アンプ内蔵ギター製作記録

アンプ付きシガーボックス・エレキギターを作成しました。
スタインバーガーレベル、重量は1キロちょっと、
自作にしてはまあまあの音がします。
いつでもどこでも持ち歩けて、演奏できるギターが欲しかったのです。
しかし、ミニギター、トラベルギターの類は音とサイズが比例していて、1キロ程度のギターはその程度の音しかしません。
ZO-3やPIGNOSE PGG200などミニサイズ・アンプ内蔵ギターは、サイズは小さめですがけっこう重いです。
ネックさえあれば作るんだがなあ」と思って、探していたらありました。
守谷のハードオフで、1500円でした。

これにありものの材料で胴体を作ってくっつけます。
本棚を作った残り物の材木を切ってネックにネジ止めします。
ミニアンプを解体して内蔵部分を取り出します。
ありもののピックアップを直接ハンダ付けします。

・・・というのは簡単ですが、いくつものブレイクスルーが必要でした。

1:Aria ミニアンプ AG-05 の解体、のこぎりで切れるとは思わなかったが、 やってみたら切れた。
2:ピックアップをどうやって接続するか悩んで、アンプの基盤の裏を見たらハンダ付けする場所がわかった。
3:外部出力用のジャックとACアダプタ端子を置く場所が無い、いっそ切り離すか・・・と思ったが、電池と一緒にボディ部分に内蔵することにして解決
4:ピックアップの取り付け方に困る、ネジを付ける場所がない・・・アルミ缶を切ってケースを作り、ホッチキスで停めて解決

その他、細かい問題が無数にありました。
人間、やれば出来るものですね。
かみさんは、
「板切れちらかして何やってんだか?・・・
エレキギターなんかできるわけないのに・・・
と思っていたそうです。仕事場の仲間に言っても、みんな何のこと?という顔でした。「ギターをつくる」ということ自体が理解不能だったようです。しかもアンプ内蔵ですからね。想像を絶するというやつでしょうか。
私にすれば、ストラトのスタインバーガー化計画の延長に過ぎなかったのですが。


買って来たストラトタイプのネックからペグ(糸巻き)を外します。ここから作業が始まりました。単品売りのペグは一個1000円以上しますから、ペグが1セット付いたネックは考えようによってはすごく安上がりです。また指板は厳密な設計が必要なので素人には作成が難しいです。ネックにはボルトが入っていて反ったり狂いが出ないようになっていますが、これも作るとなると素人には面倒です。結局、ネックだけはプロが作ったものを流用するのが最も賢明だろうと思います。
下はAriaのミニアンプAG-05です。 裏にベルト留めが付いていて、エレキないしエレアコにつないで演奏するためのものです。しかしたったの2ワットでは街頭で使うには力不足、まだ生ギターのほうがいい音がするし、あえてエレキを使う必然性が無い・・・ということでほとんど使っていないものです。
まあ、まことに中途半端なものではありますが、これを内蔵するとなれば話は別です。ネック+ミニアンプで使えればそれはそれで有効なモバイル・ギターになるはずです。
問題はこれをどう接続するか、ということです。ボックスごとネジ止めする方向も考えてみました。しかしどうにもバランスが悪いのです。シンプルな構造にするために「解体して中身だけ使う」という方針は立てたものの、どこまで外すのか、外せるのかが悩みになります。電源スイッチ・トーンコントロール・ボリュームという三つのツマミを外すのは難しく、また有効とは思えません。スイッチのパネルは残してその他の部分を撤去することにします。しかし、本当にそれが可能なのかはまったく分かりません。


