第3部 薊(あざみ)の国

第10章 ダンカン、マクベス、マルコムの血戦(1)

前頁より





 つづくエルギン郊外バーグヘッドでの陸戦で、マクベス将軍はソー
フィン伯と打ち合わせ通り、殆ど戦わなかった。ソーフィン伯は主力を
ダンカン王に当てたので、王の手勢は壊滅的な打撃を受けた。

 バーグヘッドから逃走するダンカン王を、マクベスはエルギン郊外ス
パイニーで捕らえ、鍛冶屋の小屋で殺害した。
 1040年8月14日のことであった。



 余談ながら、しかし大事なことであるが、マクベス将軍がダンカン王
をインヴァネス北東のコーダー城で殺害したと書いたのは、シェークス
ピアの創作による虚構である。コーダー城が築城されたのはダンカン
王の死から400年後である。

 ダンカン王39歳、マクベス将軍35歳。ダンカン王は在位僅か6年
で世を去った。多くの重臣や国民はマクベスをとがめなかった。

 ただ、ダンカンの父、アサルの大領主でダンケルド大修道院の院長
でもあったクリナンのみは、心の中でマクベスに報復を誓った。

 父王を謀殺されたマルコムと弟のドナルドベーンは孤児となり、祖
父クリナンの許に逃げた。マルコムはそのとき9歳の少年であった。
しかし、スコットランドでは孫の命は危ないと考えたクリナン修道院長
は、マルコムの母シビルの兄になるノーザンブリアの領主シワード候
の下に少年マルコムを送り届けた。



第10章 ダンカン、マクベス、マルコムの血戦(2)


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