民の住みやすさを何かの指
標にして国際比較をすることはできないものかと思う。
そうすると「日本は必ずしも大国ではない」ことが歴然としよう。

ところで憶良氏が家を借りたアボッツ・ガーデンは、ロンドン北部の郊外に
あるハムステッドの丘を越えた一帯、通称ハムステッド・ガーデン・サバー
ブと呼ばれている地域にあった。
 
今日は、日本から出張して来た竹馬の友、足村の達ちゃんを、ロンドン市
内のホテルからピック・アップし、憶良氏愛用のトライアンフ2000に乗って
いただいて、自宅まで案内することとなった。

北へ20分ほど走ると、「スイス・コテージ」(スイスの小屋)という有名なパブ
のある辺りに来る。夜になるとジョッキを片手に若者たちが道路際まで溢
れる人気のパブである。

坂道を更に登ると、丘の頂上に着く。ここにもまた有名な白亜のパブ・レス
トランの「ジャック・ストロー・カースル」(ジャック・ストローの城)がある。
1381年、重税に反対し、イングランド南部で暴動を起こした煉瓦工ワット・
タイラーに呼応し、北では農民一揆を率いたジャック・ストローが、ロンドン
へ向かうため、このハムステッドの丘に布陣したという。

ディッケンズがよく通ったというこのパブの二階から眺める丘の景色は絶品
である。




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