木部の工作にかかります。まず、ネックの先端を切断、一列のペグ穴を二列にしてサイズと重さを小さくします。この時使わない穴を切除するのに気持ちがいっていて、ペグを停めるネジ穴の位置を確認しなかったので、端っこのネジ穴まで切り落としてしまいました。ペグ位置をずらせば取り付けは可能ですが、ペグが回らなくなる可能性があります。しかし、デザイン的にはこの角度でないと決まらないので仕方のないところです。反対側には一応計算して穴をあけました。使ったのは電動ドリルと手持ち最大の6.5ミリドリル刃です。仮付けしてみるとおかしな並び方になりましたが、これはこれで面白いと思いました。
使う材木は本棚を作った3種類の板です。本体部分は幅90ミリ・厚さ20ミリ・長さ200センチの杉材の端材です。たしか一本200円くらいの安物ですが、がっちりしていてスチール弦を張ってもゆがむ心配がありません。これを適当な長さに切ります。基本は、ネックと合わせてフルサイズギターの弦長650ミリで、これに多少の余裕を持たせます。表板はかみさんが持っていた工作用のベニヤ板で、けっこうしっかりしたものです。表板を支える間材はトイレ用の本箱を作った桜板の端材で、サイズは幅60ミリ・厚さ14ミリ・長さは1メートルくらいで一本170円でした。もう一つ、何に使ったのか記憶にない棒状の杉材も使いました。これは幅25ミリ・厚さ14ミリです。
最初は上下と後方に間材を入れるつもりでしたが、アンプ部分の三つのツマミを出すためには下方の空間を確保する必要があると考えて上方と後方の二ヶ所にしました。そのためにベニヤ板のサイズを縮小し、杉材の一部を切り取りました。このボディにネックネジ止め用の穴を開け、でっかい木ネジをドリルとドライバーで押し込み、本体を作ります。適当にやったので若干のネジの歪みが出ました。


いよいよ懸案のミニアンプ解体作業です。まず裏蓋を外し、電池用のケーブルを切り離して本体と裏蓋を分離します。そのために電池ケースに穴を開ける必要があります。プラスチックは硬いのでドリルを使うと何が起こるかわかりません。しかしカッターは歯が立ちません。大きなノコギリも使えないので、手持ちで一番小さい小型ノコギリで切断することにします。最初は硬くて切り込めなかったのですが、刃を寝かせて軽くこするようにすると切れ目が入り、その後はスムーズに切れました。この作業で切断にノコギリが有効なことが分かり、大きな展望が開けました。(ちょっと大げさ?)
ノコギリ作業は縁側に出て、猫小屋をテーブルにして行っていましたが、日差しがどんどん強くなります。足元が暑い。さらにノコギリで切れるプラスチックの黒い粉が舞い飛び、目鼻にかかってクシャミが出ます。健康的にはお勧めできない作業と言えましょう。上下から切れ目をいれ、電池ケースの一角に穴を開けてなんとかケーブルを取り出しました。
続いて本体の分解にかかります。使われているネジは小さいもので、大型ドライバーが使えません。ミニサイズのドライバーを使って、まずサイドのヘッドフォン用端子とACアダプタ端子を外します。これをどこに収納するかは次の課題です。


つづいてスピーカーを取り外します。両側に押さえ金具があり、ネジ止めされているのでこれを両方外します。これで表カバーが取れると思ったのですが、裏蓋ネジ止め用の出っ張りが邪魔して外れません。どこを切れば最小作業で表カバーが取れるのか考えますが、どうもうまくいきそうにありません。
それならいっそ基盤が外れるように切ってしまえば二度手間でなくなってよろしかろう、とその作業にかかります。今度は長くかかりそうなので縁側はやめて、座敷に新聞紙を敷き詰めて座って作業します。ノコギリで部品を傷つけてもまずいので、スピーカ・端子類を袋に詰めて縛り、邪魔にならないようにします。
それから上面両端の薄い部分をノコギリ切断します。途中の表カバーとの境目で切りにくくなりますが、なんとか回避して切断に成功しました。本体ケース・表カバー・基盤と三つのパーツに分解できました。案外簡単に成功したので拍子抜けしたくらいです。黒いクズがたくさん出ました。


