UPDATED 2002/1/7

★Ken's Cinema Report★

映画の感想のぺージです

2001年9月〜12月の感想のページです。ベースは北九州・福岡の映画館です。

どれを見ますか
[近作の感想] [2001年8月以前の作品の感想] [2000年公開の作品の感想]

最近封切りの作品の感想のページです
上から新しい順です
どれを見ますか。ネタばれがありますので、未見の方は注意してください。

  ball1[ピストルオペラ]
  ball1[冷静と情熱のあいだ]
  ball1[テルミン]
  ball1[おいしい生活]
  ball1[ソードフィッシュ]
  ball1[ムーラン・ルージュ]
  ball1[かあちゃん]
  ball1[赤い橋の下のぬるい水]
  ball1[オー・ブラザー!]
  ball1[GO]
  ball1[エボリューション]
  ball1[リリィ・シュシュのすべて]
  ball1[ターン]
  ball1[ELECTRIC DRAGON 80000V]
  ball1[トゥームレイダー]
  ball1[ラッシュアワー2]
  ball1[コレリ大尉のマンドリン]
  ball1[ブリジット・ジョーンズの日記]
  ball1[檳榔売りの娘 (福岡映画祭)]
  ball1[追いつ追われつ (福岡映画祭)]
  ball1[ファイナルファンタジー]
  ball1[千言萬語 (福岡映画祭)]
  ball1[バラン (福岡映画祭)]
  ball1[レクイエム・フォー・ドリーム]
  ball1[ウォーターボーイズ]
  ball1[酔っぱらった馬の時間 (福岡映画祭)]
  ball1[街の陰 (福岡映画祭)]
  ball1[運転手の恋 (福岡映画祭)]
  ball1[王は踊る]
  ball1[夏至]
  ball1[蝶の舌]



ball1ピストルオペラ
(フジテレビ他/東宝 125分  2001年 )
監督 鈴木 清順
出演 江角 マキコ  ケリー・チャン

 日本でナンバースリーの女殺し屋が主人公。組織の連絡屋を名乗る女に依頼された殺しに失敗してしまううちに組織が混乱してしまい、組織自身がナンバーワンの殺し屋をターゲットにするように指示が出て、彼女は誰もその素性を知らない幻のナンバーワン殺し屋との対決することになる。

 ご存じ、鈴木清順の新作。ストーリーはありますが、あってない様なもの。ストーリーを追いかけると何にも面白くない作品でしょう。映像の美学を堪能すべき作品です。初めて彼の作品を見る人に取ってはちょっとつらいでしょうね。訳が分からないうちに終わってしまうかな。しかし、80歳目前にした監督の作品というのもすごいですね。元ネタは彼の旧作、「殺しの烙印」。脚本は平成「ガメラ」の伊藤和典。
 江角マキコはどうなのでしよう。役柄に合っているのかどうか評価しがたいところです。それに対して山口小夜子の方がすごいです。完全に食ってしまっています。少女役の新人・韓英恵も印象的でした。永瀬はどうかな。最近、この手の作品が多いので…。後、樹木希林もすごいです。ロケ地の選び方も効果的でした。
 しかし、冒頭の東京駅での沢田研二のシーンが強烈過ぎて、その後はもう一つ期待したほどてもないかなというのが率直なところです。

  評価 ☆☆☆☆   (01/12/9)


ball1冷静と情熱のあいだ
(フジテレビ他/東宝 125分  2001年 )
監督 中江 功
出演 竹野内 豊  ケリー・チャン

 イタリアのフィレンツェで絵画修復の修行に明け暮れる青年は、自分のことを愛する女性がいながらも、かつての最愛の恋人のことを忘れることができずにいた。彼女とつきあっていた時に、ひとつの約束をしていた。それは10年後の彼女の30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモ(大聖堂)で待ち合わせということだった。イタリアを舞台にした辻仁成と江國香織によるコラボレーション・ノベルを映画化した作品。 演出は、「眠れる森」「太陽は沈まない」など、テレビドラマ出身の監督、中江功。脚本は、「妹よ」「バースデイプレゼント」などの水橋文美江。プロデュースはもちろん、大多亮。

 別にそんなに見たくて見た訳ではないですが、映画館のポイントカードが貯まって、今年中に使わなければならなかったけれど、「ハリーポッター…」にスクリーンを占拠されていて、他に見たい作品がなかったことと、原作は読んでいないのですが、辻仁成と江國香織は割と気に入っている作家なので、見に行きました。 たまにはこういう邦画も見ておこうかなぁと思ったし…。(言い訳(笑))
 率直な感想は、ちょっと長い作品である気がしました。2時間ちょっとですが、前半がちょっと無駄ですね。主人公の絵画修復の仕事やそれに関わる事件のことをずっと追いかけて描写していますが、そのことと相手の女性のことはほとんど関係がないのです。彼女もミラノに住むようになっていて、接点はあるのですが、いきさつがどうもわからない。後半になってやっと過去のいきさつなどがてできます。おまけに時間がポンポンと飛ぶ話で、一応丁寧に年号や場所が示されてはいますが、なにか連続性がなくて、落ち着きません。後半の学生の頃の話はそこそこいい感じで、ラストに続くところは泣ける?話なので、もったいない感じですね。学生時代を思い出させます。
 ケリー・チャンが日本人役?というのもおかしいのですが、その理由も後半やっと分かります。でも、あれだけ日本語はなせるのに、日本人と英語で会話することもないと思うが…。彼女のことといい、仕事上の事件についても、ミステリーではないので、そんなになぞなぞにすることないと思うけれど…。こういう展開にしているのは、脚本や監督がテレビドラマ出身の人のせいなのかなぁ。原作もそうなのか、読んでみましょう。
 篠原涼子、ああいう女性、居そうですね。演技はちょっと?ですが、役柄はかわいそうかな。。ユースケ・サンタリア、ちょっとくさい役。ENYAの曲も冒頭で何度もかかるとうっとうしい感じです。椎名桔平はいらないかな。マイケル・ウォン、いい人だ。フィレンツェ、いいですね。昔、行き損ねたのですが、また行きたくなりました。ラストのミラノの駅のシーンはさすが、ヨーロッパの駅ならではのシーン。路面電車も鉄ファンにはうれしいですね。でも、ミラノの友人の結婚式をなぜわざわざフィレンツェでしているのかが疑問でした。(笑)
 たまにはこんな作品もいいかな。前の席の女性二人連れがそろって上映前にブーツを脱いでいたのがおかしかったです。

  評価 ☆☆☆    (後半だけなら☆☆☆☆)   (01/12/8)


ball1テルミン
原題 THEREMIN (オライオン/アスミック・エース 83分  93年 )
監督 スティーブン・M・マーティン
出演 レオン・テルミン  クララ・ロックモア

 電子楽器テルミンを発明したテルミン博士。彼は黒人女性と結婚したり、大胆な行動をしていたが、突然姿を消してしまう。彼を継がして女性テルミン演奏家らがロシアを訪れるが…。テルミン博士の数奇な人生を描いたドキュメンタリー映画。

 冒頭、今はなきオライオンのマークが出てきて、ビックリ。ちょっと古い映画なのですね。ドキュメンタリーっぽい作りだから仕方がないのですが、なにかちくはぐな作りをしていますね。何をやい言いたいのかわからない点もあり、途中ちょっと眠たくなってしまいました。博士自体の話は面白いのですが…。
 後、あの機械でどうやって音がなるのかそちらの方も知りたかったですね。ちょっと残念。ブライアン・ウィルソンはともかく、トッド・ラングレンは何しに出てきたのか?(笑)

  評価 ☆☆1/2   (01/11/25)


ball1おいしい生活
原題 SMALL TIME CROOKS (ドリームワークス/ギャガ 94分  2000年 )
監督 ウディ・アレン
出演 ウディ・アレン  トレーシー・ウルマン

