とられてたまるか! 3.赤外線焦電センサ編

戻る トップ > 遊んで学ぶ電子回路

3.赤外線焦電センサ編

3-1.秋月電子通商の赤外線焦電センサキットをつかってみる

 侵入者を検出する方法として、窓にスイッチをつけたり、振動センサや超音波センサなどいろいろ考えられますが、秋月電子通商でキット化されている赤外線焦電センサを使ってみることにしました(図1)。このキットは値段が1500円と手ごろな上、説明書をみると20mくらいの感度がありそうなので、今回の用途にぴったりと思ったのが理由です。

 このキットは、20mの検出距離をもつフレネルレンズが付属、人体の動きを検出してリレーを一定時間ONする、cdsセンサ併用により、日中はセンサの動作を止めることができる、というものです(写真1:ただし、リレーもcdsも使用しないので、とっぱらってあります)。とりあえず、まずはキットを組み立てて、どの程度の距離まで反応するかを試してみました。まずセンサのすぐ前で手を動かしたりすると、確かにリレーが動きます。続いて、5mくらい離れて検出するかを試してみたところ..........無反応。そして図2のように検出エリアを出たり入ったりしながらセンサに近づいて、ようやく反応したのが3m。たった3m。なんてこったい。これではとても使い物になりません。そこで、キットの回路をみて、感度アップを試みることにしました。

 

    左:付属のフレネルレンズ

    右:組み立てたキット  基板中央に見えるまるっこいのが焦電センサ

図1 組み立てた焦電センサキット

付属のフレネルレンズは、X軸・Y軸方向で検出範囲がことなるので設置には注意が必要

図2 焦電センサの検出実験

 

3-2 赤外線焦電キットの回路をみてみる

 このキットの超おおまかなブロック図は図3のようになっています。焦電センサ出力を交流結合の増幅器2段で1600倍(40倍×40倍)に増幅し、その出力をコンパレータにかけ、1.6V以下、もしくは3.2V以上になったらコンパレータ出力をHにし、一定時間リレーをONにする回路を動作させるというものです。なお、このキットは単電源で動作させるために、5Vの半分である2.5Vを中心に動作させるようになっております。そして、コンパレート電圧である1.6Vと3.2Vは5Vを3分割することで作り出しております。アンプはすべて交流結合になっていますから、交流分しか増幅しない、つまり人間が動かないと反応しないという仕様になっています。交流結合を採用することにより、焦電センサやアンプの温度特性・直流特性の問題をなくすことができるという利点がありますが、反面、静止状態、もしくは超スロー動作のものに対しては反応しないという欠点も出ます。とはいえ、人体を検出するにあたり、人は必ずセンサ領域に入る・出るという動作をするわけですから、この欠点はあまり気になりません。

 

 

    図3 焦電センサキットの超大雑把なブロック図

     

 以上をふまえて、焦電センサの各出力をオシロで観測しながら、センサの前を横切ってみることにしました。そのときの測定結果がこの図4です。

    図4 焦電センサキットの動作波形 青色横線は、コンパレータの検出レベル

     

5mぐらい離れていてもセンサはちゃんと反応してくれています(黄色)。ただ、増幅度が足りないため、コンパレータ入力段階においても1.6V〜3.2Vの領域を出てくれません。この結果から、単純に増幅度を増やすか、コンパレータのコンパレート電圧を変更してあげれば感度アップが可能と思われます。ここでは、簡単に増幅度をあげる方法をとることにしました。ただ、むやみに増幅度をアップさせると、プリントパターンによっては発振の可能性も出てきます。また、使用しているオペアンプのオープンループゲインも確認しておかなければなりません。そんなわけで、増幅度アップもほどほどに、とりあえず初段のアンプを80倍(38dB)にしてみました。オペアンプのオープンループゲインから、この程度の増幅度は問題ありません。ただ、発振がちょっと怖いですが、とりあえず大丈夫でした。これで感度は2倍にアップしたはずと、同じ実験をしてみました。それがこの図5

図5 増幅度をアップさせたときの動作波形

5mの距離でも反応してくれるようになりました。設置にあたっては、もう少し感度がほしいので、2段目のアンプも増幅度を高めてさらに感度アップをしておきました。

これで、赤外線焦電センサにより人体検出が可能となりました。これで人体検出とビデオ操作の両方が完成しました。あとはマイコンで制御してあげれば望みの防犯装置が出来上がります。

    続く