結婚詐欺犯と結婚した場合
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2015.6.9mf
相談
私は、35歳。結婚した後、夫がインターネット事業の運転資金にお金が必要だと言いますので、何度もお金を貸しました。合計500万円になります。
でも、夫は、インターネット事業などしていないようです。お金は、競輪などに使ったようです。私は、結婚詐欺だと思いますし、周囲も同じ考えです。
前の奥さんからも電話があり、結婚詐欺だと言われています。しかし、刑法では、詐欺罪や窃盗罪などを、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で犯したときは、犯罪にならないと聞きました。
これは、本当でしょうか。回答
結婚を餌に相手からお金をとることは結婚詐欺として、立派な犯罪です。
しかし、犯人と被害者が結婚していると、難しい問題が生じます。刑法には、詐欺罪や窃盗罪などを、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で犯したときは、処罰できないとの規定があるからです(親族相盗、刑法244条1項)。
結婚が有効なら、親族間の犯罪の規定が働き、詐欺罪で処罰することはできません。
婚姻は、「人違いその他の事由により当事者間に婚姻をする意思がないとき」は無効とされています。しかし、実質上、夫婦生活を送つているような場合について、婚姻が無効になると解すべきかも、難しい問題です。なお、判例は、事実上の夫婦(内縁)には、刑法244条1項は適用しないとしています。
短期間に、次々と似た手口で、婚姻、離婚をくり返し、相手に対し、(金を取り)詐欺を働いていたような場合は、結婚意思がないとの認定ができそうです。事実、そのような趣旨の判決があります。
詐欺罪で、告訴してみたら、いかがでしょう。
結婚詐欺の民事上の問題は 結婚詐欺 を参照。
判例
- 東京高等裁判所昭和49年6月27日判決(判例タイムズ320号305頁
)
被告人は、真実右渡部エミ子、長谷美智子と結婚して継続的に夫婦生活を営む意思はなく、同女らとの婚姻届を所轄区役所に提出しても、いずれ時
期を見はからつて離婚離籍の手続をする意思であり、婚姻届を提出するというのは、専ら同女らをして、被告人と正式な婚姻関係
にあり継続的に夫婦生活を営むことができるものと信用させ、その信用関係に乗じ、同女らを欺罔して金員を騙取するための手段
としてなされたものであることが認定できるのである。
そして、渡部エミ子との間には、所轄区役所において、昭和47年6月17日婚姻届をし、同年7月1日離婚届をしたこと、長谷
美智子との間には、所轄区役所において、同年10月6日婚姻届をし、同年11月8日迄戸籍薄上夫婦として記載されていたこと
は、関係証拠上明らかであるが、右両女との婚姻届はいずれも被告人が前記の意図のもとに、財物騙取の手段としてしたものであ
り、戸籍上の婚姻関係を作為したに過ぎないものであるから、被告人において、右両女と婚姻の意思のなかつたことはもとより、
同女らにおいても被告人の真意を知つたならば被告人といずれも婚姻する意思はなかつたもので、婚姻はいずれも無効というべき
であり、たとえ、その婚姻の無効が訴により明確にされない場合であつても、前記の如く財物騙取の手段として戸籍上の婚姻関係
を作為したに過ぎない場合においては、戸籍簿の外観上婚姻関係が認められるとしても、その戸籍薄上の婚姻関係の存続する間に
被告人が渡部エミ子、長谷美智子から金員を騙取した原判示第一、同第二の(二)の各事実について、刑法21条、244条前
段の規定を適用し刑の免除をするということは、もともと夫婦間の財物の得喪に法が立ち入らないとした前記法条の趣旨にも反す
るものというべく、これと同旨に出た原判決には、記録上所論の如き事実誤認のかどの認められないのはもとより、刑法251条、
244条の解釈適用を誤つた違法はない。
法律
刑法
第244条(親族間の犯罪に関する特例)
1 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、
その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
2004.11.22
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