 本人は自分は天才であると信じて疑わない落ちこぼれの元銀行強盗と、毒舌家だが上流家庭にあこがれている元ストリッパーの妻。二人とその仲間は結婚25年を機に銀行強盗を企てることになる。ところが、犯罪計画のカムフラージュにと始めた妻のクッキー屋が思わぬところで大繁盛。二人にとて夢だった「おいしい生活」が始まるのだが…。ご存じ、ウディ・アレンの監督、主演による新作。

 毎年一本のペースで作品を作り続けるウディ・アレンの新作です。今回は彼自身の主演であるのがうれしいところです。前作は「ギター弾きの恋」でした。
 まず邦題がいいですね。だいぶ昔、彼が西武百貨店のCMキャラクターだった時代があって、そのときのコピーがまさに「おいしい生活」。糸井重里の作で、コピーライターブーム?の奔りになった言葉でした。今回の作品の意味する所は、上流家庭の生活。前々作の「セレブリティ」に通じるところもありますね。とは言え、担い用はかなりのドタバタコメディみたいなもの。ヴェルサーチで着飾ったアレンの姿を見るのも楽しいですが、相手役のトレーシー・ウルマンがまた絶妙。成金になった夫婦のおこぼれを預かろうとしているのは、最近、この手の役のはまり役のヒュー・グラント。みんないい味出しています。  モチーフになっているのがミセス・フィールズのクッキーですが、久々に食べたくなる映画です。でも、あのクッキー、ちょっと私には重い感じで、何枚も食べると腹に応えますね。
 ラストなどは予想通り?の展開でしたが、これはこれでウディ・アレン節と言えるでしょう。しかし、ちょっと切れがないかなぁ。向こうではドリームワークスの配給というのがちょっと意外ですねぇ。
 ウディ・アレンと言えば、ニューヨークですが、冒頭にテロのお見舞いに対するお礼のコメントがついていました。そういえば、向こうではニューヨーク復興のテレビCMにも出て一役買っているようです。

  評価 ☆☆☆☆   (01/11/25)


ball1ソードフィッシュ
原題 SWORDFISH (20世紀フォックス/ワーナー 99分  2001年 DRS)
監督 ドミニク・セナ
出演 ジョン・トラボルタ  ヒュー・ジャックマン

 離婚裁判に敗れて娘を失って失意の中で生活をしている元凄腕ハッカーのもとに、謎の女が現れる。彼女は銀行に眠る巨額の秘密資金の強奪を企てる知能犯の仲間で、彼を仕事のためにスカウトにきたのだ……。製作はジョエル・シルバー。監督は「60セカンズ」のドミニク・セナ。

 冒頭、アル・パチーノの名作「狼たちの午後」について語るトラボルタ。どういうシチュエーションかと思わせておいて、いきなりの「マトリックス」ばりの見せ場。おいおい、どうするの?と思わせておきますが、色々種あり仕掛けありで観客を惑わせるくれる作品です。キーワードはミス・ディレクション? 
 とはいうものの、おいおいと言わせるような展開で、ちょっと自意識過剰な演出ぶりにはついていけなくなるところもある感じです。予定されたストーリーというよりは、偶然の重なりと思えることの方が多いような…。自分たちでも厄介になったのか、早々とネタをばらしてどうするの?(笑)。
 トラボルタの自信満々の演技とヒュー・ジャックマンのハッカー振りが印象的な作品です。ちゃんとキーボード、叩けているのかな。使われているマシンは意外とデルでした。久々に見るサム・シェパードは何とも情けない役ですね。相変わらすカッコいいのに…。トホホ。
 率直な感想は、今の米国そのまんまの作品。トラボルタがブッシュの様に思えてきますね。テロ退治のためなら何でもするぜ。何がハッピーエンディングだ。でも、9月11日以前にこんな映画を作っていたとは、さすが、ジョエル・シルバーです。

  評価 ☆☆☆1/2   (01/11/24)


ball1ムーラン・ルージュ
原題 MOULIN ROUGE (20世紀フォックス 128分  2001年 SDDS)
監督 バズ・ラーマン
出演 ユアン・マクレガー  ニコール・キッドマン

 19世紀末のパリ、作家を夢見てやってきた青年が、夜を妖艶なショーで彩るナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」の新しいショーの演出を手がけることになったが、ヒロインを演じるクラブの花形娼婦とやがて熱い恋に落ちるようになる。しかし、クラブの改装のスポンサーとなった公爵は、出資の条件に彼女との食事を持ちだしてくる。「ロミオ+ジュリエット」の監督、バズ・ラーマンが描く新感覚のミュージカル・ラブ・ロマンス。

 バズ・ラーマンの新作と聞いて、期待させるもの、十分で鑑賞したのですが、冒頭の20世紀フォックスのタイトルのシーンから笑わせながら映像に引き込まれていきます。(余談ですが、20世紀フォックスって世紀が変わったらどうするのかと思っていたけれど、今のところそのまんまですね。) ちょうど100年前の20世紀に変わりつつある時代の話というのも意味深ですね。その後に続く、タイトルからパリの光景に続く映像感覚もいいですねぇ。映像はとにかく飛ばしまくるので、ついていくのが大変です。「ムーラン・ルージュ」のショーの情景からニコール・キッドマンの登場シーンまでの持って行き方もいい感じです。その後、ちょっと撮り方を替えている気がします。彼女、今までそんなに思わなかったのですが、本作ではとてもいいですね。顔の感じや色の白さの印象的な感じです。
 ミュージカルの仕立てになっているのですが、使われている曲も面白いです。古い曲から新しい曲まで、うまく使われています。エルトン・ジョンのユア・ソングはまともな使われ型として、ライク・ア・バージンとかロクサーヌなどが印象的でした。特にライク・ア・バージンの演出ぶりは大受けしました。あと、キッドマンの部屋で公爵の目をごまかして、出し物のネタを作り上げるシーンも最高。自分で歌も歌っているキッドマンにこういうコメディ的な才能があるとは知りませんでした。
 ストーリーは割と平易なメロドラマ、いうなれば椿姫みたいなものですが、こういう映像感覚の作品にするとはバズ・ラーマン、さすがですね。彼の前作、「ロミオ+ジュリエット」を見てファンになったのですが、動向が見逃せない監督ですね。彼やキッドマンはオーストラリア人でこの作品の撮影もオーストラリアで作られたようです。エンディングもうまいなぁ。…サントラが欲しくなりましたねぇ。とはいえ、何でここんなに客の入りが悪いのか…?
 冒頭に来夏公開の「エピソード2」の予告編がついています。これも何か恋愛ものっぽい作りみたいですが、どんなものでしょう。

  評価 ☆☆☆☆1/2   (01/11/23)


ball1かあちゃん
(映像京都・日活他/東宝 96分  2001年 D)
監督 今村 昌平
出演 岸 恵子  原田 龍二

 天保改革のあおりで大不況の江戸の町。とある貧乏長屋につつましくも暮らしながら、一家総出で働いている一家があった。母親と4人の子供達の家族だが、そんな一家は長屋連中に近所づきあいにも事欠くケチな一家と評判が悪い。そんな家にある日一人の若者が泥棒に入る…。山本周五郎の原作、監督は巨匠・市川崑。彼の亡き妻、和田夏十脚本を書いてます。

 今村監督に続いて、市川監督の新作。みなさん、まだまだ元気なようですね。特にこの作品、今さら市川監督には失礼でしょうが、脱帽ものです。まず話がすごくいいです。人情喜劇と言うよりは落語の世界ですね。不況の中でも明るくみんながんばっている感じで、同じく不況で暗い話が多い現在との対比という意味もあるでしょう。配役がまた絶妙です。かあちゃん役の岸恵子はともかく、息子役のうじきつよし、娘役の勝野雅奈恵、家主の小沢昭一、長屋の住人も春風亭柳昇、中村梅雀、江戸家子猫等々。四人並んで酒飲んでいたり、セリフ回しも棒読みみたいで不自然なところが多いのですが、それが逆に効果的になっているのが不思議です。 部屋の間取りなんかもうまいし、飲み屋の赤提灯の赤だけが強烈な印象の銀残しの映像も効果的です。このような地味な題材で、こんなに見た後の気持ちがいい作品が撮れるとはさすがです。

