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十二月の太陽

 

滅び去ったマヤの遺跡、

緑の野に生ぬるい風が吹き渡り、

十二月の太陽がジャングルの上に輝いていた。

空には黒い鳥が飛び交い、

涯しない沈黙が広野の上に横たわっていた。

 

かつてこの地を支配した奇怪な顔をした神々、

十二億六千万カトゥンの時を

星々の運行と共に維持し続けて来た巨大な暦、

祭壇の上ではチャックモールが

もはや生贄の捧げられない巨大な時間を見やっていた。

 

遺跡に照りつける十二月の太陽、

延々と続く緑のジャングル、

そのただ中の真っ白な時間の中に取り残された

神々の祭壇、天文台、そして、

風の中に掻き消えた祈りの声。

 

けれど、神殿の頂では、

ぼくたちの時間がゆっくりと砕けた。

一切が四十三億二千万年の時の渦に飲み込まれ、

遊星の上でのたあいない戯れが

宇宙の根源たるビッグバンからの波動の上で

さざ波のように揺れている。

 

神々の虚ろな手が

振り上げられたまま止まっている。

西のジャングルに

大きな夕日が沈もうとしていた。

 

(マヤの遺跡にて)

 

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向殿充浩 (こうでんみつひろ) / 第7詩集『架空世界の底で』