アンプ部分が解体できたところで、ピックアップをつないで音出ししてみます。手もちのピックアップを見ると片方には黒いケーブルが付いていますが片方はニクロム線がむき出しです。まずこれに手持ちの赤いケーブルをハンダ付けします。
それからアンプ基盤をひっくり返し、入力プラグ部分をよく見ると、案外分かりやすくプラス・マイナスの入力部分が並んでいます。ここにピックアップからの黒線・赤線をハンダで仮付けします。プラス・マイナスの厳密な区分は無いはずですが、ちょっと不安です。そして電池ケーブルに9ボルト電池をつなぎ、ピックアップを金属で(ドライバーで)こすってみます。するとスピーカから「ゴリゴリッ!」という音が聞こえました。どうやらアンプも無事で、ピックアップにもうまく繋がっているようです。これで仕事はもう九分九厘終わったようなもので、あまりの簡単さにまたまた拍子抜けしてしまいました。
これらの内蔵パーツをネックとボディの上に載せ、いろいろいじってみます。するといろいろなことが明確になりました。
バッテリと出力端子は内蔵できない・スピーカはマグネット部分がはみ出す
ということです。バッテリは胴体に穴を開けて収納することを考えていましたが、出力端子はどこかに入るだろうと軽く考えていたので困りました。下部は基盤で満杯、後部は難しく、上は問題外です。ああでもないこうでもない、といじくっているうちに、パッとひらめきました。
「バッテリと同梱すればいいじゃないの」
そこでバッテリと端子を背中合わせにしてサイズを測り、ボディに開ける予定の穴のサイズを一回り大きく変更しました。


アンプ部分の設営方向が確定したので、木材加工に戻ります。最初に表板のスピーカ穴を開けます。ドリルで上下左右八箇所に穴を開け、百円ショップで買った糸鋸で曲線を裁断します。しかしこれはなかなか難しい・・・糸鋸と言っても5ミリくらいの幅があるので、なかなか曲がらないのです。それでもなんとか丸く切断しました。不細工なところはヤスリをかけて削りました。
続いて胴体部分の穴あけです。こちらは糸鋸では切れそうに無いので最大限ドリルを使います。スピーカのマグネット部分用の丸い穴は深さはいらないのですが、中途半端な穴よりは簡単なのですっかり貫通させることにします。丸と四角、二つの穴のライン上にドリルで可能な限りの穴を開け、わずかに残った部分を糸鋸で切断します。こちらは表板よりはずっと楽でした。しかし切り跡が汚いのでその後の仕上げは面倒でした。小型ノコで削ったりカッターで切り取ってなんとか整形しました。


二つの穴があいたボディに内蔵部分を収納してみます。スピーカはすっぽり入り、電池と出力端子もうまく収まりました。バランスもなかなかいいようです。しかしアンプ基盤はうまくいきません。入力ソケットのカバーが四角く出っ張っていてボディに当たるのです。これを取り外そうとするのですが、金具が入っていて取れません。ニッパーとノコギリで切れ目を入れ、ラジオペンチで引きちぎるようにしてなんとか半分くらい取りました。全部取る必要は無いのですが、不細工です。まあ、見えないからどーでもいいか。


素朴な手作り感を出したければ必要ないのですが、少しでもカッコヨクしたいので塗装します。ボディと表板に必要な穴(ネジ止め穴・基盤止め穴・ピックアップライン穴・弦用穴)を全てあけ、若干の化粧裁断を施し、ネックには紙とテープでマスキングし、縁側で銀色スプレーを吹き付けます。
風が巻いていて、かぶり気味です。一回目は塗料が流れてしまったので新聞紙でふき取って修正しました。一応縦横斜めからまんべんなく吹き付けます。天気がよくて日差しが強いのであっという間に乾きます。どうせ本物ではないので、汚れが見えない程度に二回塗装して終了。この銀色スプレーも百円ショップで買ったもので、もう何度か使用しています。ペコペコのブリキ風でなかなかいい味を出しています。


いよいよ組立作業です。表板にスピーカを貼り付けます。元のように金具で取り付けるにはスペースがなく、小さいボルトナットもないのでガムテープを使います。
次にピックアップを取り付けます。写真は下にありますが、ケーブルを表板に通してからアルミ缶を切って作ったケースに入れ、ホッチキスで停めます。そして裏から出ているケーブルをアンプ基盤の入力部分にハンダ付けします。この作業が一番重要です。しかし狭い空間にゴリゴリ押し込むので何度もハンダが外れてしまい、その度に表板を開けて付け直しになりました。ケーブルもこすれて接続部分が切れてしまうことがありました。
アンプ基盤は一箇所だけネジ止め穴があるので、そこを木ネジで停めます。ナットがないので元のプラスチックケースの一部を切り取って使いました。一箇所だけではグラグラするので片方の端をガムテープで止めます。なんとか狭い隙間に入るだけのサイズに収まりました。
実は側面板を取り付けるときに位置を間違い、少し高めに付けてしまったので表板がネックの下に入らなくなりました。仕方なく、一生懸命削ってなんとか押し込みました。このおかげで多少は高さが稼げたようで、結果的にはよかったと思います。ただし、取り外し・取り付けは(特にストリングを全部外さずにやるとなると)苦しくなりました。


