在庫はまだあと数百枚

 イラストのようなものを描きはじめたのは大学生のころからで、それ以前の幼い時代にはかいじゅーぐどんだのろぼっとへいきじぇっとじゃがーだのこんごの火吹ききょーりゅーだの描いていたような気がするのだが、それはただの落書きでイラストとは呼べない気がしないでもない。かといって大学時代に描いていたのも便所の落書き同然だったという事実は否めない。

 などと自分のろくでもないお絵かき歴をカミングアウトする予定ではない。今回は他人のPRなのです。販売促進活動、略して反則活動なのです。あれ?

 敬愛するぷにぷに愛好雑文書きうどん大将軍こと徳田さんのページで、「在庫はまだあと数百枚」という文章を、そしてこれも敬愛するコスプレ愛好雑文書きドジリーヌ姫ことkasumiさんのページで「在庫はまだあと数百枚」という文章を読まれた方も多いかと存じます。そうです。今回は徳田さんがお作りになられた珠玉のコンピューターゲーム、「GLoW」の宣伝なのです。

 宣伝というと「ほら、キッチンがこんなにぴっかぴかになりました」とか「一年でなんと三千九百八十七円の電気代がおトクになります」とか「みるみる末期ガンが治った」とか「今この麺棒を買った方には、わかりやすい料理の手引きとまな板と包丁とフライパンと食器洗い機とオーブンレンジをおマケして、さらにもう一本のおマケつき」とかいう言葉がまず心に浮かぶのですが、残念ながらこのゲーム、掃除もしないし電気代はかかるし心霊治療はしてくれないしコンピュータとADSLとモデムがおマケになってもいない。ううむ役立たずめ。
 いや待て、それは修業が足りないだけではないのか。ああいう宣伝番組では、キッチンがぴっかぴかになるのは当然だろというくらいに渾身の力でこすっていたり、三千九百八十七円の電気代がおトクになる代わりに七千九百八十円のガス代がかかることを隠していたり、末期ガンなんかさいしょからなかったり、最初からその値段込みで売っているものをおマケとは言わなかったりするのだ。要するに三百代言、嘘八百なのだ。
 テレビの連中に嘘で負けたとあっては駄文書きの誇りにかかわる。負けてはならない。たとえばこうすればいいのだ。
「(毎日GLoWをプレイする前一時間はキッチン掃除の時間と決めておけば)ほら、キッチンがこんなにぴっかぴかになりました」
「(ファイナルファンタジー11をプレステ2ごと買ってきて遊ぶことに比べれば、パソコンがある家庭でGLoWを遊ぶのは)一年でなんと二万三千九百八十七円の通信代と六千八百円のゲーム代と一万七千八百円のプレステ2代と一万九千円のBBユニット代がおトクになります」
「みるみる末期ガンが治った(というシナリオがGLoWにあったような気がしないでもないが、あれは夢だったかもしれない)」
「今このGLoWを買った人には、わかりやすいうどんレシピとうどんこね鉢とまな板と包丁とうどんカッターとずん胴鍋とうどん踏み用破れにくい特製ビニール袋(を前にうどん大将軍が奮闘している姿をセキララに爆写した写真)をおマケして、さらに(うどん大将軍のお宅へお邪魔すれば、うどんを)もう一本(くらいはご馳走してくれるかもしれない、という特典)のおマケつき」

 だんだんこの反則活動もとい販促活動にネガティブなイメージを持つようになってきたのではないかと思わないでもないので、ここで真面目な告知を行います。

前の蛋白過少大臣うどん大将軍こと徳田雨窓氏がぷにぷに方面の造詣をあますことなくぶちまけた幼女性犯罪法すれすれの大作アドベンチャーゲーム「GLoW」は、通信販売、全国のあやしげな店での委託販売のほか、なんとコミケ会場(八月十一日日曜日東S−44b)でも販売します! 生産者特別価格でなんと千円ポッキリ! どうかよろしく!