  評価 ☆☆☆☆☆   (01/11/11)


<ball1赤い橋の下のぬるい水
(日活 119分  2001年 D)
監督 今村 昌平
出演 役所 広司  清水 美砂

 失業中の中年の男性が懇意にしていた博学のホームレスの老人から聞いた話を元に、能登半島の漁師町に向かう。その待ちの赤い橋のたもとにある一軒家に高価な仏像があるというのだ。脚本・監督は「うなぎ」「カンゾー先生」の今村昌平。

 今村監督、相変わらず元気そうで、相変わらず助平な映画である。男と交わらないと体の中に水がたまってしまうという女性の話なのだが、どんなものでしょう。ポルノの題材みたいな話だし(製作したのは日活)、主役から言って「うなぎ」と同じような話だと言えますね。リストラされ、家族にも見捨てられた男の回帰の話なのでしょうが、どうもうまく伝わってきませんね。ちょっとバカバカし過ぎる感じです。大体、役所広司はなぜホームレス達と知り合いだったのでしょう。その辺の説明がなかったか、見落としてしまった気がします。ちょっと中途半端で説明に困る作品。倍償美津子や北村有起哉はがんばっていましたが…。

  評価 ☆☆☆   (01/11/11)


ball1オー・ブラザー!
原題 O BROTHER, WHERE ARE THOU? (米国/ギャガ 108分  2001年 DRS)
監督 ジョエル・コーエン
出演 ジョージ・クルーニー  ジョン・タトゥーロ

 1930年代の米国南部ミシシッピー週の田舎。髪のセットばかりを気にしている伊達男をリーダーとする三人組が、鎖につながれたままの状態で刑務所を脱獄した。彼等は宝の山を探し当てるという目的があるが、行く先々ではハプニングの連続。旅路で待ちうけているのは追っ手とおかしな人物ばかりである。銀行強盗の手伝いをすることになったり、ラジオ局で歌を歌ったりしたあげく成りゆきで、知らないうちに歌った曲がヒットしてしまう…。脚本・監督は「ファーゴ」「ブラッドシンプル/ザ・スリラー」のコーエン兄弟。

 毎回、新作が楽しみなコーエン兄弟。珍しく公開前に買ったサントラも気に入っただけに出来を楽しみに鑑賞しました。
 謳い文句は構想3000年。紀元前8世紀の詩人ホメロスの「オデュッセイア」がヒントになっているとのことです。なるほどそれらしいエピソードが次々と出てきます。しかし、私の感想では、「ブルースブラザース」のカントリーミュージック版と言った感じでしょうか。音楽の使い方もそれらしいところがありますね。クロスロードのエピソードが出て来たところもかなり印象的でした。あと元祖ベビーフェイス?なども出てきます。
 ストーリーの方はちょっとふざけ過ぎた気がします。従来のコーエン兄弟の作品に比べるとストレートでおバカなギャグが多い感じで、ブラックさが少なく逆に物足りなさも感じてしまいます。KKKの秘密結社が出てくるあたりはかなり笑えるのですが…。
 少し物足りなさを感じますね。悪くはありませんが…
 音楽はサントラ通りなかなかいいですね。Tボーン・バッネートが担当しています。

  評価 ☆☆☆☆   (01/11/10)


ball1GO
(東映他/東映 122分  2001年 DR)
監督 行定 勲
出演 窪塚 洋介  柴咲 コウ

  主人公は朝鮮席から父親のひらめきで、韓国籍に変わった経歴を持つ在日高校生。民族学校に通っていたが、日本の高校に通う様になるが、やはり周囲の日本人は平等な目でみてくれない。ある日、彼は美しい少女に出会い、少しずつうち解け、親しくなっていくふたり。だが彼は自分が在日であることを、なかなか彼女にうち明けられない…。金城一紀の直木賞受賞作を、岩井俊二監督についていた行定勲が監督した青春ドラマ。

 オープニングのスピード感がとても爽快です。タイトルバックの間に主人公の交友関係、親子関係などを見事に説明し終えています。出てくるキャラクターが何れも個性的で強烈です。特に両親役の山崎努と大竹しのぶがスゴイですね。他にも先輩役の山本太郎、教師役の塩見三省の他、大杉漣や萩原聖人なんかもはまり役ですね。主役の窪塚洋介もそこそこ良いし、相手役の柴咲コウも自然な感じでいいですね。
 モチーフとなっているのは、在日朝鮮人、韓国人の問題ですが、そんなに固い話にならずに、若い世代の話に落としているのが好感が持てます。国籍を替えたりして、割と自由な考えを持っている様な父親に対しても、国や人種にこだわっている時代ではないと言い切ってしまうところも良いです。そういう自我に対する感情は国籍を問わないものなのでしよう。と言っても彼は元ボクサーの父親にボコボコに殴られてしまいますが…。
 冒頭のスピード感が中盤になると薄れてきて、後半はオーソドックスなドラマになってしまっていることに気が付きますが、ずっと早いスピードで走られても観る側が疲れてしまいますから、これでいいのかも…。脚本の宮藤官九郎、劇団の主宰や「ロケットボーイ」などドラマの脚本、そして自らの出演等、噂には聞いていましたが、実際に作品を見たのは初めてです。時間軸がエピソードに従って前後するのですが、「これは恋愛の話だ」という主人公の語りで進めていく辺りもうまいです。監督の行定勲と何れも今後、注目の価値があるようです。ちょっとくさいところがなくもないけれど、観た後の気分がよくなる作品で、お勧めです。
 蛇足。冒頭のチキンレース、神戸市の地下鉄が出てくるのですが、よくあんな撮影できましたね。こういうシーンが取れる様になると邦画も面白くなりそうです。でも、私はその地下鉄のせいで、関西が舞台の作品だと思ってしまい、後で京急の駅が出てくると戸惑ってしまいました。鉄ファンなので、そういうところ、すぐ気が付いてしまうんですよね、トホホ。

  評価 ☆☆☆☆1/2   (01/11/4)


ball1エボリューション
原題 EVOLUTION (米/ソニー 146分  2001年 DRS)
監督 アイバン・ライトマン
出演 デビッド・ドゥカブニー  ジュリアン・ムーア

 アリゾナの砂漠に1個の隕石が墜落した。そこに付着していた原始的なDNAはみるみるうちに進化して、隕石周辺に地球とは別種の生態系を作り上げる。軍は隕石周辺を完全に遮断して独自の調査を始めるが、生物の一部は周囲に漏れだして人々を襲い始めた……。監督はアイバン・ライトマン。

 「ゴーストバスターズ」のアスイバン・ライトマンが監督だと言うことで見に行きました。恐竜の足跡がピースマークになつた様なポスターなどは以前から目についていましたが、それほど盛り上がらないまま、公開。見に行ったところ…、うーん。「ゴーストバスターズ」、そのまんまんまです(笑) ただ、相手がエイリアン的な恐竜になっただけですね。出演は、「XFiles」のイメージを払拭したいデビッド・ドゥカブニーと「ハンニバル」のジュリアン・ムーアですが、どうも今ひとつです。ドゥカブニーは政府批判をしたり、お尻を見せたりしているし(笑)、ムーアもおっちょこちょいなシーンが再三出てくるのですが、どうも上滑りしています。ミスキャストかな? やはりダン・エイクロイドあたりが出てきた方が落ち着きます。
 アイデアと小ネタは悪くないと思いますが、どうも消化不良な感じですね。ラストはまたマシュマロマン的キャラが出て来ます? クリーチャーはなかなか気持ち悪くて良い?のですが、どうもお金のかけ方が逆にもったいない気がするようでは、どうも…。

