2019.09.29
 今年の『日本フルートフェスティバルinヒロシマ』は40回記念ということで、考えてみたら、フルートアンサンブルの様々な面がうまく代表されているような曲の選定だったなあ、と思う。

      合同でのワーグナー『ニュルンベルグのマイスタージンガー序曲』で始まり、大オケ(アマチュア)の八木澤教司『フィオリトゥーラ』ディズニーの『パートオブユアワールド』と続いて、小オケのやった広瀬量平『フルートオーケストラの為の典礼風舞曲「雨乞い」』が一番心に沁みた。上野星矢さんのシャミナード『コンチェルティーノ』は、難しいので吹く気になれないけど、確かに名曲である。大昔、オタワに滞在していたとき、市役所のホールみたいな処でアマチュアの演奏を聴いた時の感動を思い出したが、勿論それよりは洗練されている感じ。アンコール、テレマンの『無伴奏フルートの為の12のファンタジーから10番』も即興的な編曲を入れていてなかなか洒落ていた。最後は合同でガーシュイン『パリのアメリカ人』。最後のアンコール、モーツァルト『アンダンテ』に上野星矢さんが再登場して、なかなか粋な感じで良かった。関谷弘志さんの指揮も解釈で勉強になった。

      翌日は疲れが溜まっている感じ。難しい処をしつこく練習したので、いまだに『パリのアメリカ人』の断片的メロディーが頭を占める。確かに、こうやってガーシュインのパリ経験を今の時代になって追体験しているという事かもしれない。様々な対旋律をいろんな楽器編成で手を変え品を変えて飽きないように組み立ている。それをフルート族だけでやるのだから、聴いている人はどう感じただろうか?僕自身はこれだけ練習していてもやはりあちこち間違えるけれども、そういう部分はあまり影響無い感じである。これだけ人数が居ると、大きな音が要求されているところを頑張って吹けば足りるという気もする。勿論練習しておかないと曲の流れが判らないから、入れないという事ではあるので、まあ、曲の理解のために練習してきたようなものである。アンサンブルには身体に染みついた演奏技術で反射的に適切な表現をする、という側面と全体を俯瞰して自分のパートを位置付けるという側面が必要で、前者は熟練者でなければ相当な繰り返し訓練を必要とするし、後者はなかなか自分で勉強するのは大変なことなので、現場で指揮者や指導者に教えてもらう方が早い。いずれの側面においても、今回は自分の限界を感じた機会ではあった。企画側としては、こうしてアマチュアに舞台経験を楽しんでもらって聴衆層を拡げる、という大きな意味があるのだろう。フルートメーカー展示室も、出演者だけでなくお客さんも沢山来られていて盛況だった。


 
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