 徳田さんやkasumiさんはこの程度で説明がじゅうぶんだと判断している様子ですが、まあおふたりはどっぷりとアッチ側の世界に耳までひたりきっているからしかたがない。私としては、アッチ側とこっちの一般人の世界との架け橋となるべく、もうすこし補足説明してみよう。
 あのですね、コミックマーケット、略してコミケット、さらに略してコミケ、もひとつ略してミケ(これは嘘)、ついでに略してケ(これも嘘。ハレが正しい)というものがあるのです。歴史はかれこれ二十年前にさかのぼる由緒正しいイベントです。今回で六十二回目というのですから、たいしたものです。今回はお台場の東京ビッグサイトで行われます。新橋駅からモノレールゆりかもめに乗って、展示場正門前下車すぐです。

 コミックというと漫画ですが、少年ジャンプとかりぼんとか、そういうコミックを売るのではありません。同人誌と申しまして、しろーとさんが描いた漫画をガリ版やらコピーやらオフセット印刷やらで百冊とか五百冊とか刷って、それをしろーとさん本人が売る、そういう場です。そうですね、漫画同人誌に品目を限ったフリーマーケット、あるいは牛久商店街でなくお台場で行われるうしくかっぱ祭り、と想像していただくと正解に近いかもしれません。うしくかっぱ祭りはともかく、牛久シティマラソンは大嘘こきやがってという気がするのですが今回は関係ありません。
 最近では漫画同人誌に限らず、うちわ、絵はがき、ゆかた等のグッズ、イラスト、ゲーム等を収録したCD、自作のフィギュア(まあ、人体プラモデルの高級なもん、とでも想像してください)も売っています。要するに漫画アニメ関係について、自分で作ったものを売っている、ということですかね。などと思うとUFOキャッチャーで取ったぬいぐるみとかフルタのお菓子のおまけのアリス人形とか別冊マーガレットの付録とか売っているところもあって、なんだかよくわかりません。
 お祭りというと踊りがつきものですが、コミケットにも踊りはあります。うしくかっぱ祭りでは犬面男だとかかっぱ着ぐるみだとかオレンヂTシャツだとか思い思いの衣装に身をこらしていたそうですが、コミケットでもユウナだとかマリーだとかカスミンだとかおんぷだとかメールちゃんだとかまきちゃんだとか、私のような実直な人間には想像もつかない思い思いの恰好に身をやつしているのです。そして踊るのです。kasumiさんも踊るそうです。踊るのです。踊るのです。踊るアホウに撮るアホウ、だまって撮ったら警察へどんどん。江戸のお台場のビッグサイトで、坊んさん同人誌買うを見た、はぁよさこい、よさこい。はいはい、踊り子さんの衣装には触らないように。ダウンタイムはないよっ。アフターコミケは交渉次第だ。いかん。趣旨と違う。

 そしてその規模がおそろしい。
 東京ビッグサイトといえば東六ホール西四ホールの展示場をもち、総面積は二十三万平方メートルに及びます。なんと東京ドーム五つ分です。そんな広い会場ですから、たいがいの展示会やイベントは、そのうち一つのホールか、せいぜい二ホールを借りる、というのが普通です。
 たとえばコミケットの前の週、八月四日(日曜日)にこのビッグサイトを使うイベントを見てみましょうか。
 まずハウジングフェスタ2002。住まいのことならなんでも相談、ということで、メープルハウス、日本ペイント、セコム、コクヨ、パイオニアといった一流企業が参加して、なんと三ホールを借り切っています。ふとっぱらですね。
 そして第八回骨董ジャンボリー。ジャンボリーというからには富士の裾野に集まってキャンプファイアーでもしながらカッコーの輪唱でもしてボーイスカウトの誓いをあらたにするのかと思いましたが、ぜんぜん違うようです。刀剣茶道具からバービーちゃん人形まで、ありとあらゆる古物を売るところです。こちらは一ホール。
 さらにワンダーフェスティバル2002。こちらは清涼飲料水やお菓子のオマケで有名な海洋堂などが中心となって、セーラームーンからよっちゃんまで、ゴマキからサッチーに至るまで、いろんなフィギュアを展示即売するらしいです。これは二ホール。
 最後に東京トイフェスティバル。こちらはまっとうなおもちゃの展示かと思いきや、オタクの岡田斗士夫がプロデューサーですからまっとうではありません。ありとあらゆる怪しげなモノの販売を行うようです。こちらは一ホール。
 その翌週、コミックマーケットは。
 なんと全ホール借り切り。ぜんぶコミケット。コミケットてんこ盛りです。東京ドーム五つ分の中身がぜんぶコミケットです。東京ドーム五つ分のおた、いや、なんでもないです。ううむ、おそろしい。
 それもそのはず。参加希望サークル五万余。めでたく抽選に当たって参加するサークルが三万四千サークル。そして入場者数が前回はのべ三十六万人、今回は五十万人超は間違いないという、とんでもないイベントなのです。

