お笑いマンガ道場・チャット篇

 今回は多数の画像を含むため、通常に比べサイズが大きくなっております。多少重くなるかと存じますがお含み置きください。

 人間、酔うとなにか書き散らしたくなるもののようだ。モノは人によって異なる。揮毫を色紙に書き散らしたり、俳句を短冊に書き散らしたり、熟睡する人の額に「犬」と書き散らしたり。そして私は、タブレットで愚にもつかぬ漫画を描き散らしたくなる。たぶん、酔ったため、こんなものは描く価値がないという批評眼、こんなものを描いてはならぬという理性が消失しているのだろう。

 ふつうなら酔いが醒めたあと、そういうものは破棄しておしまいなのだが、前回の駄文で、ついその数枚を使用してしまった。
yokotiti
 そして、なぜかこの横乳図が、一部でウケてしまったらしい。某所の某氏から、依頼を受けたのだ。
「今度、二十一才の女の子の投稿コーナー『彼氏との闘争』っての作るからさ、そのバナーというか、カット描いてよ。あ、もちろんカラーで、乳はもっとデカいほうがいいな。描けないとは言わさんで。夜道、後ろに目はついとらんのやからな」
 そこでホイホイと描いてしまったのがこの図である。
champ

 先日、某所でチャットが開かれた。
 くだんの二十一歳嬢も参加するという。
 直接話が聞けるチャンスだ。ついでに口説くという手もあるし、と勇んで、私も参加した。
 前に描いた絵は、あまりお気に召さなかったそうだ。
「だって、ちょっと逞しすぎるもん。あたし、もっと華奢なのよ」
 なるほど。「闘争」というタイトルのイメージに囚われすぎたか。
「それに、清純派に描いてね。裸エプロンとか勝負パンツとか、そーゆーのは駄目よ」
 え、そんな。話が違うではないか、某氏よ。と、私は、提示しようとしていた「勝負パンツ之図」や「裸エプロンを後方斜め三十五度から眺める之図」を、慌てて引っ込めるのであった。
 裸エプロンは駄目ですか。では、こーゆーのはいかがでしょう。
annamillers
「……駄目」

 そもそも、私は二十一歳嬢のプロフィールを、なにも聞いていないのだった。髪は長いか短いか、黒かオレンヂか白髪か、丸顔か瓜実か、目は一重か二重か、まるで知らないのだった。
 しゃあない、ここで聞き込みだ。すいません、どんなお顔かな。丸いかな三角かな四角かなー?
 まんが道場というよりは、「お笑いオンステージ」の三波伸介のコーナー「減点パパ」の雰囲気になってしまったが、とにかく聞いてみる。
「んーとね、髪は肩より短いの。わりと小柄で、ちっちゃいの。逞しくなんかないからねっ」
 はいはい、わかりました。根に持ってるな。髪は肩まで、ちっちゃい……ちび……ちび? ちび、ちび、ちびぃぃぃぃ!! うぉぉぉお、何故こんなにも心が騒ぐのだぁぁぁあ!!!
 ということで、ついこんなものを描いてしまいました。
hamutaro
 これで完全に怒ってしまったらしく、二十一歳嬢は口数も少なくなり、早々にチャットから落ちてしまったのでした。しかしこの絵、幼稚園児のようだな。

 それからというもの描き散らしはさらに暴走し、チャットに登場する女性すべてをその場で描き散らす、という暴挙に出たのでありました。
 某氏「Aちゃんのぱんつは、今日はどんな色なのかな〜?」<笑福亭鶴光かおのれは
 A嬢「今日はね、黒なの」<しかし、どういうチャットじゃ
 某氏「く、黒〜?! いや、意外とエッチなんだね」<成田アキラかおのれは
 A嬢「黒っていっても、そんなにエッチっぽくないやつよ。モコモコで、フリルがついてる可愛いっぽいの」<答えるなよキミも
 某氏「ふ、フリル〜?!!! お、おい、こら、下条、描け、早く描くのだそれを!! もちろんカラーでな」
 …………描きました。
kuropan
 A嬢「え〜、やだ〜、あたしちゃんとウエストありますよ〜」
 すまん、ついずん胴者のココロが入ってしまったようだ。しかしA嬢よ、どうせなら見知らぬ男に下着姿を勝手に想像されて描かれた、そのこと自体に対して怒りなさい。

 某氏「Bちゃんのカットも描け。えっとね。Bちゃんのイメージは、白いパンツに、わりとビシッと物言う委員長みたいで、ちょっとヨコチチプッシュすると、真っ赤になるって感じ」
 委員長。ってったら、「750ライダー」だよなあ。あれは眼鏡かけてないけど、固いタイプの委員長なら、やっぱ眼鏡だよな。横乳プッシュというのは、絵にはなりにくいなあ。しゃあない、ちと古いが往年の永井豪から金井たつをへと続く線で攻めるか。
iincho
 B嬢「アタシ眼鏡かけてないですよー。セーラー服も着たことないし。アタシって、そんなに固いイメージなのかな?」
 すまん、おじさんは、Bちゃんのこと、まったく知らんのだ。某所のおじさんに命令されて、描いているだけなのだよ。恨むなら、某氏を恨みなさい。
 某氏「そんでね、Cちゃんのイメージは、黒いぱんつでのままタバコ吸って、『もう、お・わ・りなの?』って可愛い顔して、おじさんを困らせるようなことを平気でいう感じ。オレって、Bちゃんに怒られてしょんぼりして、そういうCちゃんの前で、立たなくなって泣きそうになってるって感じかな」
 なんか、想像というよりも妄想入ってきてるぞ。おまけに本人まで登場人物になってきてるし、この人、大丈夫なんだろうか?
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 某氏「いいねいいね、こーゆーので、黒眼鏡外して、もっとチチ大きくして、カラーで描いてくれるかな? 今度のカットで使うからさ。……ところで、後ろに立ってる男はダレ?」
 ……誰と言われましても。

 実は酒を飲みながらチャットをやっておりましたので、これらの会話、翌朝にはすっかり忘れていたのです。ところが描き散らした絵をみて、思い出してしまったのですね。あの一夜の狂乱を。
 酔っ払った時の証拠を残しておくのは、どうもよろしくないようです。


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