レリック-遺物-
ナタリー・エリカ・ジェームズ監督/2020年作品
ナタリー・エリカ・ジェームズ監督「レリック-遺物-」を観た。全編通してめちゃめちゃ不穏な映画ではあるが、いわゆる一般的に"ホラー"と言われる部類には属さない。

とにかく家の中が暗い。ちゃんと電気つけろよ!と言いたくなるほど暗い。加えてめっちゃ静かなので、暗闇と静寂に包まれた画面がとーっても不気味だ。

そして、古くて行き届かない家の汚れ具合…。この映画の不穏さは、ほぼこれらの要素に尽きる。人っ子ひとりいない田舎の古い一戸建てにひとり閉じ込められるような世界だ。 でも、この暗くて静かで汚れた家の中におばあさんはずっと独りでいたのか!! ってことに思い当たれば、我々観客が味わっているこの恐怖は、おばあさんがずっと感じていたものなんだ…と気がつく。

歳をとり、家を離れた娘も仕事の忙しさにかまけて会いに来てくれず、おじいさんも亡くなって古い家で独り暮らす老婆。その上認知症になり、何もかもを忘れていく。だから、忘れてはいけないことをメモにして家中に貼りまくって注意しながら暮らしている。「蛇口はしめなさい」とか、そんなことまでメモに書いて…

アンソニー・ホプキンスが主演した映画「ファーザー」と同じ認知症というテーマを全く違う角度から描く。 "人は誰もが等しく歳を取り、身体は老化し、やがては遺物となっていく…"

「子供は家を巣立つものだが、育ててくれた親のことを忘れてはいけないよ」ってメッセージが込められた映画でした。

【以下、ちょっとネタバレ】
後半、ウィンチェスターハウスのように家の中が迷路みたくなってしまうのは、この"お化け映画"じゃない設定の中でどういうことかな? って思ったのですが、これ、おばあさん自身と家が同化していると解釈すれば、認知症で家の構造すらわからなくなってしまうとか、自分の肌に出来るのと同じように壁にも黒い染みが出来るとか、そんな風に解釈できそうな気がしました。正解はわかんないけど!
僕のお気に入り度
これは繰り返し見なくていいかな…



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