  評価 ☆☆☆   (01/11/4)


ball1リリィ・シュシュのすべて
(ロックウェルアイズ/日本へラルド映画 146分  2001年 DTS)
監督 岩井 俊二
出演 市原 隼人  忍足 修吾

 主人公は、実母と新しい父親、そして、その連れ子の弟との4人で暮らす中学生。学校ではいじめを受け、絶望的な毎日を過ごす彼にとって、心の支えとなるのは、カリスマ的な女性アーティスト「リリイ・シュシュ」の歌を聴くことだった。彼はリリイのファンサイトにはまり、その中だけに自らの居場所を見い出すようになったが…。゜スワロウテイル゛以来、5年ぶりとなる岩井俊二監督の新作。

 うーん。見た後、ちょっと心が痛くなる映画でしょうか。好き嫌いがはっきり分かれる映画で、万人に勧められる作品ではない気がします。中学生のイジメや援助交際などを描いていて、ある種現実を直視し、描写した作品でしょうが、解決策は示されてないので、観客にその答えが求められているのでしょうか。イジメとかは昔もあったのはあったけれど…。
 上映時間が長く、登場している中学生達の入学以来の変貌も描かれているのですが、それにしてもリーダー格の男子の変化が唐突過ぎる気がします。ラストもメールのやりとりを見ている中で途中で読めてしまった点もどうでしょう。
 背景になっている栃木の風景がとても印象的です。岩井監督の作品はどの作品もその舞台が大きな要素を占めている気がします。「スワロウテイル」の埋め立て地、「打ち上げ花火…」の千葉の海岸、「PICNIC」の隅田川、「Love Letter」の小樽等々。今回の作品も北関東の乾いた空気と真っ青な空が、中学生達の心の中との対比となり効果的に使われています。主人公が母親(これがフジテレビの阿部知代アナ)を自転車に乗せるシーンやポスターにも使われている鉄塔のシーンも印象的です。
 音楽も前作のYentown Bandと同様に盟友、小林武史と「リリィ・シュシュ」という架空のアーティストを持ち出してきて効果的に使っています。だまされてCD買わされそうですね。
 再三言っている様に中学生の話なのですが、どう見ても中学生に見えない忍足修吾や伊藤歩を使っているのも彼の常套手段?ですね。長尺だけれどうまい作品で、悪くはないのですが、監督独特の世界を確信犯的に描き過ぎていて、ちょっと面白くない気がします。色々考えさせられる作品ですね。 
     ちなみにこの作品、一般の人の書き込みも利用してWebで展開された小説を元に、ハイビジョンのビデオカメラで撮影し、MacのFinal Cut Proというソフトで編集、音はDTSを採用と言う斬新な試みもしています。

  評価 ☆☆☆☆   (01/10/27)


ball1ターン
(アスミックエース 111分  2000年 DR)
監督 平山 秀幸
出演 牧瀬 里穂  中村 勘太郎

 銅版画家であるヒロインがある日、交通事故にあってしまう。彼女が目が覚めたのは、何故か事故の前日の家の居間であった。そこは彼女の他は誰も存在せずに、同じ日が何度も繰り返される世界だった。他の人との接触は一切出来なかったが、ある日彼女の家に繋がらないはずの電話がかかってくる。

 「学校の怪談」「愛を乞うひと」の平山秀幸監督の新作です。公開が遅れたみたいですが、どうしたことでしょう。今度の公開もワーナーマイカルだけだったようです。料金1000円での公開だったけれど、これがお買い得。小品ですが、よくできている感じです。牧瀬里穂は一人芝居のシーンが多いので、ちょっと大袈裟ですが好演。相手役を年下にしているところが効果的で、演じている中村勘太郎もいいかも…。何故電話が繋がったかとか、結末がちょっと安易と言ったところがありますが、まあ可としましょう。

  評価 ☆☆☆☆   (01/10/27)


ball1ELECTRIC DRAGON 80000V
(サンセントシネマワークス=タキコーポレーション 55分  2000年 )
監督 石井 聰亙
出演 浅野 忠信  永瀬 正敏

 少年時代の感電事故で帯電してしまった、は虫類専門の探偵と彼と同じような体質を持つ男との戦いを描いた作品。監督は「五条霊戦記」の石井聰亙

 石井聰亙が「五条霊戦記」の前に浅野忠信と永瀬正敏のコンビで作った作品だそうです。ストーリーを書きましたがよく分からないでしようね。うーん、私にとってもちょっとこの作品はよくわかりませんでした。映像と言い、音楽と言いスピード感はありましたが、それに乗り切れないと取り残されてしまう感じです。何でしょうね、これは…。学生なんかの自主制作の映画に近いノリでしょうね。石井聰亙らしいと言えば、彼らしいのですが、自主制作から20年経ってのこの作品ってどういう意味があるんでしょうね。うーん。すみません。私にはよく分かりません。

  評価 ☆☆1/2   (01/10/23)


ball1トゥームレイダー
原題 LARA CROFT: TOMB RAIDER (米/東宝東和 101分  2001年 DRS)
監督 サイモン・ウエスト
出演 アンジェリーナ・ジョリー  ジョン・ボイト

 5千年に1度起こるという惑星直列。その瞬間に古代人が残した秘宝のパワーを使えば、人間は神と同じ全知全能の力を得られるという。主人公トレジャーハンターのララ・クロフトは、父親が残していた秘宝探索の鍵になる仕掛け時計を屋敷の中で発見した。ところが、この時計の存在を知って、古代人のパワーを求める秘密結社が彼女の屋敷を急襲、この時計を奪われてしまう…。監督は「コンエアー」のサイモン・ウェスト

 かなり前から予告編で気になっていた作品です(笑)。主演はアンジェリーナ・ジョリー。「17歳のカルテ」で好演していた女性です。父親がこの映画で共演しているジョン・ボイト。最近、悪役が多いですね。結婚した相手が先頃一緒に来日していたビリー・ボブ・ソーントン。あの「スリング・ブレイド」とかに出演していて自分でも監督したり脚本書いたりしている親父ですね。なぜこの二人が結婚を…(失礼)
 作品の方は、「インデイ・ジョーンズ」と「バットマン」を足して割った様な作品です。トレジャーハンターというのは儲かるのか、執事と助手付きの結構な豪邸に住んでいます。車もたくさん持っているし…。ストーリーはまあいいでしょう(笑) 秘密結社と一緒にアイスランドに行ったり、彼女を裏切って?結社側についたライバルを助けようとするところなどが唐突でちょっと分かりにくかったですが…。また一番のアクションの見せ場が彼女の自宅だったと思えるのも笑えます。
 まあ、結局彼女あっての作品でしょうから、いいのでは…。表情の変化などを見ていても面白いし。同じゲーム映画?の「ファイナルファンタジー」や「ラッシュアワー2」より楽しめました。

  評価 ☆☆☆1/2   (01/10/21)


ball1ラッシュアワー2
原題 RUSH HOUR 2 (ニューライン/ギャガ=ヒューマックス=松竹 90分  2001年 DRS)
監督 ブレット・ラトナー
出演 ジャッキー・チェン  クリス・タッカー

 休暇で香港にやってきたLAPDとそれを案内する香港警察の警部。二人はアメリカ大使館の爆破テロ事件に遭遇したことで、再びコンビを組んで事件解決に向かう。ジャッキー・チェンとクリス・タッカー主演の大ヒット映画「ラッシュアワー」の続編。監督は前作に引き続いてブレット・ラトナー。

