2008.11.02

    夕方バスで街に出た。丁度餃子祭とジャズ祭をやっていて、久しぶりに街中が賑やかだった。夕食はスパゲッティで済ませてから、文化会館小ホールでの栗田智水フルートリサイタルを聴きに行った。宇都宮大の教育学部出身で、途中フランスに留学して、帰ってきて音楽教師をやりながら演奏もしている。今回初リサイタルということでパリ・エコール・ノルマル音楽院に留学中に個人指導を受けていた瀬尾和紀をゲストに迎えて、伴奏も益子出身でリヨン在住の福田純子を呼んでいる。小ホールは満席で売り切れ。前もって買っておいて良かった!

    最初がC.P.E.Bachのソナタト長調(w.133)で、選曲としてはまずまずであるが、やや緊張気味か、ちょくちょくミスがあったし、息が切れ気味でフレーズの終りが纏まらない。優雅さが出ていない。

    次はグリュックの精霊の踊り。前半はもう少し弱弱しく吹くべきだと思う。後半に到って注意力散漫になったか駆け上がるパッセージでミスがあった。僕も注意していないとよくやるミスであるが、ちょっと驚いた。

    次はフォーレのシシリアーノ。これもあまり雰囲気が出ていなかった。息継ぎが随分多い。緊張のためなのか、それとも呼吸に問題があるのか?

    次はドップラーのハンガリア田園幻想曲。これはちょっと引っかかるところもあったが、とても良かった。こんなに難しい曲を吹けるのに!本番というのはむずかしいものである。

    前半最後におしゃべりが入った。この人はニコニコしているととても可愛いのに、演奏を始めると途端に怖いくらい無表情になる。喋ると今風の女の子に変身する。3変化!さていよいよ瀬尾和紀が登場して、ドップラーのアンダンテとロンドOP.25をDUOで演奏。瀬尾さんは髭を生やしていて何となくジミー・ゴーウェイを小さくしたような感じになっていた。一つ一つの音を実に丁寧に注意深く吹いているのがとても印象的。浮ついて流れていく栗田さんと好対照でとても勉強になった。でも二人合わせると曲がとても生き生きとして楽しかった。

    後半はまずP.サンカンという人のソナチネで、ぐっとラベル風の洒落た曲である。何だか生き返ったような演奏であった。さすがフランス留学。  最後はフランクのソナタイ長調。これは大曲で、最後はやや疲れが見えていたが無事こなした感じ。

    アンコールは3曲。知らない曲ばかりであったが、さすがにリラックスしていてとても良かった。瀬尾氏がピアノの伴奏もしていた。

    ところで、実はピアノ伴奏が素晴らしくて、半分以上はもっぱらピアノを聴いていたのである。まだ学生であるが、合わせ方が絶妙な上にとても表情が豊かである。フランクのソナタの途中で楽譜めくり係りがミスをして一拍分音が抜けてびっくりしたが、直ぐに立ち直り、今度はめくった楽譜が歪んでいて直すように指示したところ間違えて前のページに戻されてしまい、どうなることかと思ったがさっと自分でめくって事なきを得たかと思うと右手のミスタッチが一箇所出てきた。しかしすぐさま立ち直った。キリリとした風林火山に出ていた由布姫役の柴本幸みたいな姿で印象深い。2006年に宇都宮で初リサイタルを開いていて、そのときのCD(CD-R)を売っていたので購入。やはりなかなかのものである。バッハのパルティータ2番の次に、リヨンでの同級生と思われる桂鉉燦(Hyunchan KYE Ranfrei)の曲の献呈初演が入っていた。なかなか面白い曲である。シューマンの幻想曲Op.17、ショパンの舟歌Op.60、というメインの曲の前においてプログラム全体に緊張感を与えている。
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