“断絶への航海” ジェームズ・P・ホーガン
(ハヤカワSF)
近未来、地球は戦乱の世と化し、第三次世界大戦が勃発し終焉するも、
復興した国々はまた互いに争おうとしていた。
そこに大戦前に打ち上げられた宇宙開拓船「クヮン・イン」 (観音だそうな)
から、アルファ・ケンタウリ系に植民に適した惑星「ケイロン」を見つけ、
植民を開始したとの知らせが入った。
それを受け、大規模な移民船がケイロンヘ向かうが、
船からの通信に対するケイロン側からの受け答えは何か勝手が違う。
地球の流儀とケイロンの流儀が出会うとき、いったい何が起こるのか?
“インフィニティ・リミテッド”
へ至る道はこの辺からあったのか^^;、という感じでした。
最後はお約束のドンパチです (ホーガンって結構このパターン多いぞ)。
お約束といえば、もう一つ、気合いの入った空想物理理論ですが、
やっぱりいいですねー。
これでこそホーガン。
原題“Voyage from Yesteryear” を“断絶への航海”
と訳したのはなかなか見事ではありますが、ちょっと意味を掴みづらかったです。
(6/9)
“ゴールド −黄金−” アイザック・アシモフ
(早川書房)
アシモフが亡くなる直前に書いた短篇小説の数々
(“ファウンデーションの誕生”
が遺稿かと思っていましたが、あちらは「最後の長編」のようです) と、
雑誌やアンソロジーの巻頭言として書かれたエッセイからなる作品集です。
短篇にはショートショートもあります。
そうそう、おまけ(?)として
“アザゼル”
シリーズの話も一篇、読めます(^_^)。
いずれもアシモフらしく面白いのですが、
この本の中で光輝いているのは何といっても、
“キャル” と表題作“ゴールド −黄金−” でしょう。
この二作品とあともう一つの作品では、
アシモフが作家としての自分の分身を作中に登場させています。
“キャル” は作家になりたいロボットの話です。
というと“聖者の行進” 所収の“バイセンテニアル・マン”
を思い浮かべますが、ちょっと違います。
“ゴールド −黄金−” は、一見、映像化不可能に見える SF 作品
(この作品、個人的には大好きなのですが、
周りにそれに同調してくれる人がいない…) を、
コンピュータを駆使した映像ドラマ (コンピュ・ドラマ)
で映像化を実現させようとする話で、
アシモフ本人の夢が語られている感じがします。
これはまさに黄金なる夢、こんなコンピュ・ドラマができたらそれは
アシモフにとっても、SF ファンにとっても、いやきっと人類にとっても
黄金なる遺産と言えそうです。
エッセイにはアシモフの他の作品が登場しますし、
短篇でも、他の作品を知っているとより楽しめるものもあります。
できれば、アシモフの作品を幾つか読んでから読んだほうがよいでしょう。
アシモフの作品をたっぷり読んできた人は、当然、これも読むべきです。
(4/23)
“魔法の猫” ジャック・ダン & ガードナー・ドゾワ 編
(扶桑社ミステリー)
“猫” が中心を占める話を集めたアンソロジー。
SF、ファンタジー、ホラー (スティーヴン・キング作も!) など
17 篇が収録されています。
恐い猫、頑張る猫、可哀想な猫などが登場します。
僕は別に猫好きでも何でもないですが、やはり犬ではこうはいかないだろうなぁ、
という気はします。
「“猫” という文字を見るのも嫌」という人でなければお勧めできそうです。
SF は、有名なコードウェイナー・スミスの“鼠と竜のゲーム”
をはじめとした 4篇ほど(ル・グィンのはカウントしようかどうしようか)。
シルヴァーバーグ&ギャレットの SF ミステリ“ささやかな知恵”
もなかなか面白いです。
(でもこの短篇の原題の“A Little Intelligence” って“ささやかな知恵”
と訳すとちょっと違うよなぁ^^;)
SF というよりファンタジーの作品ですがフリッツ・ライバーの
“跳躍者の時空” も凄いです。
(4/15)
“ナイトサイド・シティ” ローレンス・ワット=エヴァンズ
(ハヤカワSF)
惑星エピメテウスは発見当初、潮汐平衡で自転が止まっていると思われていた。
そして、人々は放射線の降り注ぐ昼側を避け、夜側に街「ナイトサイド・シティ」
を作った。
だが、エピメテウスはまだごく僅かずつ自転していた。
「ナイトサイド・シティ」はやがて日の出を迎えるのだ。
夜が明けてしまえばもう街では暮らせないし、もはや街に何の価値もない。
街の人々は皆それを知っている。
それなのに、街で最初に陽を浴びるスラム街の土地を買い占めている奴がいる。
いったい誰が何のために?
立ち退かされようとしているスラム街の住民から依頼を受けた探偵、
カーライル・シンが調べていくうちに判明したのは…。
SF ハードボイルドです。
僕は普通のハードボイルドは読んだことはないので、
ハードボイルドとしての出来がどうなのかはよく判りませんが、
SF としては充分なできでしょう。
充分に楽しめました。
サイバーパンクっぽいガジェットが出てきながらも、
ほとんどそっち方面には走らないところもよいです。
(2/19)