 私は意外にジャッキー・チェンの作品が好きでよく見ていました。彼のサービス精神あふれる体を張った演技が好きでした。しかし、彼が米国に進出した後、彼の地で撮った作品は、ちょっとその辺りが薄まってしまった感じがします。前作の「ラッシュアワー」も見ましたが、今ひとつクリス・タッカーとのバランスが悪かった記憶があります。
 この新作もはっきり言ってもう一つですね。まずストーリーが今ひとつですね。別に彼の作品でストーリーどうのこうの言っても仕方がないのですが、何かこれは行き当たりばったり過ぎる気がします。それをアクションでカバー出来ればいいのですが、どうも切れが悪いので、ストーリーの粗さが目立ってしまった感もありますね。期待して見に行ったチャン・ツィーもこの作品では可愛いくなくて、今ひとつ。ジャッキーとの不倫騒動の方が有名になったのでは情けない(笑) 久々に見たジョン・ローンもこれじゃもったい感じですね。
 個人的に一番受けたのがラストのNGシーン。ジャッキーの役名をなかなか覚えないし、撮影中に携帯電話を鳴らせてしまうクリス・タッカー。こんなことって本当にあるのかな?
 米国ではいまだに興業収入ベスト10に入っていますが、ちょっと今ひとつ…

  評価 ☆☆☆   (01/10/8)


ball1コレリ大尉のマンドリン
原題 CAPTAIN CORELLI'S MANDOLIN (英/ブエナ・ビスタ 129分  2001年 DRS)
監督 ジョン・マッデン
出演 ニコラス・ケイジ  ペネロペ・クルス

  第二次世界大戦下のギリシャ。中立を保とうとして一旦はイタリア軍を押し戻したギリシャであったが、ドイツ軍の猛攻を跳ね返すことができないまま降伏してしまう。そのケファロニア島という島に、占領軍を率いたイタリア軍がやってきた。島の人々はこの占領軍を忌々しい思いで眺めていたが、陽気で気さくなイタリア兵たちの振る舞いに少しずつ心を開いていく。イタリア軍の大尉のコレリは、村の老医師の家に居候することになり、彼の娘と出会う……。イギリスで人気を誇るベストセラー小説の映画化。監督は「恋におちたシェークスピア」のジョン・マッデン。

 この作品のメインは大尉とギリシャ陣の娘のラブ・ロマンスでしょうけれど、私は先に連合軍に降伏したイタリア軍とその後のギリシャを選挙しようとしたドイツ軍との間で、地元民を巻き込んだ銭湯があった史実の方が興味深かったです。映作品の中でも描かれていますが、ドイツ軍に比べてイタリア軍の方がのんびりした感じです。国民性もあるでしょうが、必ずしもムッソリーニに心酔していない人も多かったということでしょう。占領していても割と地域に同化していたし…。違っているかも知れませんが、考えてみるとイタリアってあまり植民地などは持っていなかった気もします。
 メイン・ストーリーの方は可もなし、不可もなしと言った程度でしょうか。悪くはないのですが…。ペネロペ・クルスはさすが、今が旬、いいですね。役柄のせいなのか脇毛が見えていたところも妙に良かった気も…。(笑)
 ニコラス・ケイジのイタリア軍大尉がギリシャ語が話せて、通訳も兼ねている言う設定なのですが、ペネロペ・クルスなどと話しているのが英語。でも、他の村民はギリシャ語?で話していたりして、何か変な感じです。吹き替えではないと思いますが…。ペネロペ・クルスの許婚役、クリスチャン・ベールはいろんな役ができますね。

  評価 ☆☆☆☆   (01/10/7)


ball1ブリジット・ジョーンズの日記
原題 BRIDGET JONES'S DIARY (英/UIP 97分 R-15 2001年 DRS)
監督 シャロン・マグワイア
出演 レニー・セルウィガー  ヒュー・グラント

 主人公ブリジット・ジョーンズは出版社に勤めている32歳の独身女性。男っ気はないし、タバコと酒もなかなか止められない。幼なじみの弁護士と再会するが、気が合わずにうまく行かない。その後、メールがきっかけで、彼女は会社の上司と親しくなることができたが、ある日、彼の気持ちが本気でなかったことを知る…。原作はイギリスの新聞にコラムとして連載されたOLの架空日記。

 30代の独身女性の恋愛や生活振りを描いていて、多くの同世代の女性達の指示を受けたベストセラーの映画化とのことです。予告編で見ていた頃単館ロードショーかなと思っていたのですが、思いの外の拡大ロードになりました。
 映画をジャンルで分けるのは善し悪しですが、この作品。コメディ映画としては面白く結構笑えますが、それ以上の評価となるとちょっと首を傾げる気がします。あまり後に残らない作品ですね。
 家族や友人とのやりとり、セリフ等はなるほどリアリティがあって、洋の東西を問わない感じで共感できる面があるのですが、主人公の行動や考え方に私はあまり同化できませんでした。男性のことを考えていても見かけなどにとらわれているし、他人の意見や噂に影響されやすいし、仕事もなんとなくと言った感じであまり意志を持っていませんねぇ。もうちょっとキャリアっぽい女性かと思ったけれど、そういう設定ではありませんでした。その辺も身近な感じで共感できるポイントということなのでしょうが、できないと馴染めないまま、映画が終わってしまいます。男性が見ると評価しにくいかも知れません。
 ヒュー・グラントとコリン・ファース、男性陣の方はケンブリッジだったかを卒業したキャリアと言う設定ですが、行動、所作の方はこちらもちょっとトホホという感じですねぇ。
 ラストは一応ハッピーエンディングになっていますが、お互い何故好きになったかよく分からないまま…と言う感じだったので、この先が心配です(笑)。少女マンガ的エンデイング?
 男性同士が昔、遺恨があったということてすが、昔殴っておけば良かったと言いながら長々と続くケンカのシーンもやりすぎと言った感じで、違和感があるし、もう一工夫欲しいところです。ヒュー・グラントは適役ですね。レニー・セルウィガーは体重増やしての演技ということですが、なかなかのものです。でも、ブリティッシュ・イングリッシュじゃない感じで、違和感がありますね。

  評価 ☆☆☆   (01/10/6)


ball1檳榔売りの娘 (福岡映画祭)
原題 BETELNUT BEAUTY/ (台湾 106分 2001年)
監督 リン・チェンシェン (林 正盛)
出演 チャン・チェン(張 震)   リー・シンチエ(李心潔)

 大都会の台北。軍役を終えたばかりの青年が、仕事を探しながら新しい生活をはじめようとしていた。ある日、駅でみかけた女の子と偶然また会ってしまった。彼女は母親とのいさかいで、家を飛び出して友達と檳榔を売り子になっていたのだった。恋に落ちた二人は一緒に生活し始めるが、ある日彼女がテレビのクルーにスカウトされ、映画などに出るようになった。第51回ベルリン映画祭最優秀監督賞・新人女優賞受賞作品

 檳榔というのは、ヤシの一種で覚醒効果があるくだもので、台北の街角の屋台で売っているのを私もみたことがあります。車の運転手を相手に売っていることが多いので、この映画の様にセクシー路線の商法が問題になっているという二ユースも見たことがあります。
 ストーリー展開はちょっと前の邦画と言った感じです。女の子の方は上昇路線で成り上がっていくのに対し、段々彼氏とすれ違いが増えてきてしまい、男の方は望んでいるわけではないのに、転落してしまうと言ったところです。青年の方は「クーリン街殺人事件」「ブエノスアイレス」のチャン・チェン。カッコ良くなっています。相手役はリー・シンチエ。アンジェリカ・リーの名前で実際に歌も歌っています。かわいい。CD買っちゃいました(笑)

  評価 ☆☆☆☆   (01/9/25)


ball1追いつ追われつ (福岡映画祭)
原題 SENARIO AGAIN/SENARIO LAGI (マレーシア 118分 1999年)
監督 アズィス・M・オスマン
出演 ワヒッド・スィナリオ  アズリ・ジャアファル

 念願の中古車を買って、リゾート地に家族旅行に出かけた一家。しかし、この車は借金のかたになっていて、取り立て屋が車を取り返そうと後を追いかける。二つのグループに車ヶ故障してしまった美女。ヒッチハイクをしているインシドネシア人。家族の車にぶつけられて事故の補償を求めてくる男。マレーシアの人気グループが繰り広げるスラップスティックコメディー。

