西暦2000年問題を考える

 師走の季節です。いよいよ西暦2000年へのカウントダウンが始まりました。今年の流行語大賞は「定説」なのでしょうか。「明日も勝ちます!」なのでしょうか。今年亡くなった有名人のトップはジャイアント馬場でしょうか。今年の阪神重大ニュースのトップは「野村フィーバーでも最下位」なのでしょうか。
 しかしよいことばかりではありません。新聞、雑誌、テレビなどマスコミで「2000年問題」が取り上げられることも多くなりました。しかし言葉だけが先走りし、具体的にどのようなことが起こる可能性があるのか、よくわからずに不安だけをかき立てられる傾向があるようです。
 西暦年の下二桁が「99」から「00」に移行することによって、いったいどのようなことが起こるのか。個々の事例について具体的に検証していきましょう。

1)電気、水道、ガス等が供給を停止する。
 管理システムのプログラムが西暦下二桁の年号しか持たないため、99から00に切り替わった時点で00を年だと判断できない等のシステムエラーを起こし、供給がストップする可能性があります。政府・マスコミは水を浴槽に溜めて置けとかガスコンロ、蝋燭を準備しろとかくだらないことを言っております。無用です。こういう場合大衆の取るべき手段はただひとつ、打ち壊しです。米屋と銀行と証券会社と国会議事堂を襲撃しましょう。1920年代ニューヨーク以上の暴動を起こして、骨のあるところを政府に見せつけてやりましょう。そのために今から、「ええじゃないか」を踊る練習をしておいてください。

2)カードが使用できない。
 これもプログラムが00という数字を年だと認識できないため、カードが一時的に使用不能になる可能性があります。まあ、こんなことにも対応できない会社は、どうせ他のことにも対応できず、金融ビッグバンの波にのまれて倒産するのは確実です。もし正月に使用不能になったカードがあったとしたら、さっさとそんな金融機関とは取引を停止した方がいいですよ。いやホント。有効期限00年のカードが「99>00」という判断をされてしまったため、99年中には使用できないというのも同様のバグです。同罪です。

3)請求書の金額が狂う。
 99年から00年の間の期間を1年でなく99年と計算し、99年分の年会費や基本料金を請求されたり、99年分の金利を請求されたり、という事態が起こる可能性があります。でもきっと、預金の金利を99年分計算してしまうというような嬉しい事態は、起こらないんだろうなあ。そこだけ綿密にデバッグしていたりして。マイナス99と計算して、99年分の年会費をくれる会社があれば、ファンになるんだがなあ。

4)電車、飛行機等の運行が狂う。
 同様のシステムエラーのため、ダイヤが狂う可能性があります。飛行機の場合、管制塔に同様のシステムエラーが起こり、統制できずに衝突事故などが起こる恐れもあります。避けるためには空港や航空会社の掲示板を普段から注意して見ておき、ときどきWindowsエラーが表示されるような会社には近寄らないのが賢明です。

5)人工衛星が落ちてくる。
 アメリカ航空宇宙局のシステムエラーが起こる可能性もあります。現に米軍戦艦のシステムをWindowsで動かしていたところ、システムエラーが起こって航行不能に陥った事件が今年ありました。また2000年問題ではありませんが、距離の単位をマイルとメートルを間違えたためドッキングに失敗した人工衛星の事件も今年です。同じような馬鹿が2000年に起こらないとは言い切れません。もし落ちてきた場合、防ぐ方法はありません。落下の衝撃が強すぎるため、シェルターに潜っても地下街に逃げても無駄です。杞憂です。いやこれは誤用だったか。

6)戦争が起こる。
 米軍のミサイル管制システムに同様のエラーが生じ、モスクワに向け一斉にミサイルが発射される、という事態も予想されます。折悪しくエリツィンは肺炎で急死した直後。混迷する政局のため、ホットラインが繋がったときには遅すぎた。モスクワ壊滅。しかしチェチェンに滞在していたため難を逃れたプチン首相を中心に対米強硬派が急遽組閣。クリントン大統領は謝罪の意向を示すが、共和党強硬派のため行動を制約され、ロシアの怒りは解けない。ついにプチン新大統領は、ロシア全土の核ミサイルをアメリカに向けて発射。これに中国も呼応し、なぜかモンゴルとチベットを軍事占領。どさくさに紛れて北朝鮮はソウルと東京に核弾頭の労働二号を命中させる。かくして世界最終戦争。個人的に防ぐ手段は全くないので、今からモールス信号を習い、「コウフクダッタネ……コウフク」と打つ練習をするのがいいでしょう。

7)馬車が走る。
 アメリカで自動車の車検登録で、「00」という年代を登録したところ、コンピュータがこれを1900年と判断しました。1900年には登録可能な車種は「四輪馬車」というものしかなかったため、自動車が四輪馬車として車両登録されてしまった、という事件が起こりました。さすがアメリカ、バグも豪快だぜ! このため登録に忠実な人が馬車を購入して道路を乗り回す、という事態も予想されます。幌馬車の場合、峡谷で待ち伏せして火矢での攻撃が有効です。フランス風乗り合い馬車の場合、後部座席の紳士は隣の令嬢にけしからぬ振る舞いをしているので注意が必要です。

