小人の饗宴
‪ヴェルナー・ヘルツォーク監督/1970年作品
 「忘れ得ぬ映画」といえば、フツーはとっても感動した映画とか良い映画ってのが出てくるのだが、全然違った意味で絶対に忘れられない映画っていうのもある。

 僕にとっては「小人の饗宴」という映画がそれで、10年以上前に京都大学のオンボロのナントカ講堂ってところで”自主上映”って形で一度だけ観た映画だ。 その”自主上映”のオールナイトでは、ケネス・アンガーの諸作品などなど、奇妙な映画ばかりが何本も上映された自分の人生の中でも相当不思議な夜だったが、中でも強烈だったのがこの「小人の饗宴」だったのだ。

 その”強烈さ”は、「かつてこんなに胸が悪くなる狂騒とした映画があっただろうか!?」っていう意味での強烈さ。うまく表現できないが、椅子にしばりつけられて黒板を爪でひっかく「キィイイィーーーッ」って音をいやおうなく延々と聞かされるような”不快さ”なのであった。

 しかし、あまりに強烈すぎた印象は忘れがたいもので、その後、2、3年経ってから僕はこの映画について調べはじめ、監督がヴェルナー・ヘルツォークって人であることや、この映画のビデオ・LDなどが一切出ていないこと、そして日本でも滅多に上映の機会には恵まれない作品であることを知り、いつか必ずこの映画に再び巡り会いたいと望むようになった。

 そして、ついにこの映画が今月、日本の劇場で”自主上映”ではなく、ちゃんと公開されることになったのである。(かつて日本では手に入らなかった「時計じかけのオレンジ」のビデオをアメリカのレコードショップで発見した時のような感動!) そんなわけで今日は、「小人の饗宴」をスクリーンで観てきた。 そこには”常識では計り知れない何か”があった。
僕のお気に入り度
こんなにイヤな映画なのに、また見たくなってしまう奇妙な魅力。



(C) Tadashi_Takezaki 2002