 マレーシア映画というのも初めて見る気がします。こういう映画が見られるのも映画祭ならではですね。まあ、昔のドリフターズ主演の映画みたいなものですね。はじめはモタモタしていてあまり笑えませんでしたが、途中からテンポがよくなってきます。そして最後は人情ものみたいでちょっとホロリとさせるというストーリー展開はどこでも同じですね。
 マレーシアにはマレー人とインド系の人と中華系の人が主に住んでいます。割と人種の区別ができている国多度思うのですが、この映画に出てくるヒロイン達はベールをかぶっていなくて、インド系の女性になっています。不倫っぽい話でもあるので、その辺、人種か宗教の配慮が、あるのかな。でも、インド映画のパロディはなかなか笑えました。主人公の奥さん役の巨漢振りにもびっくり。

  評価 ☆☆☆   (01/9/25)


ball1絵の裏
原題 BEHIND THE PAINTING/KHANG LANG PHARP (タイ 110分 2001年)
監督 チャード・ソンスィー
出演 ティラデート・ウォンプァポン  カーラー・ポンシット

 1930年代、日本の大学に留学中の学生のところに父親の友人から、日本に旅行へ向かう彼と彼の新妻の滞在中の世話を依頼される。彼女は若い頃は幸せな結婚にあこがれていたが、家から外に出ることなく育てられている内に適齢期を過ぎてしまい、親子ほど年が違う再婚の紳士と結婚することになってしまった。来日した彼女を一目みた瞬間、青年は彼女に恋愛感情を抱いてしまい、彼女も少なからず好感を彼に対して持つようになった。彼女を観光地などに案内しているうちにやがて、夫婦がタイに帰国する日が近づいてきた。

 タイには何度か出かけていますが、映画を見る機会はなかったため、たぶんこれが初めて見るタイ映画です。30年代に発表されたベストセラー小説の再映画化とのことです。日本が舞台のこういう話があったとはちょっとビックリでした。今時の言い方で言うと不倫直前、許されざる恋というストーリーです。相手の女性が王族関係という設定のようです。時代の流れに乗り遅れてしまった不運の女性には共感を覚えますが、如何せんちょっと古い話だなぁというのが、率直な感想です。タイではよかったかも知れませんが、時代設定を変えてしまった方がなじみやすい感じもします。
 全編の大半が日本でのロケで撮られています。福岡映画祭のプロデューサーでもある佐藤忠男夫妻のアレンジによるもののようです。結構ロケで苦労したと思われますが、よく再現できているなあとその辺は感心させられました。

  評価 ☆☆☆   (01/9/25)


<ball1ファイナルファンタジー
原題 FINAL FANTASY (スクェア=コロンビア/ギャガ=ヒューマックス 106分 2001年)
監督 坂口 博信
声の出演 ミン・ナ  アレック・ボールドウィン

 西暦2065年。人類は「ファントム」と呼ばれる謎の宇宙生命体の攻撃によって、存亡の危機にさらされていた。政府軍は新しい火器での武力行使でファントムを叩こうとするが、科学者達ははファントムのエネルギーを無効にする研究を進めていて、評議会の中で主張が対立している。そんな中、科学者チームの中の女性科学者は、彼女の監視を指示されいて、彼女の昔の恋人でもあった軍人達を連れて、ファントムのパワーを無効にする生命体を探し求めることになる。同名のゲームシリーズを手がけた坂口博信が手がける話題のフルCGムービー。

 私は唯一持っていたスーパーファミコンも邪魔なので、箱にしまっている状態で、FFのゲームの方もほとんどしたことがありません。で、映画の方はというと…。巨費を投じたというCGはさすがです。ヒロインの師匠役の博士のヒゲ面あたりは感心すべきものがある感じです。しかし、肝心の主人公に限ってみると今ひとつなんですね。東洋系の設定をしているせいかも知れませんが、肌がきれい過ぎてのっべりしているし、表情の変化が乏しいし、どうかした時の動きも少し違和感ある感じです。
 脚本は日本人じゃないみたいですが、ちょっと凡庸ですね。ひねりがあまりなくエイリアンシリーズ(特に2だったかな?)みたいな話です。SFなので、気にすることもないのかも知れませんが、基本的な設定に疑問がたくさんあります。ネタばれになるのであまり書きませんが、うーん、どんなものでしょう。
 CGでここまでやったという意義は認めます。俳優を使わないということは、監督の衣のままにキャラクターが作れて、演技させられるはずですが、映画監督が本職の監督ではないせいかどうか、その辺の演出がもう一つの様な気もします。俳優不要の時代が来るのかとも言われていますが、おもちゃキャラの「トイストーリー」や「シュレック」みたいなものならともかく、実写に迫るというのがうたい文句のこの作品のように、ある程度人間を描く必要があるドラマ的なものだと、現状ではまだ違和感があり、無理なのかなと認識させられる作品でした。

  評価 ☆☆☆   (01/9/23)


ball1千言萬語 (福岡映画祭)
原題 ORDINARY HEROES/千言萬語 (香港 128分 99年)
監督 アン・ホイ(許 鞍華)
出演 レイ・ホンサン(李 康生)  レイチェル・リー(李 麗珍)

 1979年、中学生だった少年がある少女に財布を盗まれる。彼女を追いかけるとボートに乗って逃げてしまった。彼女は水上生活をしている住民だった。やがて、少年達は水上生活者の権利を守る運動に関わっていくようになる。青年は彼女がきになるが、彼女はその運動のリーダー的存在の青年に思いを寄せていた。「客途秋恨」「女人、四十」のアン・ホイ監督が1980年代の香港の社会運動を扱った作品。第19回香港電影金像賞受賞作。

 香港でこういった運動があったことは知っていましたが、これほど社会主義、共産主義に根ざしていたものとちは知らなかったので、勉強になりました。メインは若い二人の80年第から90年代にかけてのすれ違いを描いた作品ですが、どうもこの作品、乗りにくかったてす。冒頭からこれらの社会運動を描いた街頭演劇?がなんどとなく出てきます。それを解説のつもりで挿入しているのでしょうが、何か馴染めないのです。後半でやっとメインストーリーと重なりはするのですが…。そのシーンもちょっとあっけない撮り方だし。
 主演は「青春神話」「河」など蔡明亮監督作品で知られる李康生。この手の青年の役をさせるとピカ一ですね。広東語でも大丈夫なのかな?黄秋生って、眼鏡のせいか、エルビス・コステロに似ている(笑)

  評価 ☆☆☆1/2   (01/9/22)


ball1バラン (福岡映画祭)
原題 BARAN/BARAN (イラン 100分 2001年)
監督 マジド・マジディ
出演 ホセイン・アベディニ  ザーラ・バーラミ

 イラン人とともに不法滞在のアフガニスタン人も働いているテヘランのある工事現場で、一人の青年が食事の買い出しやお茶くみの軽作業をしていた。ある日、アフガニスタン人の一人が、現場で事故にあって骨折してしまった。一家の稼ぎ頭が倒れたため、彼の代わりに息子が仕事にやってきた。しかし、小柄で非力な彼は、力仕事には向かず失敗ばかりしていた。今まで軽作業をしていた青年が現場に回り、代わりに非力の少年がその仕事に回ることになった。仕事がきつくなったため、青年はその新入りの少年に嫌がらせをするようになった。しかし、ふとした弾みでその少年が女の子であることを知り、青年は彼女のことを気にかけるようになった。「運動靴と赤い金魚」「太陽は、ぼくの瞳」のマジディ監督の新作。

 今、注目を浴びているアフガン移民のことを扱った作品です。こういう作品は日本ではなかなか見られないので、この映画祭は貴重な催しです。この作品は一般公開されるでしょうが、国外での上映はまだ、二回目とのことです。
 今まで公開された彼の作品は子どもが中心の作品が多かったのですが、今回はちょっと違います。でも、その視線の暖かさは共通のものがあり、安心して見ていられる作品になっています。少年のことをいじめたりしていながら、女の子だと分かった後の彼の態度の豹変振りはおかしいですね。そのせいで、ちょっと深刻なテーマも軽い感じで受け入れることができます。後半、自分のお金だと言わずに援助しようとする青年の志もとても潔い感じでした。

