コクラノミコン・オープニングアニメーション
制作スタッフを代表して:

                     トイメディアデザイン代表 森山弘樹



はじめに

 私はトイメディアデザイン代表の森山弘樹と申します。
 第35回日本SF大会「コクラノミコン」において、その大会開会式におけるオー プニングアニメーション映像制作の総責任者を務め、現在この作品の制作者著作権の 代表者となっています。
 私もまた、今回のコクラノミコン管理委員会が菱田氏に対して起こした不正請求に ついての裁判と無関係な人間ではありません。 今回の裁判においては、「日本SF 大会」という自主運営イベントにおいて、それを盛り上げる目的でクリエイター達が 自費を投じて制作した自主制作オープニングアニメーションにまで制作費の請求が行 なわれていたという前代未聞の事実が判明しています。 しかも、この請求は制作を 指揮してきた私およびオープニングアニメーション制作スタッフの預かり知らない所 で起こされたものです。
 私は、コクラノミコン・オープニングアニメーションの制作を推進してきた者とし て、その制作の経緯およびお金の流れを全て管理し把握してきました。 その上で今 回判明した菱田氏のオープニングアニメーション制作費の請求が事実に反することを 証明するとともに、自主制作アニメーション制作者として今回の裁判についてコメン トさせていただきたいと思います。

コクラノミコン・オープニングアニメーション制作のいきさつ

 第35回日本SF大会コクラノミコン。 既に開催から2年近くが経過したこのイ ベントには、感慨深い思い出が詰まっています。 私を含めた制作スタッフは、この 栄えある日本SF大会において開催式を彩る「オープニングアニメーション」の制作 のチャンスを与えられ、見事にその大役を果たしたのですから・・・。

 私にコクラノミコンのオープニングアニメーション制作の依頼が来たのは1995 年の正月頃でした。 友人である寺西氏から彼が北九州で日本SF大会を開催するこ とを教えられ、その時に「ぜひオープニングアニメーションをCG映像で作って下さ い!」とお願いされました。
 その制作が正式にクランクインしたのは1年後の1996年の正月でした。 私は 監督を私の事務所のデザイナーに依頼し、大阪芸術大学のアニメーション映像制作グ ループの全面的な協力を得て、同チームのメンバーを中心とした作画スタッフが集結 しました。 さらにCG特殊効果プログラム開発やビデオ編集等の技術面を大阪工業 大学グラフィック研究会のメンバーが担当し、アニメーションの制作がスタートしま した。 私もテクニカルディレクターとしてオープニングアニメーション制作に参加 し、3DCGツールの開発やCG映像収録時の機材や編集場所の手配などを担当しま した。

 そして大会初日、日本SF大会に久々のオープニングアニメーションが復活しまし た。 大画面上映に耐えられる高品質な映像は、アニメーション制作スタッフ達の野 心的かつ献身的な努力によるものであります。 また技術スタッフもこの努力に報い るべく、プロのCG映像制作と同様に専用の特殊効果プログラムを独自開発したり、 プロ用VTR「ベータカムSP」を使ったマスターテープ編集を行ないました。
 オープニングアニメーションの上映終了後、会場は割れんばかりの拍手につつま れ、私達制作スタッフは感無量の感慨に浸りました。 上映後、運営スタッフから 「あのオープニングアニメーションが、大会開催前のもやもやを一気に吹き飛ばして くれましたよ。」と声をかけられたときは、スタッフ一同努力が報われた充実感でい っぱいになりました。 とにもかくにも、コクラノミコン・オープニングアニメーシ ョンの制作と上映は、私達アニメーション制作スタッフ全員にとって記念すべき成果 とともに良き思い出となったのです。

オープニングアニメーションを無報酬で提供

 しかし、コクラノミコン・オープニングアニメーションの制作は、ここまでのプロ セスを踏みながら映像制作の出費を極力抑え、大会実行委員会には無報酬でこの映像 を提供・上映致しました。 このオープニングアニメーションは、映像制作件名とし てプロが仕事を請け負ったものではありません。 若いクリエイター達が集まり、映 像制作面での出費を極力圧縮した上で自分達の力を出し切って作った記念すべき作品 であると言えます。

 もちろん、映像制作費の圧縮については、パソコンを活用することでそれに対応し たことや、パソコンの能力向上がビデオCGアニメーション制作のコストを一気に下 げたことによる影響が大きいのですが、その一方でプロ用ビデオ機材を「SF大会の オープニングアニメを作る」ために無償で提供して下さった協力者の方々のおかげで、 高品質な映像を破格の制作費で制作することができました。
 最終的にはのべ五十名を越える多くの方々のご協力と援助を得て、ビデオ収録およ び編集には1円の出費もなく、完璧なマスターテープをあげることができました。  音楽についても、プロの作曲家の御好意により完全な書き下ろしオリジナル曲をつけ ていただきました。 作品制作にご協力くださいました皆様にこの場を借りて御礼申 し上げます。

 それでは、私達オープニングアニメーション制作スタッフが何故ここまで出費を抑 えてオープニングアニメーションを作ることにこだわったのでしょうか?
 それは制作スタッフ全員が持っていた意識・・・「自分達が手弁当どこまで面白い CG映像を作ることが出来るか?」という問いへの挑戦であったのかも知れません。  それとともに、「日本SF大会」という、そもそもが利益を追求しない純粋なファ ンのためのイベントを盛り上げる一助として、その運営に参加しているスタッフにも 喜んでもらえる映像を作りたかったという気持ちもありました。
 だから決して「アマチュアだからタダで作った」などという投げやりな制作態度で はなく、制作メンバー全員が責任を分担し、その時点でのベストを尽くした結果があ のオープニングアニメーション作品となったのです。 私達映像制作スタッフは、唯 一そのことを今でも誇りに思っています。