 その広い会場のどこに「GLoW」を販売している徳田さんがいるのだ、とお聞きなさるか。もっともです。東S−44bという呪文だけで場所を探し当てるのはほぼ不可能です。ここはどうしても、コミケットカタログという、参加サークルの案内をしている本を買わねばなりません。全国のあやしげな書店、あやしげな玩具屋で絶賛販売中。
 これが分厚い。そうですね、ざっと地方都市のタウンページくらいの厚さです。まったく誇張なし。なにしろ三万四千サークルですから、そこらの政令指定都市の商店よりも多いのです。これがあまりに分厚いという人は、CD−ROM版を買ってノートパソコンと共に持ち歩きますか。そっちのほうが軽いし。コミケットカタログは書籍、CDともにたしか二千円だったと思います。
 なんで場所を探すだけのために「GLoW」の倍の値段を払わなあかんねん、とおっしゃいますか。そうですね。それなら気力と根性で捜すしかありません。
 東S−44bというからには、東の6ホールのどこかにSという区画があるはずです。そこの44番目の後ろ半分。そこに、うどんと糠漬けでかろうじて露命をつないでいる痩せた人間がいるはずです。それこそ徳田さん。その人に千円札を渡すと、人目を忍んでこっそりと、ジャケットを隠すように「GLoW」のCDを渡してくれるはずです。いま幼女だのエロだのに関してはオカミがうるさいのでね。総理や幹事長は愛人持ちまくりのえちぃしまくりのくせに。ともあれ、これでめでたく取引成立。
 徳田さんは日頃の粗食と会場の熱気でぐったりとしているかもしれないので、よく冷えたジュース(前日冷凍庫で凍らせておくとちょうどいい)、お菓子(フルタのおまけつきが徳田さんのお気に入り)などの差し入れをもっていくと喜ばれるかもしれません。ただし、いくら可哀想だからといっても、えんぴつや古着や毛布を差し入れるのはやりすぎです。いやまあ、文具はともかく、徳田さんは着替えも掛け布団も持っていないそうですから、渡すと喜ぶかもしれませんが。ただしクリックしても徳田さんは救われません。「GLoW」を買って救ってください。

 そしてkasumiさんがどこで踊っているかを捜すのは、徳田さんのサークルを捜す以上の難事です。異様な姿で踊っている人々に向かって、「kasumiさん、かすみさあぁぁぁん!」などと誰かが東京駅でやったように絶叫しても無駄です。おそらく78人程度のカスミンがやってくるだけでしょう。だいいち東京駅で絶叫していたときはkasumiさん家で寝てたし。
 やはりここは、人生という荒海を航海する船が静かな港に戻るように、トンボを追いかけて思いがけず遠くまで来てしまった子供が夕暮れのなか優しい母親の膝へと急ぐように、そしてまたいくさに傷ついた戦士がそのために闘ってきた幼なじみを抱きしめるために故郷へ帰るように、踊り疲れたkasumiさんが愛する徳田さんのサークルに戻ってくるのをものかげからじっと待っているしかないでしょう。そして網をふれ。網は縦でなく横に振るのがコツだ。つかまえたら胸を強く圧迫して殺し、ハトロンの三角紙で包み、いやこれは蝶の採集方法だった。これくたー。

 宣伝になったのかなってないのか、自分でもよくわからなくなってきましたが、ともあれよろしく。そして私のサイトでも、コミケまでの期間限定で「GLoW」販売促進キャンペーンプレイ日誌をはじめます。こちらもよろしく。なんだ、自分の宣伝かよ。それは反則。


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