エデン、その後
アラン・ロブ=グリエ監督/1971年作品
 時系列に起承転結の物語を描くことを拒否する監督の今回のチャレンジは、初のカラー作品で、テーマは即興演劇!? 

 「不滅の女」では舞台から演技から何もかもを徹底的に設計してから撮影していた監督が、本作では脚本を全く準備しないまま撮影に臨んだというから変われば変わるものだ。

  舞台は、パリの大学生たちが集う、(モンドリアンの絵画風デザインの)モダンなカフェ「エデン」。ここで、彼らは暴力やドラッグや殺人や葬儀など過激なまでの"状況"を日々演じている。何故なら、"実際の世の中では何も起きないから"なのだそうだ。

 この、つぎはぎのような即興劇の(不連続な)連続が映画の前半。 中盤でカフェに現れたアフリカ帰りの男に「恐怖の粉」を吸わされた主人公ヴィオレットが恐ろしい幻覚を見たりしていくうちに映画は後半に移り、前半とはガラリと舞台を変えて、チュジニア南部のジェルバ島の真っ白な建物と真っ青な空を背景に主人公の叔父が残した小さな絵画(その舞台と同じく青い空の下に白い建造物がある絵)の命を懸けた争奪戦となる。

 どこからどこまでが幻覚なのか、はたまた夢なのか、現実なのか。監督の意図通り、相変わらず物語性は拒否されているが、個々の場面の印象や色味の強さは"動く絵画"のようで美しい。内容はよくわかんないけど、その美しさだけで98分見れてしまう不思議な作品です。

 なお、本作は脚本を用意せず撮影し、後から1本の映画に編集したというだけあって、撮影した映像を再構築した「Nは骰子を振った……」という別バージョンもあって、こちらはブルーレイ版に特典として収録されています。
僕のお気に入り度
DVDで持っておいて、たまに監督特集しながら見たくなる映画です。



(C) Tadashi_Takezaki 2020