2019.05.29
団まりな『性と進化の秘密』(角川ソフィア文庫)を読んだ。進化と発生の良い勉強になった。種の本質は DNA だけではなくて、進化の全歴史を背負った細胞全体である、というのが細胞主義者 の彼女らしい。

・・生物は元々ハプロイド(一倍体)だったのだが、飢餓を乗り越える為に細胞同士が融合した。その後また独立する時にいろんな倍体(同じ機能の DNA が複数ある細胞)が出来て、その中から淘汰されて生まれたのがディプロイドで、複雑な細胞分化が可能になって、多細胞生物が誕生したのだが、細胞分裂の回数に限界が生じた為に、減数分裂をしてハプロイドを作る途中で、DNA の修復が行われて、リセットされる、という生き方が選択された。というかそういう生物が子孫を残した。細胞の分化が更に進み、ハプロイドに戻る為の分化をするものが生じて、それを再融合させるようになった。やがて、再融合した後の生長の為に片方のハプロイドを大きくして、他方のハプロイドを単なる DNA の運び屋とするようになった。これが雌雄の始まりである。爬虫類までは卵子が巨大化し、鳥類もそれを引き継いだ。細胞分裂のやり方も効率化された。哺乳類に至って、再融合後の卵の保護を母体で行うようにして、卵が小型化され、細胞分裂もやり方も元に戻った。という感じ。

・・男女の差異については、基本形が女であって、発生の途中で Y 染色体上の性遺伝子が発現されて、以後ドミノ式に男になるから、これが途中で阻害されると、中間的な性が出来上がってしまう。(特には書いていないが、阻害要因として環境ホルモンもある。)元々性別というのはそれほど明確なものでもない。進化の長い来歴の中で分化していって、いわば連続した2峰分布のようなものである。その生物が環境に適応する中で、明瞭にもなるし曖昧にもなる。だからまあ、分布の何処に相当する人もそれぞれの存在理由がある、ということであろう。
 
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