バッテリーと出力端子をボディ穴に押し込み、組み立てた表板を貼り付けます。するとほとんど完成です。この状態で持ってみるとすごく軽いのです。ほとんどウクレレ?
全体のバランスもスタインバーガーにスピーカをつけたような感じでなかなかいいです。まず思い出すのはボ・ディドリーが使っているようなシガーケース・ギターです。ギターを買えない黒人たちが葉巻ケースに穴を開けてネックを付け、ギターにしたというアレです。箱のサイズはかなり小さいですが、ネックに四角い箱が付いているイメージはシガーケース・ギターが一番近いようです。
問題はいくつかあって、ピックアップの上下位置がずれていて、高音部がうまく入らない、さらにピックアップの取り付け高さがちょっと高めで弦高を下げられないというのが最大の問題のようです。それはまた調整するとして、とりあえずヘッドにペグを取り付け、ブリッジを入れて弦を張ります。


左がほぼ完成したギターです。この状態で適当にチューニングし、音を出してみます。ちょっとポコポコした響きですが、少なくともアコースティック並みの音量が出ています。これならモバイルギターとして実用になるレベルだと思います。苦労が報われてホッとするとともに、思い切り祝杯を挙げたい気分になりました。
もう一度チューニングをやり直し、普通に持って弾いてみますと、さすがに小さすぎて持ちにくいのです。ネックが長いのでウクレレのようにはいかず、やっぱり腰に抱える必要があります。ストラップを付けるか、膝に抱えるためのアタッチメントが必要なようです。そこで針金ハンガーを切断してホルダーを作りました。これを錐でボディに開けた穴に差し込んで抱えてみます。ちょっとぐらつきます。針金の長さを調節し、なんとか使える形にしました。
このギターの特徴はフルサイズだということで、演奏法が普通のギターと同じです。ミニギターだとチューニングが違っていて、特にハイコードは思うような音が出ないという欠陥があります。このギターはオープンチューニングにしてボトルネックで演奏するなど、やりたいことが完全に出来るというわけです。
ちょっと不細工なのは上から見たところ(写真右)で、穴が開いています。まあ、風通しがいいということで。(笑)


下から見ると(写真左:ちょっと写りが悪い)三つのボタンが並び、使えないダミーの入力ジャックが見えます。その右側にはスピーカが見えます。こちらもかなり風通しがよろしいようです。
裏側(写真右)を見ると、左からネックの繋ぎ目固定パネル、中空穴:上が9ボルト乾電池、下が外部出力ジャック(左)とACアダプタ端末、スピーカのマグネット部分と並んでいます。この外部出力ジャックに普通のアンプを繋ぎますと、かなりいい音がします。基本的にピックアップの性能が高いからです。ただし、プラグを押し込む時に内部の配線を圧迫し、故障してしまうことがあります。どうしたもんだか、と悩みます。固定できればいいのですが。
乾電池は取り出すことが出来、簡単に交換可能です。一般にこうした電池は寿命が短いようです。移動などの場合はここを布ガムテープなどでふさがないと、電池が外れてブラブラしてしまうかもしれません。


ストラップを付けて弾くとこんなフォームになります。なんとなく、ギターというよりも三味線みたいな姿です。それほど弾き方に変化はないのですが、ローコードが遠い気がします。不必要にハイコードを使ってしまうかもしれません。
ネックの特性はエレキギターそのものなので弦間が狭く、あまり指弾きにはむきません。かといって音がポコポコしているので派手なエレキギター的演奏も出来ません。まあ、これはそういうものなんだ、と諦めてそれなりに弾くしかないようです。


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