謎のアニメーション制作団体の出現

 しかし、このすがすがしいオープニングアニメーション制作の陰で、運営スタッフ の方々は大きな問題に東奔西走していようとは私達も夢にも思っていませんでした。  さらに、私達がコクラノミコンの成功の一助になるようにと自分達の時間を削って 制作してきたオープニングアニメーション作品を、私達の全く感知しない団体がさも 請負仕事で制作したかのような請求書 が実行委員会に送りつけられていたことを知るに至っては、 さすがに制作者一同この事実に対して憤りを感じずにはいられませんでした。
 菱田氏が大会実行委員会に送り付けてきた請求書 には、最終的にオープニングアニ メーションの制作費用206万円が「アクティブピン」という団体の制作費として計 上されていました。 しかし、この制作費はそもそもどこからも発生していない費用 であり、私達アニメーション制作スタッフが「アクティブピン」という団体に映像制 作を発注したという事実も一切ありません。 このことはコクラノミコン・オープニ ングアニメーションのテロップにも、アクティブピンという団体名が載せられていな いということからもお判りいただけると思います。 もとより、映像制作費を欲する ような団体がオープニングアニメーション制作に参加することは、私達制作スタッフ が許可しませんでした。
 また、今までのところオープニングアニメーション映像は関係者にVHSでしか渡 しておらず、マスターテープはベータカムSPフォーマットで収録されたものを私が 責任を持って管理しています。 アニメーション制作用の設定資料や原画、デジタル 素材は監督がそれぞれ管理しており、これらのもの全てが「アクティブピン」以外の 制作者の手で制作されたものであることの証拠として存在しています。

制作費の請求の内訳とその問題

 コクラノミコン・オープニングアニメーションは前述の通り、無報酬を前提として 私達アニメーション制作スタッフの手でこつこつと作られました。

 しかしながらコクラノミコン・オープニングアニメーション制作費が私の運営する 事務所であるトイメディアデザインに一部入金されているという事実も菱田氏の請求 書に記されています。 これにつきましては、菱田氏の「コクラノミコン・オープニ ングアニメーション制作にかかった費用の清算を行いたい」という申し出を、コクラ ノミコン実行委員会の申し出と思わされたトイメディアデザインが、その費用として 人件費を除き、小倉〜大阪間の交通費および作品収録のためのメディア代の2点合計 132,210円を請求したものであります。 この金額も、元々は自分達で払うべ きものであり、菱田氏の要請を実行委員会の要請と思わなければ請求は行なわなかっ たものです。

 その一方で、アクティブピンの請求したアニメーション制作費206万円は、全く 根拠のない額であるとともに、この値段設定そのものが私達コクラノミコン・オープ ニングアニメーション制作スタッフの行なった仕事に対する評価であるとすれば、評 価された側は必ずしも良くは思いません。 そもそもこのような額を算定して制作費 を回収するなどという発想が、日本SF大会という赤字覚悟のイベントで出てくる事 自体不健全もはなはだしいと思います。

コクラノミコン・オープニングアニメーション制作スタッフを代表して

 いずれにせよ、菱田氏の請求書 にあった「アクティブピン」という団体のオープニングアニメーション 制作費206万円は、オープニングアニメーション制作に関わっ た人間全ての知らないうちに請求されたものであり、最初から「無報酬である」こと を確認して全力で作品制作に打ち込んでいたアニメーション制作スタッフに激しいシ ョックを与えずにはいませんでした。
 今回の訴訟について「裁判という手段に訴えてまで金銭トラブルを解決するのが正 しい方向と言えるのか?」と主張する人がいると聞き及びます。 しかし、このよう な詐欺に等しい行為が堂々と行なわれていたという事実を皆さんはどう受け止められ ますでしょうか?
 日本SF大会におけるオープニングアニメーション作品の制作費が請求の対象に上 がることは有り得る話だと思います。 しかし、その作品を無報酬で自主制作し、完 成させたにもかかわらず、それが知らないうちに知らない団体の仕事とされ、請求が 行なわれているという事実が発覚してしまったのです。 これは自主制作の精神を踏 みにじるような行為であると弾劾されてもおかしくない事です。 私達は、この事実 が犯罪行為であるという事を認める以前に、ごく親しい人間と思っていた人からこの ような裏切り行為を受けたことを何よりも悲しく思います。

 私はコクラノミコン・オープニングアニメーション制作スタッフを代表して、この 問題が裁判のもとに解決される方針を支持します。 それとともに、コクラノミコン 管理委員会への協力を惜しみません。

 最後に、私達はオープニングアニメーション制作を無報酬で行なったことに誇りを 持っています。 そして、この映像作品をコクラノミコン管理委員会の費用救済のた めに役立てて頂くようお願いしております。 現在、コクラノミコン・オープニング アニメーションの代表著作権者はコクラノミコン管理委員会であり、私は制作スタッ フの代表として制作者著作権を統括管理する立場にあることをこの場を借りて皆様に お知らせいたします。

                              平成十年三月六日

                     トイメディアデザイン代表 森山弘樹



森山氏には、このコメントに先立ち、事実関係を記した陳述書を作成していただいております。

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