  評価 ☆☆☆☆1/2   (01/9/22)


ball1レクイエム・フォー・ドリーム
原題 REQUIEM FOR A DREAM (米/ザナドゥー 102分 2000年)
監督 ダーレン・アロノフスキー
出演 エレン・バースティン  ジャレッド・レト

 ブルックリンのアパートで、母親と二人暮らしをしていて、家のテレビを持ち出しては売っては麻薬を買う金を作っていた青年。彼は親友とふたりで麻薬の売人になることを思いつき、あっという間に濡れ手に粟の大儲けをしてしまう。彼の夢は恋人とふたりで小さなコーヒーショップを開くことで、稼いだお金はその開業資金にするはずだった。同じ頃彼の母のもとに、「あなたがテレビのショー番組の出演者に選ばれました」という電話がかかってくる。古い衣装が入らなくなった彼女は、テレビ出演に備えて急激なダイエットを始めようとする。「π〈パイ〉」で脚光を浴びた、ダーレン・アロノフスキー監督の新作。

 「π〈パイ〉」は見たかった作品だったのですが、見逃してしまいました。で、この作品。うーん。「ウォーターボーイズ」と打って変わって陰鬱な映画ですね。暗い、あまりに暗い。まあ、どうしようもないほどのやりきれなさでもないですが…。
 定職を持っていないけれど、やる気がない訳ではないんですよね。それなりの上昇志向はあるのです。母親にしてもそうでしょう。ほんのちょっとテレビにでたくて、地元の有名人になりたかっただけでしょう。ただ、それがちょっとずれてしまったり、うまくいかなくなってしまった時の脆さがあるんでしょうね。また、行く道の取り方に二種類の方法が可能な場合、クスリに頼る方が楽に思えてしまうんでしょうね。このことに議か付いていたとしても、そこで、どう踏みとどまるかの方の選択の方がとても難しいんでしよう。
 ドラッグにおぼれてしまうの息子のジャレッド・レトより、ダイエットのクスリにおぼれてしまう母親のエレン・バースティンの崩れ方の方が怖いですね。もうボロボロな感じで圧巻です。相手役のジェニファー・コネリーもかなりの描写があるのですが、よくこんな作品に出た気がします。
 題材は暗いけれど、注射のシーンや幻覚のシーンの撮り方は印象的だし、作りは思いの外しっかりしているしそれなりに見られる作品でした。

  評価 ☆☆☆☆   (01/9/19)


ball1ウォーターボーイズ
(フジテレビジョン・アルタミラピクチャーズ・東宝・電通/東宝 91分 2001年 DOLBY)
監督 矢口 史靖
出演 妻夫木 聡   平山 綾

 廃部寸前の男子高校の水泳部の顧問に新しく赴任してきた美人の女性教師がなることになった。そのことを知った生徒達の入部希望が殺到してしまう。しかし彼女がやりたいのはシンクロナイズド・スイミングだということがわかりも大多数のものが去ってしまう。残った部員たちは、顧問教諭が産休に入ってしまった後も独力でシンクロに挑戦し、夏休み明けの文化祭に向けて練習に励む。「裸足のピクニック」「ひみつの花園」「アドレナリンドライブ」の矢口史靖監督の最新作。

 いゃぁ、いいですね。この作品。こういう内容の作品は久しぶりです。青春ものの映画自体が減ってしまい、たまにあっても変に屈折した作品が目に付く昨今ですが、ストレートな作品と言えます。(と言っても男子校のシンクロですから変と言えば変ですが…。)「青春デンデケデケデケ」を彷彿させますが、時代がさかのぼっているものではなく、設定も現在なのもいいですね。最もこんな直球な連中が今もいるかどうかは分かりませんが…。
 主演の妻夫木聡は、役柄のせいもあっておとなしいめ。そこを会い参謀役の玉木宏が締めています。この手の作品はキャラクター次第なところもありますね。当然、若手が主の高校生に対しての脇役は超豪華、毎度おなじみ、竹中直人、柄本明、角替和枝夫婦?、杉本哲太等が気持ちよく暴れまくっています。 (顧問役の真鍋かをりはちょっと疑問だが…。)変に主役達の家族を出していない所もいい感じです。
 ストーリーはかなり強引、ベタなギャグもありますが、終わりよければすべてよし、ラストのシンクロシーンを見て満足いたしましょう。そこで使われている曲がちょっと古いのもご愛敬。矢口監督の作品、「裸足のピクニック」「ひみつの花園」辺りともちょっと違いますね。
 この鬱陶しいご時世、何も考えずにこれだけ楽しめる作品、まして、邦画では貴重な気がします。元気になれます。
 ところで、この作品、東京では、シャンテでやっているんですね。うーん、何かイメージ違うな。

  評価 ☆☆☆☆1/2   (01/9/16)


ball1酔っぱらった馬の時間 (福岡映画祭)
原題 TIME FOR DRUNKEN HORSES/ZAMANI BARATE MASTI ASBHA (イラン 80分 2000年)
監督 バフマン・ゴバディ
出演 ネジャド・エクティアル・ディニ  アマネ・エクティアル・ディニ

 イランの中でもイラクに近いクルディスタンの山村に住む5人兄妹。母親は以前に亡くなり、父親のイラクへの密輸作業と子ども達の小遣い稼ぎで暮らしていたが、父親が地雷で亡くなってしまう。身体障害者の上に重病で手術をうけなければ生きながらえない兄に手術を受けさせようとして、弟が一生懸命働くが、なかなかお金は貯まらない。姉が嫁ぎ先の援助を確約して、結婚しようとしたが、嫁ぎ先に反古にされてしまう。困った弟は代わりに姉の嫁ぎ先からもらったラバを売ろうとして、ラバが高く売れるイラクへと向かうが…。監督はクルド人で第53回カンヌ映画祭で新人監督賞を受賞した作品。

 こちらもイランの映画ですが、クルド人が住むクルディスタンを舞台にした作品です。うーん。辛い映画ですね。よく覚えていませんが、おしんみたいな感じです。次々と不幸が訪れる感じですね。でも、それが強引なかんじてはなく、必然的というか自然とそうなってしまうのが余計辛いです。その辺もうまさなのでしょうか。初めてみる地方の光景や生活振りだし、子ども達が主人公なので非難しようがなく、不況、不況と言いながらぬくぬくと暮らしている自分たちの生活と比べると、黙って見るしかないとか思えない映画です。
 題名の由来は、雪山越えの密輸で寒さや重荷に耐えるよう馬やラバが飲む水にお酒を入れて酔っぱらわせることを指しています。監督は「ブラックボード〜背負う人〜」に出演していたそうです。

  評価 ☆☆☆☆   (01/9/15)


ball1街の陰 (福岡映画祭)
原題 UNDER THE SKIN OF THE CITY/ZIR-E POUST-E SHAHR (イラン 92分 2001年)
監督 ラクシャン・バニエテマド
出演 ゴラブ・アディネ  モハマド・レザ・フルタン

 繊維工場で働く女性が主人公。彼女は足が悪くて働けない夫と衣料品店で働く長男、まだ学生の次男、長女と暮らしていた。苦しい生活を打開しようと長男は日本への出稼ぎを考えている。ビザの取得に費用がかかるため、反対する母親に内緒で彼と父親は家の権利書を不動産屋に売ってしまう。その資金でビザの手配を頼もうとした長男は代金を持ち逃げされてしまう。何とか代わりの資金を得ようと画策する長男であったが…。

 このところ、かなり注目されているイラン映画ですが、この作品も見応えがあります。この監督はイランを代表する女性の監督なのですが、家族の人物設定、ストーリー展開とも絶妙で、現在のイランの家庭の状況、生活の変化をとてもうまく描いています。日本に出稼ぎに来ているイランの人もかなりいましたが、その辺の事情もわかるような気がします。冒頭とラストに選挙に関しての母親へのインタビューシーンが描かれていますが、その対比で政治に対する不満、今の状況に対する怒りがとてもうまく表現されている気がします。

