前科があっても弁護士になれますか
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Last Updated 2015.5.26mf
相談
私は、法律を勉強しています。友人に誘われて、先月、大麻取締法違反(自己使用目的所持)により逮捕され、懲役8ヵ月執行猶予2年の有罪判決を受けました。私は、弁護士を目指して勉強をしておりました。この有罪判決によって欠格事由に該当してしまいました。
弁護士法に記載されているとおり、やはり弁護士登録ができないのでしょうか。刑法第27条に執行猶予期間を経過すれば、刑の言渡しの効果は消滅するとあります。また、刑法第34条の2では、刑の言渡しの効力は、10年で消滅となっています。私の場合は、どちらを参考にすればよいのでしょうか。
相談者は、悩んだ末、法律事務所を訪れ、弁護士に尋ねました。
回答
弁護士は、次の通り説明してくれました。
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罰金以上の有罪判決が確定すると、各地検は被告人本人の本籍地の市区町村に既決犯罪通知書を郵送します。市区町村は通知書に基づき名簿を作成し、選挙資格の調査、禁固以上の刑を欠格とした公務員採用の際の調査など、官公庁からの犯罪歴照会に使用しています。
従って、司法修習生になる段階で前科は判明します。
- 国家公務員法38条(国家公務員の欠格事由)
司法修習生は国家公務員です。司法試験に合格しても、執行猶予期間中は、司法修習生になれません(司法修習生の身分取得時のことではなく、その前の採用審査時に執行猶予期間が終了している必要があります)。
刑法27条で、執行猶予期間を経過すれば、刑の言渡しの効力はなくなり、欠格事由はなくなります。
まず、司法修習生に採用される時期に、無事、執行猶予期間が経過して、欠格事由がなくなっている必要があります。このときは、厳重に注意を受けるでしょう。罰金刑の場合でも、厳重に注意されます。
前例としては、学生運動に伴う公務執行妨害罪の有罪判決を受けた司法試験合格者が、司法修習生に採用されています。
- 弁護士法 7条(弁護士の欠格事由)
司法修習終了後は、検察官、裁判官には採用されないでしょう。執行猶予期間が経過しても、そのような前科がある人は裁判官、検察官には相応しくないからです。
しかし、弁護士法では「禁固以上の刑に処せられた者」が欠格事由です。執行猶予期間が経過すれば、刑の言い渡しは効力を失ないますので、弁護士登録の際に、執行猶予期間が経過すれば欠格事由はなくなります。従って、弁護士にはなれます。
前科が実刑であるときは、刑法第34条の2により、10年経過しないと言い渡しの効力はなくなりません。刑の執行終了後10年経過しないと欠格事由となります。
しかし、実刑に処せられた場合には、10年経過したとしても、弁護士会が登録を認めるか疑問です。
司法修習を終了した場合は、通常、ほぼ、自動的に弁護士登録されますが、あなたの場合は、審査された後に登録されるでしょう。学生運動で有罪判決を受けたが、弁護士になった人は沢山います。
登録 2006.8.25
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