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空の青

 

空の青、

そのはるけさの向こうで

小さな光たちに共鳴するかすかな音。

その音が

苦みの滲んだいにしえの記憶とともに

澄んだ透明な大気の中に降り注ぐ。

 

そして、青い空の下では、

踏みしだかれた夢の数々を

何ものでもないものたち、誰でもないものたちが拾い集め、

孤独な求道者たちは

打ち壊された世界の幻影を

さらに小さく砕いている。

 

地上で生み出された幾多の混乱は

瓦礫となって広大な大地の上に積み上がり、

敵意に満ちたまなざしが

混沌の渦巻く都市の中から次々にまき散らされ、

天を仰ぐものたちの慟哭は

ただ静かに燃え上るほかなかったからだ。

 

風を悼み、

荒野のただ中で燔祭をあげる

ぼくの仲間たちよ。

悲しみが染み込んだ世界の中で

ただ石を削り続ける

孤高の仏師たちよ。

さまざまな欲望の氾濫する遊星の上で

誰がうつむいたものたちの声を

濁流のごとき時間の中から拾い上げるのか?

誰がひびの入ったこの世界の断点から

真なる音を響きださせるのか?

 

小さな生き物たちは息をひそめて天を仰ぎ、

置き忘れられた石たちは

ごうごうと風の吹き抜ける荒涼たる大地に

黙ってうずくまっているだけだ。

 

世界を創造した神々は

どんなまなざしでこの世界を見つめているのか?

世界を破壊する聖なる神は

どんな思いでその時を待っているのか?

 

、、、、、、、。

、、、、、、、。

空の青、

そのはるけさの向こうで、

けれど、透明な光が微かな夢を紡ぎ出している。

 

ぼくは石を打ち鳴らす世界に還るだろう。

ぼくは空の青に心を反照させるだろう。

世界にとどろく轟音が青い空に瓦解する日には、きっと。

 

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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第7詩集『架空世界の底で』