神よ、助けたまえ
(前頁より)



少し銀行のことを説明しておこう。

インターバンク取引をする時には、例えば「XYZ銀行は清泉銀行に5億
ドルのユーロダラー預金を預けます」というような取り決めをする。これを
クレジット・ライン(与信枠)という。

この5億ドルまでは預金を預けてくれるので、一方で5億ドルの貸金が
できるのである。
ユーロ預金は通常6ヶ月とか3ヶ月のような短期で取引されることが多い。
この短期というのが曲者である。

読者諸氏は「5億ドルの預金を3億ドルに減らされるのであれば、貸金も
3億ドルまで減らせばいいではないか」と思われるだろう。

ところがドッコイ、シンジケート・ローン(国際協調融資)では、貸す方の
清泉銀行などの邦銀各行は、多額の資金を必要とするブラジルとかメキ
シコとか東欧諸国相手に、5年とか7年とかの長期で融資しているのが
通例である。
外国銀行はユーロ金融で飯を食っている。なかでも、短期のユーロ預金
を原資として取り入れ、長期のユーロ貸金を競う芸当をしているのが日本
の銀行である。

あちこちの外国銀行が、期限の来た預金を継続してくれずに、引き出す
状態になると、清泉銀行ロンドン支店に巨額の資金ショートが起こること
から、ディーラーが青くなって悲鳴をあげたのである。




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