離婚届けの偽造
弁護士河原崎法律事務所ホーム > 刑事事件 > 離婚届けの偽造
Last Updated 2015.6.9mf
弁護士河原崎弘
相談
私は3年前に離婚しました。そのとき、相手は行方不明だったので、離婚届に自分で相手の署名押印もして、提出してしまいました。
友人から、文書偽造だと言われました。今でも罪になるのでしょうか。
弁護士の説明
離婚届の際、相手の署名、捺印覧に無断で記入したり、捺印すると、有印私文書偽造罪にあたります。それを区役所、市役所に提出すると、偽造私文書行使罪、公正証書原本不実記載罪に当たります。これらの罪の最高刑は懲役5年です。
そうすると、公訴時効は5年です(刑事訴訟法250条4号)。検察官は、まだ、起訴できます。
この状態で、あなたが結婚すると重婚罪となります。
ただ、警察も、検察官も、誰かが告発してくれないと犯罪を認識できません。公務員には、告発義務がありますが、犯罪を認識する機会がなく、この場合は、相手(妻)からの訴え(告発)がないと、偽造の事実がわかりません(刑事訴訟法239条参照)。
その後
相手は、その後、再婚しています。
弁護士の説明
しかし、相手(ある意味で被害者)は再婚しているので、離婚したことについて不満はなく、離婚を認めたのであり(追認)、今さら、訴えないでしょう。 もう、大丈夫です。
判決- 名古屋高等裁判所昭和36年11月8日判決
重婚罪に関する規定が、民法の諸規定と相俟つて、そして、その側面から法律婚としての一
夫一婦制を維持強行するための規定であることを考えれば、本件の如く前婚が婚姻当事者一方の意思によらず、偽造若は虚偽の協議離
婚届により解消し、従つて、戸籍上その婚姻関係が抹消された場合でも、その婚姻関係が適法に解消されない間に、重ねて他の婚姻関
係(勿論それは法律婚であることを要件とする)を成立させれば、刑法所定の重婚罪が成立するものと解すべきである。
蓋し、斯る場
合、前婚の解消が当事者(一方又は双方)の真意に合致しないものである以上、仮りにそれが犯罪(私文書偽造、同行使、公正証書原
本不実記載、同行使等)又は犯罪的手段により戸籍上の婚姻の記載が抹消されたとしても、その婚姻の解消は無効であつて前婚は、そ
れが適法に解消されない限り、なお法律婚として有効に存続するものというべく、従つて、この間において重ねて他の婚姻関係を成立
させれば、ここに法律婚として二個の婚姻関係が重複して成立するわけで、法律の所期する一夫一婦婚制度は、破壊されることになる
からである。
登録 2006.5.28
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 電話 3431-7161