薄井ゆうじの森
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『享保のロンリー・エレファント』 戻る

『享保のロンリー・エレファント』

 享保13年、将軍ご所望の象が、はるばると海をこえ長崎の湊に着いた。象は陸路、異国の地を歩いて江戸城を目指す。瀕死の象を診る医師、象の糞を売る百姓、象を斬ろうとする京娘、象の錦絵を描く絵師、象とともに去る茶屋女、そして象にまたがる将軍吉宗──。象の歩く町々角々にざわめき揺れる人々の心と人間模様を、ファンタジックに描いた小説。

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<著者からのメッセージ>
あたらしい時代小説の愉しみ  時代小説を書くのは僕にとって、はじめての、とてもエキサイティングな体験でした。これまで書いたことがないので、どんな文体にするか、どんな会話体にするか、そして最大の悩みは、生半可な知識しか持ち合わせていない時代考証はどうするのか。書く前のそんな悩みを打ち消すように、ある時代小説の作家が僕にこうおっしゃいました。 「その時代のすべてを知らなくても書けます。あなたは現代のことを、すべて知ってから現代小説を書いているのですか」  その言葉で吹っ切れた。よし、どうせ書くのなら僕らしい料理方法の時代小説を書こう。そんな意気込みで、時代小説のファンにも、時代小説をあまり読んだことのない人にも、愉しみながら読めるような物語に書き上げたつもりです。舞台が享保であるというだけで、いつの時代も人の心は同じなんですね。時代小説でありながら、ときおり外来語がカタカナで出現するのは、奇をてらったわけではなく、より読みやすく、理解しやすくという必然的な作業でした。  享保年間、一頭の象が長崎から江戸へ歩き、吉宗の時代を走り抜けました。珍獣である象に湧く市井の人びと。象で利を得ようと奔走する人、象のために人生が大きく変化する人たち、その喜びや悲しみ、そして生きていく力の湧きどころなどを、七つの短篇におさめました。短編集でありながら、全体に大きな仕掛けも用意してありますので、あわせてお愉しみください。それにしても、人って、珍しいものが大好きなんですね。 (薄井ゆうじ)

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著:薄井ゆうじ
岩波書店
2008年5月9日刊行
定 価 1900円
ISBN978-4-00-022565-6 C0093
四六判/並製/260頁
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