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ベンチャー企業の経営管理 平成11年3月24日に開催された東京総研株式会社主催「第20回 未公開株式研究会 テーマ:ベンチャー企業の経理の仕組み・作り方」 の講演録です。 W 破綻を起こさないためのシステム(仕組み)の構築 この破綻を起こさせないために、どうしたらいいんだというのが本日の本来の課題です。私はこれだけひどい破綻の例を見ましたということだけ話して終わったのではしょうがありませんので、以下、その話をしたいと思います。ただしこれも私の経験則であり、またすべての破綻を私が解決したわけではないという部分がありますので、とりあえず私はこんな処方箋を切ってみましたが、みなさんはどうですかという部分もあります。話が終わった後質疑応答を少し受けて、懇親会その他のフリートークで話ができたらと思っていますが、とりあえず私の処方箋を見てくださいということでお話させていただきます。 W-1 組織体制の整備と内部統制 何はともあれ、組織としての業務への移行が大事ではないかと思います。そして、その組織化の中に、各業務において必要な経営管理機能と内部統制システムがビルトインされていなければいけない。しかもその仕組みを作るだけでなく、その会社の組織の中で回さなければいけないわけですから、従業員の理解を促して、経営者にももう少し権限手放してよという形で説得していく啓蒙活動が必要です。従業員が育ってくれなければ、あなたは課長のままねということで部長として有能な人材を引っ張ってくるということも必要でしょう。 具体的にはどういうことかというと、それをTo Do Listという形で書きましたが、まず組織図を作ってみようじゃないか、ということです。ここまではなんとか中小企業でもできていますが、人に仕事がつくのではない、組織に人がつくんですよということです。 <To Do List> ・組織図の作成(人に仕事がつくのではなく、組織に人がつく) ・職務分掌の実現 ・職務権限の委譲 ・各部門の経営管理における課題の明確化 ・業務の定型化 ・業務フローチャートの作成 ・業務マニュアルの作成 ・ファイリングの整備 ・現場を見る(ような管理職を置く) ・管理資料を見る(ような管理職を置く) ・上記のような動きを推進し、部下に啓蒙する管理職を育成する(調達する)。 ・でも、社長もちゃんと仕事する(公開準備のさなかロータリークラブに出席したり、ゴルフの回数が減らない会社がある。公開するまではゴルフを絶つ、公開するまではベンツは買わない…などの自制力が必要)。 某飲食店で、商標や意匠権の管理を担当していた人が資材物流部門に回りましたが、その後も相変わらずその人が商標関係を担当しているんです。社内に商標権の知識を持っているのがその人しかいないということで、職務権限規定を作るとどうしても物流部に実用新案権・意匠権・商標権の登録管理の仕事が入ってしまいます。これなんとかしてくれよという話はしていたのですが、ほかにいないことにはしょうがない。かといって、それだけのために専属の人を雇うほどの仕事でもない。組織図でそこの支障を来さないためには、兼任の規定を置くしかないのかと思いました。第2店頭をやるなら、東証にしても徐々に企業の小規模化への対応が進んできているような印象を持っていますので、ある程度の兼任というのは許されるのだろうかというイメージはありますが、とにかく実体に応じつつも組織というものを作ったほうがいいでしょう。組織の上で、職務分掌や職務権限をきちんと乗せていくことです。 売上高10億を超えていながら1万円以上社長承認、という会社は結構多いです。公開準備で我々が行って、監査法人というのはこういうふうにしてみなさんの会社を公開まで持っていくんですというような話を説明している時に、「たとえば、社長が1万円以上全部チェックしている会社がありますが、ハンコ押すのが社長の仕事じゃないですよね」なんて言うと、社長は思わず頷いたりして、もしかして当社もそうですかと聞くと、そうなんですよと言ったりすることがあります。社長が権限を委譲することに納得していない段階で、うっかりその話をするとやばいなあというのがあったりするほど多いです。それをなんとか切り離していく。逆に、有能な部下がいないと思っているために社長が全部承認していることもありますので、人が先か仕組みが先かという部分はありますが、とにかくやらなければいけない。 それから、各部門の経営管理における課題の明確化があります。資材部門であれば、絶対に滞留在庫を作ってはいけないという課題が最優先ならば、それが経営管理の課題です。これが組織なり分掌なり業務の定型化の中に組み込まれなければいけない。課題の明確化が必要です。そのための業務の定型化をして、定型化した後に人が変わってもちゃんと残るようにフローチャートやマニュアルを作って、書類等の共有化をしなくてはいけないですから、ファイリングの整理をしないといけないでしょう。それから、それがうまく動いているかどうか現場を見る、あるいは現場を見るような管理者を置く。管理資料を作りっぱなしではなく、見るような管理者が必要です。在庫一覧表や在庫年齢表を作れと言っても、古い在庫がどれだけあるかを管理職が見なければそれまでです。やはりそれを見るような管理者を置かなければいけないでしょう。 さらにそうやっていきつつ、社長もちゃんと社長なりに仕事してもらわなければなりません。いろいろな会社を見てきた中でも、ロータリークラブにしっかり欠かさず出席する社長がいました。悪いことにライオンズクラブやロータリークラブは、欠席するとペナルティがつく仕組みになっています。そのため、あれは公開を考えない中堅オーナー企業のための同好会だと思ってもらわないといけませんので、場合によってはロータリークラブは退会するんだぐらいのつもりで公開に踏み出してほしいですが、ロータリークラブは出るわ、ゴルフの回数は減らないわ、我々が監査で行った段階ですでにベンツ買ってるわという会社があります。私が見ていた事例で、店頭出て2部上場まで行った会社の社長は、「いや、公開するまではベンツ買わないんだ」と言っておられました。周りから言われるんですね、もう店頭にも出たことだし、社長さんぐらいだったらなんでマークUに乗っているんですか、という認識を持たれる方もいらっしゃいますが、この社長は「2部行くまでは買わない」。そういう仕組みを作らないといけないと私は思っています。 では、そのための支援システムはどうするのか。会社に任せておいたら破綻するわけですね。そのための対策を4つほど挙げたのが以下になります。 「ベンチャーの経営管理」目次へ ベンチャー支援メニューへ |