2015.08.12

      日経ビジネスオンラインの記事「なぜ政党政治は太平洋戦争を止められなかったのか」は井上寿一氏と筒井清忠氏の解説である。

・戦前の憲法下で軍隊が天皇に直属していて、内閣がコントロールできなかったということが問題とされているけれども、内閣もまた天皇に直属していて、本来は軍隊がコントロールできない筈であった。軍人は選挙権を持っていない。外交権も勿論無い。大恐慌後の農村の疲弊に対する国内政治への不満、軍縮条約への不満、国民が軍隊を蔑視する事への不満。これらがその後の軍部の暴走の要因であり、軍部は戦争を起こす事で国民の支持・喝采を獲得し、それが結局2つの政党に本来の役割を忘れさせた。

・政党は善玉、軍部は悪玉――は間違い
http://nkbp.jp/1guTM7H

・政争が激しく“大連立”できず
http://nkbp.jp/1guTNIC

・「とにかく政権を倒せばよい」――安易な倒閣が政党の自壊を招いた
http://nkbp.jp/1guTMnZ

      日経ビジネスオンラインの記事「知られざる昭和陸軍のキーパーソンたち」:川田稔と井上寿一の解説。
満州事変→日華事変→インドシナ攻略に至る陸軍指導部の覇権争いを記述している。陸軍という軍隊組織は必ずしも上位下達ではなく、中堅幹部が策略を巡らせて上層部の首を挿げ替えたり、勝手に行動したりしていた。下克上である。世論の動向を見てそれが追認されてしまう。こうしてみると、対外侵略という行為が近代国家としての合理的な戦略判断ではなくて自然発生的な感情と組織内の派閥争いで生まれていた、ということになる。ただ、それを自己正当化する根拠はいつもそれぞれが思い描いていた天皇制であり、国体であったが。

・陸軍・宇垣派:満州事変の拡大を一度は抑え込んだ男たち
http://nkbp.jp/1guTNIG

・満州事変の進路を変えた犬養内閣の陸相人事
http://nkbp.jp/1guTMo4

・武藤章:日中戦争と太平洋戦争の引き金を引いた男
http://nkbp.jp/1guTMo6

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