8)企業に拘束される。
 コンピュータの誤動作やソフトのバグ発覚に備え、コンピュータ要員を自宅待機させる企業が増えております。企業にしてみれば臨出手当も出さなくていい、無料で社員を囲い込みできるおいしい方式です。このため酒も飲めずストレスのたまった社員が、インターネットのチャット、掲示板等で荒れ狂う事態が予想されます。大晦日から正月にかけては以下のことにご注意ください。従軍慰安婦問題、鯨保護問題、日記猿人投票ボタン問題、野村カツノリ阪神入団問題など、論争の種になるような不用意な発言はしない。「うふ、お正月をハワイで迎えちゃったよー(^^)V。こちらは快晴。。。まさに泳ぐっきゃない!(^o^)って感じ?」などと怒りに油を注ぐような発言はしない。できればチャット・掲示板に近寄らない。近寄るなら差し違える覚悟で。

9)ぼったくり商法の被害に遭う。
 「万が一に備えて保存食を用意しましょう」というマスコミのキャンペーンと、企業に拘束され外出できないサラリーマンの増加のため、年末年始のおせち料理の需要がうなぎ登りとなっております。そのため豆だとかジャコだとかきんとんだとか卵焼きだとかくだらない安物料理の詰め合わせが一万円とか二万円だとか法外な値段で取り引きされています。おせち料理など買うのはやめて、吉野家の牛丼セットを買いましょう。ずっと安いです。けんちんセットは出してくれないのかしら。
 また、デパート各社では通常780円ほどのワインを「ミレニアムワイン」と称して2000円で販売中です。くれぐれも注意しましょう。
 そしてスーパーでは年末年始に「2000年だから2000円特売!」と称し、通常1980円で販売していた商品を2000円で販売する計画 を立てています。いやー、みんな商売上手やわ。

10)映画がつまらない。
 「なんとか1999」「かんとか2000」という題名の映画は軒並みつまらない、という苦情が多く寄せられております。「ブルースブラザーズ1999」も駄目でした。「ゴジラ2000」もきっと駄目でしょう。オルガなどという怪獣と闘う体たらくですから。キンゼイ博士かおのれは。唯一期待しているのは、「オルガ対策委員会」(入りたくない委員会だ)などというところで、「ここがオルガが棲む巣です」などというベタなギャグを誰か飛ばさないかな、ということです。ちなみに「2001年宇宙の旅」と「スペース1999」は名作なので安心しておすすめできます。

11)日記、雑文の順序が狂う。
 だから早めに年を四桁化しておきなさいと言ったでしょう。こうなったら成り行きに任せましょう。あと一ヶ月の間に、1.日記猿人が消滅する。2.ReadMe!も消滅する。3.あなたの日記・雑文が消滅する。4.サーバが消滅する。5.インターネットが消滅する。6.世界が消滅する。のいずれかが起こる可能性があります。そうすれば心配しなくてもいいわけです。一対六の割合であなたの方が有利です。

12)2000年の元旦に「二十一世紀の夜明けです」と言われる。
 まだ勘違いしている人がいるかもしれません。2000年は二十世紀最後の年で、二十一世紀は2001年からです。そのため最初「二十一世紀の幕開けを海外で!」などといっていた旅行会社も、「2000年代最初の正月を海外で!」などと中途半端な物言いになっています。ミレニアムというといかにもかっこよいので多用されますが、これも同じ言い逃れ用語です。気をつけましょう。

13)大袈裟な奴が増える。
 何かというと「二十世紀最後の」とか「二十一世紀新時代の」という形容詞をつけたがるマスコミにも困ったものです。松坂を「二十一世紀のヒーロー」と呼ぶのは、ま、いいでしょう。しかし近鉄のドラフト九位、吉川を「1900年代最後の指名選手」というのは嘘じゃないけど大袈裟だなあ。全日本プロレスの三沢選手を「1900年代最強の三冠王者」と呼ぶのも、ずるいよなあ。だって三冠王者ができたのは1990年以降だぜ。そういえば八月にあった日食を「二十世紀最後の皆既日食」というのも、確かにそれはそうだが、次は2001年の六月にあるんだしなあ。広末涼子を「二十世紀最後のアイドル」と呼ぶのも同断。だいたい内田有紀がそう呼ばれていたと思うぞ。

14)デマが流布する。
 2000年問題で飛行機が落ちるとか、戦争が起こるとか、薄弱な根拠といかがわしい推論で社会不安をかき立てる輩が増加しています。その多くは新製品を売りたい企業の陰謀、危機管理評論家の売名行為、雑文書きの愉快犯です。くれぐれもデマに惑わされないようにして、冷静に2000年を迎えてください。


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