2015.09.05

午後、エリザベト音大まで「宗教音楽・珠玉の調べII」を聴きに行ってきた。仏教賛歌混声合唱団コール・スガンディとエリザベト・シンガーズと聖歌隊の合同コンサートである。

・・・仏教の方は声明で始まり、キリスト教の方はグレゴリア聖歌で始まる。いずれも聖典や聖歌を読む時の節回しが様式化されたもので、良く似ている。音程が言葉に従って動き、メリスマ(細かい節回し)が付く。

・・・仏教の側はそれに続いて浄土真宗に基づいた合唱曲「仏像のうた」を演奏した。まあ歌詞の通りの感じでちょっと眠くなった。

・・・キリスト教の方は、ジョスカン・デ・プレのミサ曲から平和の賛歌(Anus Dei)。輪唱が美しい。現代曲からアルヴォ・ベルトの曲。これは面白かった。音がこだまのように扱われている。一つの声部が一つの音を出すと、直ぐに他の声部がオクターブ上とか下とか、関連する音で答える。その繰り返しから大きな教会の内部を感じさせる。解説によると「鈴鳴らし様式」という名前が付いているらしい。基礎となる旋律はグレゴリア聖歌らしい。次のウルマス・シサクスの曲「グロリア・パトリ」も面白かった。今度は一つの声部が一つの音を伸ばすと、それに協和する音を他の声部が出して、それと協和する音をまた他の声部が出す。作られている和音が少しづつ変わっていく。解説によると、こういうのをミニマリスム様式というらしい。5音音階に基づいている。ほとんど旋律らしいものも無いのだが、最初から最後まで聴き入ってしまった。

・・・最後の部はまずバッハのロ短調ミサ曲から最初の方と最後の方をオルガンで演奏した。こういう状況でバッハを聴くとバッハの特異性が目立つ。つまり拍節感である。ドイツ語のせき切った感じの短い旋律を使ってポリフォニーを構成している。次はオルガンの伴奏で聖歌隊も加わって全員で2曲合唱。鶴見正夫の詩に萩久保和明が作曲した「地に平和を」と大木惇夫の詩に佐藤眞が作曲したカンタータ「土の歌」。後者は特に劇的な構成である。題名を見るだけで大体想像が付くだろう。「農夫と土」「死の灰」、3曲省略して、「地上の祈り」「大地讃頌」。

・・・ところで、このセシリアホールはざっと1500人位入ると思われるが、ほぼ満席であった。いつもとは客層が違う。音楽ファンというよりは信仰の人達という感じで、大体夫婦である。年齢も平均すると60歳近いだろう。「広島はこれでも都会なんだなあ、いろんな人が居るなあ。」と思った。

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