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HIROSHIMA
その日、無数の天使たちが
おびただしい数の天使たちが広大な宇宙から集まり、
その地に降り立った。
そして、瓦礫と化した街の中で、
うめき声に埋もれてゆく
焦げ付いた言葉の一つ一つを拾い集め、
黙って死者たちを運ぶ列に付き従った。
ある天使はただ慟哭し、
別の天使はただ天に祈った。
水を求めて死んでゆく誰でもない者たちの声、
土くれと化した無数の夢たち、
もはやたたえるものとてなく
ただ名前がかき消されるだけの光景!
夜になって天使たちは川辺に集まった。
おぞましい恐怖に天の荒涼さが覆いかぶさり、
川面は灰となった無数の魂で荒れ騒いでいた。
この遊星を悼むつぶやきが
天使たちの朗誦となり、
重い弔鐘の響きが
閉じた空間に沈み込んだ。
けれど、何も癒されはしない!
ひとりの天使が飛び立って、小高い丘の上に立ち、
一発の閃光によって廃墟となった街をひとり見下ろした。
そして天使は土の上に曼陀羅を描き、
結晶化することのない悲しみをその地に封印し、
黙ってひとり世界を出て行った。
残った天使たちは
今なお川のほとりにうずくまっている。
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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第7詩集『架空世界の底で』