  評価 ☆☆☆☆1/2   (01/9/15)


ball1運転手の恋 (福岡映画祭)
原題 THE CABBIE/運転手之恋 (台湾 94分 2000年)
監督 チャン・ホアクン (張 華坤)  チェン・イーウェン (陳 以文)
出演 宮沢 りえ  チゥ・チョンハン (屈 中恒)

 父親とタクシー会社を営んでいる青年。自動車が大好きだが、いまのところ結婚する気はない。いつかは愛する人と巡り会えるはずだと思っているがその相手はなかなか現れない。ある日、交通違反で切符をきられた相手の婦人警官に一目惚れした彼は、彼女の気を引くために何度も違反を繰り返す様になる。

 宮沢りえをヒロインにしているラブ・コメディです。来日している監督の弁によれば、アジア各国を探して、一番ヒロインに相応しい女優だったので、お願いしたとのことですが、そうかな?という感じですね。吹替かも知れませんが、一応北京語を話していて、それらしくしていますが、何かちょっと不自然な気がします。日本人と思って見ているからかなぁ。半分位しか出ていないのにトップクレジット。スタッフ、キャストが4人来日しているのに、彼女は来ていないし…。まあ、別にいいですが。
 監督は二人の名前のクレジットになっていますが、ほとんど新鋭のチェン・イーウェンが撮っているとのことです。ホームコメディみたいな作りですが、前半の人物紹介がかなり長く、ちょっとモタモタした感じがして、スピード感がありません。後半はかなりスピードアップしますが、エピソードの切り替えが遅い、というかメインストーリーよりエピソードの方が長い描き方で、忘れた頃に前のシーンの続きが始まります。意図的でしょうが、私はちょっと馴染めませんでした。着想と小ネタ笑いは面白かっただけに惜しい作品だなと思いました。

  評価 ☆☆☆   (01/9/15)


ball1王は踊る
原題 LE ROI DANSE (ベルギー=フランス=ドイツ/日本ヘラルド 115分 2000年)
監督 ジェラール・コルビオ
出演 ボリス・テラル  ブノワ・マジメル

 17世紀後半のフランス。若くして王になったルイ14世は国政の実権を皇太后の母親に握られていた。その宮廷で王の寵愛を受けていたのが、イタリア人の音楽家リュリだった。国王は得意の音楽とダンスで権威を誇示していたが、その裏で政治の実権を握ろうと画策もしていた。

 太陽王、ルイ14世の話です。ベルサイユ宮殿を造った王です。色々な話を聞くことがありますが、国王なのにこんなにダンスが出来ていたとは知りませんでした。まさに「王は踊る」ですね。リュリはイタリア出身の作曲家です。名前は知っていましたが、今まで彼のことはあまり知りませんでした。有名な劇作家のモリエールと組んで活躍していたようですね。リュリは男色家ということでのストーリーですが、彼が国王に取り入ろうとしていたのは、そのせいではなく、あくまでも自分の才能を売り込もうとしている洋にこの作品ではとらえているようです。しかし、その辺の描写があいまいで、説得力がなく、作品として面白みが欠けてしまっている感じがしますね。ラストの国王との離反も説明不足であっけなかったし、音楽やダンスシーンの作りの重厚さからするとちょっともったいない気がしました。主役はともかく国王役のブノワ・マジメル(年下のひと)は美しいし、音楽もなかなか楽しめました。

  評価 ☆☆☆☆   (01/9/9)


ball1夏至
原題 A LA VERTICALE DE L'ETE (フランス=ベトナム/アスミック・エース、日本ビクター 112分 2000年)
監督 トラン・アン・ユン
  出演 トラン・ヌー・イエン・ケー  グェン・ニュー・クイン

 亡き母の命日にハノイに暮らす三姉妹たちが集まってきた。長女はカフェを経営していて夫は植物を撮っているカメラマン、次女の夫は作家の卵?、その舌の長男と三女は未婚で、一緒に生活している。なかよく食事を作ったりしているが、彼女たちは各々秘密を抱えていた 「青いパパイヤの香り」「シクロ」のベトナム人監督、トラン・アン・ユン監督最新作。

 三人姉妹の周囲で起こる出来事を綴っている作品です。不倫や妊娠騒動等はありますが、はっきり言って大きな事件は起こりません。淡々とその情景を写し取っていく様は、まるで小津安二郎か成瀬巳喜男の様な昔日の邦画を見ている様な感じです。母の命日から父の命日までの一ヶ月の話なのですが、のんびりと時間が流れていく感じです。屋外のシーンはあまりなく、室内のシーンが多いのですが、なんとなくベトナムの夏の気怠い雰囲気をかもしだして好感が持てます。またこの三人姉妹を通して女性の人生の変化をうまく表現している気もします。この辺をどう取るかでこの作品への評価がガラリと変わってしまうでしょうね。
 次女の夫がまだ処女小説を書いている段階でどうやって夫婦で生活しているのだろうとか、三女がつき合っている彼氏がいるのにもかかわらず、同居している兄と疑似恋人みたいにベタベタしているところ、三女の意外な?カマトト振り(これにはビックリしましたが、ベトナムではあり得る話らしい… とすると兄妹の関係にも納得がいくかな…) 疑問な点もありますが、主役のトラン・ヌー・イエン・ケーはファンだし、大目に見ようかなという気にもなります。お約束?の洗髪シーンもあったし…(笑) 兄妹が朝、目覚めるシーンが再三あるのですが、このシーンに流れるベルヴェットアンダーグラウンドの「ペイル・ブルー・アイズ」が抜群にいいですね。この曲、以前にも韓国の「接続」という映画も効果的に使われていました。

  評価 ☆☆☆☆   (01/9/1)


ball1蝶の舌
原題 LA LENGUA DE LAS MARIPOSAS (スペイン/アスミック・エース 95分 99年)
監督 ホセ・ルイス・クエルダ
出演 フエルナンド・フェルナン・ゴメス  マヌエル・ロサノ

 1936年、スペインのガリシア地方の小さな村にの小学校に喘息持ちで入学が遅れた少年が登校してきた。登校初日にいきなりクラスメイトたちにからかわれたモンチョは、緊張のあまり教壇前でおしっこを漏らしてしまう。恥ずかしさで教室を飛び出した少年だったが、そんな彼を 自宅まで迎えに来てくれ、やさしく接してくれたのは、怖い相手と思いこんでいたある老先生だった。好奇心旺盛な少年は、知識が豊富な先生から勉強だけでなく自然界の驚異についても学んでゆくが…

 スペイン内戦前夜の村を描いた作品です。スペイン内戦と言えば、「誰がために鐘が鳴る」などもありますが、「ミツバチのささやき」と言う名作がつい頭に浮かんでしまいます。この作品も「ミツバチ…」と同じく子どもが主人公になって歴史が揺れ動いていく様を描いています。そう言った意味では、「マレーナ」とか「ライフ・イズ・ビューティフル」などに通じるものがある気がします。ということはある種、国や時代が違っていても描かれたテーマであるとも言えます。そうした目で見てみるとこの作品、悪い作品ではないですが、今さらなぁ、と思えないこともありません 。エビソードの積み重ねでエピローグへと繋がっていくのですが、そのエピソードが欲張り杉なのか、中途半端なのかちょっと弱い気がします。とは言え、ことさら作り上げて面白おかしくするのも嫌らしいので、素直に描かれている方が好感が持てることもありますから、その辺が非常に微妙なところですね。
 予想通りとは言え?エンディングもそれなりに感動するし、けなすにはもったいない作品なのですが、もうちょっと工夫が欲しかった気がします。「蝶の舌」というタイトルはインパクトがあって、良いです。

  評価 ☆☆☆☆   (01/9/1)


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