link to Kimura's HP



特定健診物語⑤


東都電気販売常務の決断

翌日、東都電気販売の社長室で社長のデギン・ザビと福利厚生担当常務のギレン・ザビが話していた。

デギン・ザビ「ランバ・ラル君はお前があまりに独裁的で、しかも国の方針を無視しすぎると私に直訴してきたよ。」

ギレン・ザビ「ランバ・ラルは東都電気本社で45%を達成した事を誇りに思っているようですが、その後、本社はどうなったか知っていますか?

保健指導を受けなければならない社員の家族が多数見つかったものの、社員寮のある都筑ふれあいの丘区には保健指導を行う施設がなく、結局ア・バオア区まで出向いているそうです。

しかも20分の保健指導を受けた後は駅前のクリスタル ジェイドで食べ放題の小龍包を食べているのだそうです。」

デギン・ザビ「厚労省の計画に無理があることは私も理解している。しかし、2年連続45%を達成できないと、うちは厚労省から目を付けられるんじゃないか?」

ギレン・ザビ「父上は、後期高齢者支援金の加算という罰則が本当に可能だと思われますか?糖尿病を10%減らすなど、厚労省の役人だって信じてはいませんよ。

あれは、自分の健康管理は自分で責任を持て、歳をとって病気になるのは努力しなかったせいだ、と国民に教え込むためのものですよ。

後期高齢者保険は数年で破綻し、お金を持っていない年寄りが透析など高額な医療を受けられなくなることはすでに明らか。その時、国が批判されないよう、自己責任を教え込んでいるのですよ。病気になったのは、努力が足りなかったから、とね。」

デギン・ザビ「もしそうだとしても、厚労省が掲げた目標を達成しようと努力しないのは、東都電気本社が困るのだ。

うちはもうザビ商会ではない。株式の51%を東都電気が保有する東都電気販売なのだ。今本社の医療機器事業部が開発中の新型診断装置の認可をめぐり、厚労省を刺激したくない本社の立場も考えてやらないと。」

ギレン・ザビ「再来年ぐらいには、すべての医師会と契約しますよ。でも紙データを電子化しようなどというおろかなことに金は使いませんよ。

倉庫に保管しておくだけです。3年後には国は特定健診を断念します。そのときまで待って、紙を廃棄します。廃棄にも金はかかりますが。」

デギン・ザビ「厚労省にも骨のある役人はいる。厚労省=無能と決め付けるのは、前世紀の独裁者ヒトラーと同じだ。いや、彼以下だ。お前はヒトラーのしっぽだな。」

ギレン・ザビ「では、父上、ヒトラーのしっぽの戦いぶりをじっくりご覧下さい。」

[第1話] [第2話] [第3話] [第4話] [第6話]

[戻る]
link to Kimura's HP